親子間は色々あるけど、少し変だよね
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後もう一つ。先程のツベルフ伯爵についてのライラの発言と様子の不自然さ。今は養女として伯爵の娘という身分の筈である。だが、庭園の話を振った際の腑に落ちない彼女の表情と、自分の父であるのにも関わらず『ツベルフ伯爵』と余所余所しい呼び方をしていた。しかし先程伯爵が現れた際は『御父様』と呼び嬉しそうな表情を浮かべている。
(何だか違和感あるんだよね)
まあ養女としての立場もあるので気を使う事もあるにしても、あまりにもあからさま過ぎる気がしたのだ。しかし親子間は私もそうだが、色々とあるわけでなかなかナイーブな事柄。他人がこれ以上首を突っ込む事ではない。
そんな結論に辿りついた頃、丁度話が終わった彼女と使用人が隣の部屋から戻って来た。
「香月さん。待たせてしまってご免なさい」
「いえ、良いんです。それこそ今日は良い経験させてもらいました。ありがとうございます。もう夕刻にもなりましたし、私ももうそろそろ帰途につこうかと」
「そんな!! せっかくお友達になれましたのに帰ってしまうなんて!! そうだ今夜泊まっていって下さい!! 美味しい料理も準備しますから。それに香月さんにはまだまだ見せた物が沢山あるんですよ」
すると私の手を引っ張り部屋から出ると、長い煌びやかな廊下を闊歩する。
「あ、あのーー ライラさん」
「お友達なんですから敬称はいらないわ」
「じゃあ…… 私も同じ様につけなくて良いから…… っていうかそのっ」
「ここを曲がった奥なんですけど歴代のコレクションが貯蔵されてる場所があるんです」
思いの他強く握られた手を離してもらう事叶わず、結局彼女のなすがままコレクションルームと思われる部屋の前に着く。すると、彼女がドアを開くと、正しく絢爛豪華というべき調度品が置かれていた。それは絵から始まり壷や、彫刻、毛皮といったあらゆる物である。思わず足を止め部屋を見渡すと、彼女が室内に入る。
「香月、どうぞ」
「…… 失礼します」
ゆっくりと室内に入り、周りを見渡す。
「はあ……」
思わず感嘆の声が上がる。
「でもうちはあまりない方なんですよ。これが公爵となればまた所蔵の数も桁違いですし。後この周辺の土地柄で調度品とされてる物もありますね。特に管轄している場所が自然が多く、山々も近いこともあり朝晩の冷え込みが厳しい所なので。ここにもありますけど大きな毛皮とかは富の象徴とされてるんです」
「成る程。何だかその話聞いて合点がいきました」
その言葉に不思議そうな表情を浮かべながらライラは私を見た。
「いや、使用人さん達がローブっていうのですか? 同じのを皆さん着てるから」
彼女の目が一瞬見開き動揺した表情を浮かべるも、瞬時にいつもの笑顔を浮かべる。
「そうですね。皆に体調を崩されては困りますから。それより香月天井も見て頂けます? 私の一番のお気に入りの絵なんです」
ライラに促されるように上を見上げた。すると天井には壁を大きなキャンバスに仕立て、ルネサンス様式で描かれた歴代伯爵の武勇伝らしき絵が生き生きと描かれている。圧倒されつつも、緻密に描かれた絵に思わず見入ってしまう。
関心したまま頭上を向いたままゆっくりと足を進めていると、腕が何かと接触したのだ。慌てて視界を腕の方に向けると、額縁らしき銀色の枠が掛けられた布の隙間から見えていた。その大きさは私の胸ぐらいある長方形の代物で、それ全体に布が被されている。どうやらその布に接触したようだ。すぐさまその生地をかけ直そうと手をのばす。が、非常に滑らかな生地だったせいで、その布がスルスルと落ちていき、瞬く間にその絵の全貌が露わになった。
椅子に若葉色の服に狩猟で捕獲したのか孔雀の様な羽を使ったコサージュが胸元を飾っている。少し小太りではるが、穏やかに笑みを称え、その背後には背もたれに軽く手を乗せ笑みを称えつつ、ピンク色のドレスを着たライラらしき女性。すると、額縁の下に『コンラッド・ソマル・ツベルフ伯爵、ライラ嬢』と記されていた。侯爵のフルネームは知らないが、ライラと記されていると言うことはこの人が彼女の養父なのであろう。しかし、先程カーテン越しで会った伯爵と雰囲気が異なり、同一人物に繋がらない。
「ライラ」
背後に居る彼女に声を掛けた時、大きく脳が揺れたような感覚に陥ると、足が震え立っていられなくなり片膝を着く。
「あ…… れ?」
思っていた以上に言葉がうまく出てこない事に動揺が走ると共に、どうしようもない眠気が一気に押し寄せて来る。
「やっと効いてきたみたいね」
「どう…… 言う事?」
その問いをどうにか口にするも、眠気は益々強くなり、精神的思考は今にでも途切そうになっていた。現に、両手足を床につき座っている状態にであり、立っていられない。
「紅茶だけじゃなくてケーキにも入れといて良かったわ。やっぱり御父様は凄いわね」
「ラ…… イラ?」
直ぐにでも瞼が綴じそうだ。そんな中ゆっくりと頭上を見上げ彼女の顔を見る。すると今までとは違う、含みのあるような笑みを浮かべたライラが一瞬視界に入った。
「おやすみなさい。香月」
その言葉を耳にするが最後、私は意識を手放した。
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