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心の支えはやっぱり必要不可欠

遊びに来て頂きありがとうございます

 夜の森は非常に不気味な空気が漂う。特に、いわく付きのせいもあるかもしれないが、気持ち的に穏やかではない。少しの草木の音に敏感に反応してしまう。しかも、それに加えて交戦中と言うこともあり、地響きが足下から伝わり、それと共に、洞窟入り口から閃光が外まで漏れていた。

 レミロザの話の通り、夜に仕掛けると言う情報からいくと、今戦闘まっただ中なのだろう。かたや、洞窟外は、月光のお陰で明るく様子を伺い知る事が可能で有り、非常にありがたい状況だ。そんな中まず、入り口周辺の様子を見る。目視の感じだとスケルトンアミーは確認出来ないが、先の戦闘の件を踏まえれば、残党がいる可能性もすてきれない。


(用心に越したことないよね)


 念入りに周りを確認しつつ、手渡された非常食の袋から手の平に実を出そうと袋を振った。が、袋からの出た果実は手から零れ、下へと落ちていく。不思議に思い掌を凝視すると、小刻みに震えている事がわかり、苦笑いを浮かべる。


「あんな啖呵を切っておいてビビってるとか、ありえないし」


 ただ、体がまだあの恐怖を覚えてしまっている。あんな経験は以前の生活では体験した事のない出来事。ましてや、怪物とは言っているが、元をたどれば、セルリルの実母というのが、やはり複雑な心境ではある。だが、彼女が怪物の姿になってしまう程に実の息子に対して、怨念に近い心情を抱いている現状に、恐ろしさを感じずにはいられない。彼女もあんな姿になる程追いつめられていたのかもしれないが、だったら、あの罵声や悍ましい姿の母親を見たセルリルは一体どう思って今対峙しているのだろうか? 

 半日前に彼の境遇を聞いてから、生い立ちが類似している事が多く、思わず私自身と重ねてしまう。つらい時期だったのは間違いない。ただ、私には心の支えとなってくれた母がいてくれた。だがセルリルの周りにはそういった人がいなかったのだ。

 唯一彼に寄り添ってくれていると思っていた母親にさえ死の間際の厭世の言葉と共に、今のこの現実。彼的には全てを無かったモノにしたいのかもしれない。勿論セルリル自身さえも。


「ある意味私の方が恵まれていたのかもね」


 まあそれに一連の境遇からいって、腹黒も納得であり、あれぐらいのひねくれで収まっている自体奇跡なのかもしれない。裏を返せば根が悪いわけではないと言うことであり、私自身もそれは薄々感じる事もあった。だからこそ、セルリルにわかって欲しい事がある。今彼自身が生きている現実と、それに対しての意義をちゃんと直視して欲しいのだ。

 未だに震える手を強く握り閉めると、木の実の袋に一気に手を突っ込む。そしていくつかの実を鷲掴みし、口にそれらを頬張り飲み込んだ。そして、左腰にあるタスラムから預かった剣の柄に手を添える。


「じゃあ。行きますか」


 自身を奮起させるかのように一言言葉を発し、閃光光る洞窟へと足を向かわせた。


 暗がりの中、辺りを確認しつつ、洞窟内へと足を踏み折れる。そして、すぐさま岩場に隠れ、戦火に近づく。洞窟外でも足元の揺れを感じてはいたが、洞窟内に突入した途端、下からの突き上げ感が尋常では無い。また、バケモノの尾の振り下ろす音と共に、私の肌に風圧を感じる。


(こんなのに当たったりしたら、即アウトだな)


 そんな事が頭を過ぎり思わず苦笑いをしつつ戦場を覗く。砂煙が立ち込め視界がハッキリしない中、目を凝らす。するとこちらに背を向け、三方に石壁しゃがむセルリルの姿を捉えた。とりあえず、彼を見つけた事で安堵するものの、明らかに劣勢。 セルリルの構築した魔法壁なのである程度は凌げているが、尾の鞭の威力が凄まじく、壁が崩れてきていた。


(さて、どうする……)


 その時、バケモノがいきなり発狂したのだ。思わず耳を抑えたものの、頭中を駆け巡り偏頭痛のような痛みが襲うと共に、音波で洞窟壁を揺らぐ。そんな中、続けてバケモノが叫ぶ。



『恐ろしい子、恐怖の根元!!』


 側から聞いていてもわかる。怨みの籠った言葉。瞬時に寒気を感じた。その直後、間髪入れずにバケモノが声を上げる。


『私の人生はなんだったの? あんたを産んでから何一つ良い事などなかった…… 夫に魔力暴走を止めるように言われ、かたやいつ暴走するかもわからない恐怖に怯え、両者の機嫌を伺いながら生きてきたこの月日…… 滑稽でならないわ』


 赤の他人が聞いていても堪える言葉。だとしたら、セルリルは一体どんな思いでその言葉を聞いているのであろうか……


(いくらなんでもこれは酷い…… )


 思わず奥歯を噛み攻め、叫ぶバケモノを睨む。


(ここでケリつけてやる!!)


 そう思った直後、セルリルの元へと走っていた。その時、石壁上部が破損し、揺らぐのが見えた。彼はその事に気づいていない。まあ、あんな呪いのような言葉を言われたのだから周りが見えなくなってもしょうがない事。私は猛烈なダッシュで彼の元へ向かうと、案の定石壁がセルリルの頭上に落下するとほぼ同時、彼の腕を掴み引っ張った。その直後、セルリルの目の前に石壁が鈍い音を立て落ちる。その様子を私と彼は見つめる事暫し。深く溜息をつくと、セルリルが振り向き私を見た。



 



 

読んで頂き有難うございます

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