いきなり何すんのよ!!
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そんな不特定な事柄が多数ある案件ではあるが、ライラが死去した事は紛れもない事実。
それによりツベルフ伯爵の爵位は途絶えると同時にあの周辺を納める者が不在となってしまった。まあミトリナは国の管轄だとはいえ、他国との国境、また広大な土地ということもあり、国だけの力だけでは統治が難しい。そんな背景もあり、伯爵の後任としてセルリルに白羽の矢が立ったのである。勿論彼も断固拒否したのだが、タスラムが伝家の宝刀『王の命』と称して兄である宰相とあの森まで訪れたのだ。そうあってはもう断る事も出来ず、承諾し今に至る。
まあ爵位を継ぐに辺り、色々と注文をつけていた彼であり、生活環境も変えずに暮らせる様にしたらしい。当初は伯爵の城に引越し案もあったらしいが速攻却下したとセルリルが言っていた。まあ今までがこじんまりとした中で生活してきたわけで、いきなり城に住めと言われても手に余る状態になるのは目に見えている。と言うより今現在自身がおかれている立場で既に、立証されてしまっているのだ。
(確かに伯爵の城も広かった……)
が、今招かれている王都リンベルにある王の住居であるべテル城は桁が違い過ぎる。幾つもの棟に別れ、それが全てにおいてスケールが大きく、見た目を鮮やか。特にこの大広間のある棟は他国の来賓にも使われる部屋も集約された棟なので全てが洗練されている。見る分には目の保養にはなるが、流石に気が休まらない。
まあ、私も今は伯爵失踪事件での功績をあげたと言う事と、稀な魔法無効化の体質という事で国の保護対象になるとかでだいぶ手厚い歓迎をされている。それと共に、このまま城の一部を住居とし住んで構わないという話も持ちかけられているのだ。
だが根が庶民であり王都に来て4日目となる今日は流石に日頃の生活が恋しくなってきた。そんな事を思いながら、渡り廊下に面した中庭を見ていると、背後から誰かが近づいてくる。
「香月」
聞き覚えのある声が息を切らし名前を呼ぶ。
「タスラムどうしたの?」
マントを靡かせながら彼が私の前まで来ると一回大きく息を吐いた。
「どうしたのって、途中でいなくなるからびっくりしたよ」
「ゴメン。でもこの後って昼食会みたいなのでしょ? 私いなくても良いかなって」
「そんな事ない!! それこそ私の隣に居て欲しいぐらいなのに」
その言葉に思わず冷めた視線を送るも、そんな事は気にする事のない彼が、マジマジと私の姿を見つめる。
「それにしてもいつも可愛らしいとは思っていたけど、今日は一段とそれに拍車がかかっているというか……」
「そう? これでドレス二回目だけど着慣れないから疲れるよ」
「でもよく似合っている。その髪色に映える水色のドレスと、宝飾品もなかなか良いアクセントになってるし。私の見立ては間違ってなかったね」
すると、手を私の耳に伸ばし大振りの水色に輝くイヤリングと共に耳たぶを優しく撫でつつ、顔をいきなり寄せてきたのだ。
「ちょ、ちょっと」
着慣れない服と、気疲れで反応に遅れてしまい、じょうぶ私の間合いには入られてしまった。その時、一瞬目と鼻の先まで来ていたタスラムの顔が急に離されたかと思うと、彼の肩を掴み引き離す、鬼の形相のセルリルが立っていたのだ。
「何やってるタス。事によっては王族でも許すわけにはいかないが」
「そんな怖い顔しないでよセル。それこそ今し方香月に、ドレスの見立てが良いんじゃないって話をしていたんだよ。ね、香月」
「まあ、そうだけど」
「はあ? 俺も一緒に見立てただろ」
「あれーー そうだっけ。それにしてもセル。今、香月を口説こうとしてたのに無粋な事してほしくないんだけど」
「そんな事知るか!!」
互いに睨み合う二人の間に異様な空気が流れる。その時、一人の兵士がこちらに近づいて来ると、敬礼をした。
「タスラム様。王がお呼びです」
その言葉に深い溜息を零すと同時にセルリルが笑みを浮かべた。
「タスラム様。いってらっしゃいませ」
すると頭を下げる。その姿を憎々しく見つめつつ、セルリルの肩に手を置く。
「セル。香月を悲しませるようなことをたら許さない。その時は私がここに彼女を連れてくるから承知しておいて」
いきなり真顔で言い放ち、すぐさまいつもの柔和な面もちへと変わったと思いきや、兵士の方ではなく私の前へと来る。そして片膝をつき、あまりにも自然に私の片手を取った。
「私から触れる非礼をお許しください」
そう言うと、手の甲にタスラムの唇が軽くあてがわれたのだ。
「○△☆※」
「タスお前!!」
声にならない声をあげる私に対し、セルリルの怒鳴り声が周辺に響くと共に、手に陣を作る。それを見ていた兵士が咄嗟に間に入り込み、タスラムの背後は緊迫した空気が漂う。そんな状況にも動じず彼いつも以上に甘美漂う笑みを私に向ける。そして両手で私の手を包み暫し自身の胸にあてがうと、立ち上がった。
「セル。ここそれでも王城だし、魔法発動させちゃ駄目だよ」
「はあ? 何言ってやがる。お前の所業の方が問題だろうが!!」
「ほら、そんなに怒ったら、他の人も集まってきちゃうし、それで大事にでもなったら、強制的に香月がこのまま、城に残ってもらうことになっちゃうかもよ」
とてつもなく不服な表情を浮かべ、描いていた陣が手から消える。そんなセルリルにしてやったりといった顔をしつつ、兵と一緒に王の所へ向かう為、踵を返す。そんな彼とは入れ替わりで、セルリルが私の所に近寄った。
「香月。少し休んだら家へ帰るぞ」
「う、うん」
そんな会話をしている最中、遠ざかるタスラムが私の名前を呼ぶ。
「また7日後ぐらいに顔見にいくから待ってて」
「誰が待つか!! っていうか金輪際来るな!!」
「セルには言ってないよ。私は香月に言ってるんだから。それに私も本気なんでね。いやーー こういう事には障害がつきものだから」
そう言い投げキッスをすると、タスラムは長い渡り廊下を歩いていく。
「ったく何なんだよ」
「はははは」
嵐の様に去っていった彼の姿を、疲れた表情を浮かべつつ暫く見つめていた。
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