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どうした?

遊びに来て頂きありがとうございます

「ねえ。この得たい知れない魔道具。地下に持って行ってもいい?」


 ずっと居間の端にほおってあったプレーリードッグの様な動物が後ろ足で立っているような化石。約10キロ程あるだろうか。そんな魔か不思議な置物を抱え、彼の書斎へと進む。大きな窓から差し込む日差し。その前に設置されている作業机に座る広い背中が視界に入った。それと同時に、壁には多くの本が収納されており、他の部屋より天井が低いせいか、覆いかぶさる様な圧迫感を感じる。そんな自室に、ここ最近居る事の多いセルリルは、私の声に振り向く。


「ああ。別に構わん」


 すると彼は少々不思議そうな表情を浮かべた。私はそれを察し笑みを浮かべたる。


「いやね。地下さ防具とか借りたりしたけど、かなりの散らかり様じゃん。だから少し片づけようかなって。そのついで」

「そうか」


 そう言うとセルリルが柔らかな笑みを浮かべた。その姿に思わず驚き、数歩後ずさると共に、本棚に踵を思いっきりぶつける。すると、私の頭上で微かに何かが動く音がすると同時に、目の前に居たセルリルが立ち上がったと思いきや、彼の片手が私の肩を掴み自身に引き寄せた。そしてもう片方の手で本棚を押さえる。


「おい。気をつけろ。ここの本はかなりの厚みがある。直撃するとそれなりの衝撃があるからな」

「あ、うん。あ、ありがとう」


 そう言い、咄嗟に顔を上げると、整った顔が私の目と鼻の先にあり、一瞬息が止まる。そんな中、改めて今、自分の立ち位置に気付き、ゆっくり後ずさりをし、セルリルの懐から一歩引く。


「ははは」


 乾いた笑い声を発すると共に、困惑めいた表情が出てると自覚しつつ、彼の書斎から出る。そして地下へと向かった。


「ふーー こんなもんで良いかな」


 裏明かりの地下倉庫に堆く詰まられた本棚の奥で魔具等を棚に置き、一旦その周りを見渡した。dr以前借りた胸当て甲冑もどうにか良い様に納まり、当初より床が見えるようになっている。


(あのまんまじゃあ何がどこにあるかわからないしね)


 それに普通に放り出されているが、歴とした魔具やマジックアイテムであり、高価且つ稀少な物ばかりに違いない。そんな物がここに無造作且つ、子供のおもちゃの様に置かれていたのだ。まあ男性の方が片づけが苦手と言うし、仕方ない事かもしれない。が、この価値を知ってる者が地下倉庫の惨状を見たら発狂するだろう。そんな事を思い薄く笑みを浮かべる。すると背後の階段から下りてくる人の気配を感じると共に、私の立つ場所まで来ると隣に立つ。


「どうよキレイに整頓出来たと思わない?」

「…… まあな」


 ざっと見渡すセルリルが小声で呟くと共に、私は腕を組ながら頷く。


「でしょーー 私もそう思う」


 するとそんな私の頭上から視線を感じ何気なく顔をかげると、以前の雰囲気とはまた別の、整えられた短髪姿のセルリルがこちらを見つめていた。そんな彼と目が合った途端あからさまに反らされた。


「……」

「な、なんだよ」

「いや、別に。で、何しに来たの?」

「何しにって。昼だから呼びにきてやっただけだ」

「あっそう」


 するとセルリルはスタスタと上へと向かう。私もその後を追うと、ドアノブを握ったまま、出入り口横で立つセルリルの姿が、階段を上っていくうちに視界に入ってきたのだ。思わず足が止まり躊躇するも、恐る恐るドアを後にした。


「あ、ありがとう」


 声が不事前に吃るも、そんな事を気にする素ぶりも無く、セルリルはゆっくりと戸を閉める。


「先、座っていろ」


 彼の言葉に促されるように、席に着くとセルリルも時を経たずに目の前に座り食事は始まった。特に会話もなく、ひたすら出された物を口に運びつつ、ちらりと彼の方を見る。

 一週間前私の独断で切り落とした髪の束は今は無くなり、タスラムよりも短くなった髪。以前はどことなく妖艶を醸し出してた雰囲気から一変、スッリキ、爽やか男子と言った感じに変貌した。また髪で隠れていた部分が無くなった事で、眉目秀麗さがあからさまとなっている。そのせいか以前にも増して男前っぷりが上がっていた。

 そんな彼が最近、兎角この前の一見から挙動が今までと全く異なっている事に私自身理解に苦しんでいるのだ。言葉は相変わらずぶっきらぼうなのだが、無骨ながらも労いの言葉を口にするようになった。その上、先の書斎の一件や今のドアの所作など、今までされたためしがない動作が目に付く。お陰でここ最近は彼がドアなど開け待っている事が殆ど。だと思えば先の様にじっと見られ私と目があえば反らす…… それは外出してもそのスタンスを変わらずなのだ。また、今までは私のことなどお構いなしに先に行ってしまったセルリルが、今は私の歩調に合わせ隣か、少し後ろを歩いている。まあ一連の変化は、彼なりに先日の一件における感謝の意を懸命に表しているのであろうと思えば合点がいく。

 それはそれで今までの事を考えればとてもうれしい事なのだ。だが、少し度が過ぎるように感じるのは私だけなのであろうか? まあ今までほぼ粗野な扱いをされていた状態であり、ましてや私自身がレディーファースト的扱いに慣れてないという背景も関係するのかもしれない。ただセルリルも元はここを治めていた領主の息子。例の不死の一件が無ければ、追々爵位を継ぐ筈の立場だったと推測される。そうなれば剣術だけでなく貴族たる礼儀をそれなりに幼少期から教育の上、叩き込まれているであろうと思えば、あの所作は納得はいく。

 だが、流石に日本にはその習慣がない為、いざしてもらっても対応に困るどころか、気恥ずかしくてしょうがない。それに輪を掛け、あのセルリルがそんな仕草をしたとなれば目を見張るのは私だけではない筈だ。

 現にこの前ルルカ商店に久々に二人で足を運んだ際、彼の仕草に店主とアレル、キアラがあからさまに驚きの表情を浮かべていた。また、その変化に気づき、今まで彼の所業を知ってる村人も同等の形相を見せる。まあ彼が想像も出来ない行動をしている上に、この顔立ちである。目立ないわけがない。お陰でこの前は今まで感じた事のない好奇な視線を村民等から浴びせられてしまった。


(本当あれは勘弁だわ)

 あの状況が脳裏に浮かび、思わず溜息を零す。すると、それに気づいたセルリルが尽かさず私の名を読んだ。


「どうした?」

「い、いや何でもないです」


思わず他人行儀の言葉で慌てて否定する私に、彼の表情が少し緩み微笑を浮かべる。


「それなら良いが」


(な、何なんだよその表情はーー)


 即座に突っ込みを入れたいぐらいの衝動を、飲み込む私にセルリルの話は続く。


「因みに香月、午後は何かやることあるのか?」

「特には…… 素振りぐらいかな」

「なら、一緒に商店に行かないか? 欲しい物あってな」

「この前頼まれた幻覚解消の投薬だっけ?」

「ああ」

「それにしても幻覚って…… いきなりこの界隈で耳にするようになったね。でも、そういうのって伝染とかするの? 個々の問題の様な気がするけど」

「確かに個人の問題ではあるんだが、ここにきて商店の方に問い合わせが多いらしい。それに一般の病気の治療と違い人の内心や脳に関わる事だからな処方も少し難儀ではある」

「ふーん。それで店長さん頼んできたんだ。にしても何でだろうね急に問い合わせが増えてきてるって」

「…… そうだな……」

「まあ何はともあれ、私一人で行ってくるから良いよ」

「はあ? 俺も行くと言った筈だか?」


 少し憤りを滲ませる口調を発したものの、すぐさま拗ねた様な表情をするセルリルに、内心白い目をむけつつ、笑みを浮かべる。


「だって、結構注文多かったし出来る所まで作業進めてた方が良いよ。私一人でも用は足りる話だし。それよりも早く幻覚で大変な思いしている人に、その薬届けられた方がいいだろうから」

「しかし……」

「とりあえず!! 私一人で行って来るからセルリルは作業してて!!」

「…… わかった」


 ピシャリと言い切った私の言葉に、どことなく腑が落ちないと言った表情を浮かべ続ける。そんなセルリルを私は見つめつつ、一回頷き再度食事を再会した。

読んで頂き有難うございます

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頂ければ幸いです



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