セルリルはどこにいる
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「何しに来た?」
「助けてもらって早々それ?」
「今すぐここから離れろ」
「どうしてそんな事言われなちゃいけないのよ。だいたいセルリルが協力仰いでそれはないでしょ? それに私も受けた以上最後までやらないと気が済まない性分なんでね」
「は?」
声と共にセルリルは私の手を勢いよく引き離す。
「これ以上他人がっ、香月が命を危険に晒すことはねーだよ!!」
「だったら何? セルリルなら良いわけ?」
「昨日の話を聞いてなかったのか? 相打ちでも目の前の怪物を倒せるなら命だろうが差し出すと言った筈だ。俺は奴等を消滅させる為だけに生きてるんだと。この格好も、己の信念を絶やさない為だと言った事を忘れたのか!!」
声を荒げ、その口調の勢いのまま彼は束ねた髪を掴む。
「本当、思った以上にソックリで反吐で出るっ!!」
セルリルは捨てるかのような言葉を発し、その手を下に下ろす。そして体を反転させ即座に陣が構築し、攻撃に転じようとした。私はそんなセルリルの髪の束を掴み、タスラムに持たされた剣を抜くと、迷うことなく手にしていたしなやかな髪の束を切り落とした。すると何か異変を察したセルリルが再度、私の方を見ると、目を見開き茫然としている。どうやら何が起きたのか理解しきれていないようだ。それもその筈。彼の目の前には先まであった髪の束が私の手元にあり、銀色の髪がハラハラと落ちているのだから。私はそんな彼の表情を一瞬目に留めたものの、すぐさま剣を見た。
「流石、硬質最強鉱物は切れ味が違うね」
セルリルは未だに何が起きたかわからず、先刻握った筈の髪の束を手で探る。が、彼の手の平は空を掻いていた。そんな私はセルリルに視線を移す。
「セルリルは今どこに居るんだ?」
握っていた髪を離すと、細くしなやかな髪が辺りに舞い散る。
「何を言ってやがる。俺はここにっ」
「いやっ!! あんたはここには居ない!! 体はあっても、心意は過去に置いたままなんだよ!!」
そう言うと、ポケットから袋を出すと彼の胸に強く押し当てた。
「セルリルは今を生きているんだ。この木の実を食べて空腹を凌んだり、眠くなったら寝る。そういう生活を今、この時を人として生きている。ただ、あんたの気持ちはその事件から時が止まってるんだよ。確かに幼少期にそんな境遇の上に、死の間際に辛辣な言葉を浴びせられて、引きずらないでいられるわけない。それにあんたが二人の存在を消す為だけに今まで生きてきた覚悟も行動でわかる。でも、セルリルの執着している二人は不死で、時の流れが全く違う。その二人は過去の死で全てが止まってしまっているかもしれないけど、アンタまでそれに合わせる必要なんてない!! それとも何、死んで楽になりたいとか思ってんの? それこそセルリルに散々自分等の言い分だけ押し付けた親の為に、人生棒に振るなんて馬鹿げてるつーだよ!!」
私は思いの丈をぶつけ彼を見つめた。そんな私にセルリルは瞬きもせず凝視する事寸刻。彼が下に視線を変えたと思いきや、真剣な眼差しを私に向ける。
「全く、鬼畜だの腹黒と言われている俺にそんな啖呵きりやがって!! こうなったら、お前が言ったんだ。最後までつき合ってもらう!!」
その言葉に私はニヤリと笑う。
「そりゃあ勿論。私も公言した以上、あんたの過去の汚点一掃してやるわ!! とりあえず朝方にはタスラムに迎えにきてもらうよう頼んでおいたから、さっさと片づけるよ!!」
「タスラムが来たのか魔女の集落に?」
「うんそうだけど。で、この剣持ってけって。切れ味もだけど鞘の装飾もすごいんだよね」
すると私の右手に持っていた剣と柄をまじまじと見ると、目を細くし苦笑いをする。
「何よ」
「知らない方が良いこともある」
「そう言われると気になるでしょ!!」
私の叫び声と同時に、生成した石壁が全て倒され、粉塵が舞う。すると月明かりによって、邪神の様相を帯びた影が浮き出た。私達は、すぐさま間合いをとり、セルリルはすぐさま三方に再度壁を再度構築させ、私をチラリと見る。
「まあ、迎えに来るならタス本人から聞け」
「それまでとっとくの? それないわ」
「つべこべ煩い。まあ第一前提としてアイツを倒して帰れればの話だが。まあ俺等が負けるわけがないがな」
「何か久々に聞いたような気がするその強気発言。まあそうでなくっちゃこっちも調子狂うのよね。で、なんか作戦あるの?」
「香月、さっきの袋の中は木の実が入っているで良いんだな?」
「うん」
そう言われ私は、実を手の平に出す。セルリルはその実を見ると口角をあげた。
「成る程、これならいけるかもしれない。香月、発光液は」
「まだ、使ってないからポーチに入ってる」
「なら、俺の今の光魔法よりそっちの方が威力が強いな。魔法より時間は稼げる」
「で、どうすればいいの?」
「簡潔に言う。チャンスは一回だ!!」
壁に籠城してから再三の攻撃により、音と共に地響きが凄まじい。そんな中、私はセルリルの話を必死に聞いた。
怒濤のような鞭打ちが続き、先刻生成した壁も後数分持てば良いぐらいに劣化している。そんな中、私が目で合図をすると、セルリルが壁と壁との間30センチ程の隙間から、小瓶を蛇の方へと投げつけた。慌てて背を壁に付けると、白く目映い閃光が洞窟内を一気に明るくする。途端にその光は喪失すると同じくして、怪物からけたたましい叫び声が上がった。それに順次、すぐさま壁から出ると、上半身の女性が目を押さえのたうち回っている。
「香月、急げ!!」
セルリルの勇ましい声が上がる中、私は蛇を中心に木の実を巻いていく。すると、その動きを察した怪物が、目を押さえながらも、太い尾を振り回す。
『どこだ!! どこにいる!!』
「スケルトンアミーが居ないのが、運の尽きだね。攻撃パターンがみんな同じになっちゃうからある程度は読めるんだよ!!」
そう叫びつつ、振り下ろされる尻尾を軽々避け、バケモノの背後につくと、再度声を張り上げた。
「セルリル!!」
私の声が一瞬響くと、セルリルは両手に陣を描き出す。すると蒔いた木の実が、一気に成長し、何本もの蔦が生えてきたのだ。それは瞬く間に怪物の尾や胴体に絡みつくと、全身が地面に羽交い締めにされ、身動きがとれない状態になったのだ。
すぐさま私はその巨体に登ると、上半身の女性を上から見下ろす。両手首と、胸元に蔦が絡みつき身動きが取れず、もがいている。
『これを退けろ!! さもなくば叩き殺してやる!!』
怨みの籠もった声が目の前で浴びせられるも、その顔を一瞥し、腹部のバイオレットオレンジに光る場所に照準を合わせる。そしてタスラムから借り受けた剣を両手で持つと一気にその光の根元に、突き立てた。
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