セルリルおかしいと思うよねやっぱり汗
遊びに来て頂きありがとうございます
あの後、食事を終わらせると、そうは時間を待たずして家を出た。いざ出る時も何か言いたげな彼ではあったがあえて知らないフリをしてきたのだ。その際も少し拗ねた様な表情を絶やすことなくこちらをチラチラと見ており、どことなく天邪鬼な子供の様な雰囲気を滲み出していた。
(あんな顔されたら私が悪い事してるみたいじゃない)
子供の様な表情と言えば一週間前の鎮魂の森の件の時、約束通り朝、兵と共に迎えに来たタスラムもそんな顔をしていた。馬から下りて駆け寄り、今にでも泣きそうでいて無理矢理笑いを浮かべている顔。そして私の両肩を数回撫でると、その手を止め、『良かった』と衷心の声をそのまま口にした様な安堵の入り混じった言葉を私に掛けてきたのだ。その後すぐさま借りていた剣を返したのだが、どうやらそれが国宝だったらしく…… その後、兵が恭しくそれ運んでいった姿に散々振り回した手前青ざめてしまった。セルリルは人目見てわかっていたせいであんな含みのある物言いをしたのだろうが、あの時掘り下げて聞かずにいて良かったと今になって思う。
(それにしたって、タスラムもどうかしてる!! 一般のしかも会ってそう月日も経っていない私に貸すなんて!! そんな代物じゃないでしょーよ。っていうか何で私があの二人の意味不明な言動に振り回されなきゃいけないんだよ!!)
思わず両頬を膨らませながら、木立の中を歩き、ここ最近の出来事を振り返り悶々としていると、いつの間にか商店の店先に着いてしまっていたのだ。腑に落ちずじまいの面持ちを宥める様に一回大きく息を吐き、勢いよく戸を開けた。
「こんにちは」
すると、カウンターにいた店主がこちらを見るといつもおの穏やかな笑みを浮かべる。
「いらっしゃいませ。今日はどうしましたか?」
店主の声に反応した子供達が奥の部屋から覗く。その姿に手を振ると二人が店へと走ってきた。
「香月お姉ちゃんいらっしゃい」
「こんにちはキアラ、アレル」
走ってきた勢いそのままに私の足に飛びついてきたキアラが、周りを見渡す。
「セルリル様は一緒じゃないの?」
その質問に口を紡ぐと共に微妙な表情を浮かべる私に、アレルも不思議そうな表情を浮かべる。
「確かこの前のセルリル様。何かいつもと様子が違うっていうか…… 香月お姉ちゃん。セルリル様に何かあったの?」
「お兄ちゃん。きっと変なもの食べちゃったんだよ」
キアラのかわいい発言に複雑な心情も幾分か緩み、思わず吹き出し笑いをすると、その会話を聞いていた店主が咳払いした。
「二人共それぐらいにしなさい。で、本題に戻りましょうか」
「す、すいません。この前店主から依頼して貰った幻覚の薬に必要らしくて。メモ預かってきたんですが、これ置いてありますか?」
そう言いセルリルから渡されたメモを店主に渡す。
「こちらの商品でしたらありますよ。少々お待ち下さい」
そう言い、奥の倉庫と思しき部屋へと姿を消して行くと、案の定店主の子供達はセルリルの変貌ぶりの原因当てとして、各々が言いたい事を言い出した。頭を強打したから始まり、夢見が悪かったとか、実は彼に変装している誰か別の人なのでは等々…… 好き勝手な事を口にする。
まあ本人が居たら子供であろうが鋭い眼光を向けるであろうが、それを返せば子供にこれだけ不思議がられている出来事。いくらここに来て彼の株が上がっているとはいえ、今までのイメージの悪さが如実に出ているのであろうと変に納得しつつ耳を傾けた。
すると手に荷物を抱えた店主が部屋から戻り子供達を諫める。
「申し訳ございません。いい加減にしなさい。とりあえず二人はお母さんの手伝いの途中じゃないのかい?」
すると子供達は声を揃えて返事をすると、軽く私に手を振り、奥へと戻って行く。
「本当に来店してからこんな調子で申し訳ございません」
「いいえ。良いんです。子供は素直ですし彼の変わりようが不思議でならないんでしょう。まあそれは私も変わらないですけど」
怪訝な言葉を発した私に目を丸くする店主の姿が視界に入り、その姿に思わず首を傾げた。
「あのーー 店主。どうしました?」
「いえ。その様子ですと…… セルリル様も難儀ですね」
「へえ?」
「すいません。こちらの話です」
そう言い、いつもの笑みを見せると、カウンターにメモで記載されていた商品を置く。
「とりあえず、指定された商品は用意出来ましたので」
「ありがとうございます」
「いえこちらこそ。今回の商品もセルリル様なら直ぐにでも自力で調達出来そうな物ばかりを、こちらで購入して頂けるのですから有難い事です」
「そうなんですね。でもこの前店長が依頼した幻覚の薬の調合がいつもより時間がかかるみたいな感じでして…… 以前の話だと結構至急の上、量も欲しい感じですよね」
「はい…… この村はそのような被害を耳にしないのですが、隣の町村では多発しているようでして。特にツベルフ伯爵の住まいのホマルク城周辺の町村では俳諧を始める人も出ているとか」
「ツベルフ伯爵?」
「香月様は知らないかもしれませんが、以前の辺境伯程の広域を管轄しているわけではないのですが、今この周辺の領主としていらっしゃる方です。ミトリナは国が管轄していますが、他、周辺勿論この村も伯爵が王から勅命を受け統治している形です」
「そうなんですね。でもその領主のお膝元がそんなんだとやっぱり大事になっちゃいますよ」
「はい。そのような絡みもありまして、大量の薬が必要になってしまっている状態なんです」
「事情はわかりました。少し早めに納品できるよう働きかけてみます」
「ありがとうございます」
そう言い頭を下げる店主の前に数枚のコインを置き、荷物を手にし軽く会釈をして店の外に出た。店内に居た事もあり気づかなかったが、今にでも雨の降りそうな重く、灰色の雲が空を覆っている。雨具を持って来ていない事もあるが、今の話を聞いた以上早くこの物を彼に渡し、薬を調合してもらう事が先決。軽く小走りのような形で道を歩き出す。そして、村を抜け森へと向かう一直線の道に入った。見晴らしの良い草原の斜め前には森が見える。すると道の前方に馬車が止まっている事に気づく。どうやらその馬車は停まっているようで徐々に歩む事で、馬車との距離が縮む。すると思いの外立派な装飾のされている事に気付くと共に、森の入り口に止まっていた。私がここに来て、彼の家を訪れる人間はほぼ決まった顔ぶれである。今回は時たま止まっているのであろうと、特段気にすることなく森に足を踏み入れ、馬車を通過した時だった。
「すいません」
馬車の方から声が聞こえ思わず足を止め視線を送ると、車内に引いてあったカーテンが開けられた。そこには扇子で口元を隠す形で顔を出す女性の姿があったのだ。つかさず周りを見渡すと明らかに私しかいないわけで、彼女は私に話かけているのだと気づく。
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