罪
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「セルリルッ」
小さなランプが高い天井に吊され、淡いオレンジ色に発光している薄暗い部屋。ここは最初に通されたツリーハウス内。その中央にセルリルは横だわっている。室内もそう明るくないとはいえ、明らかに顔色は青白く、健康体とは程遠い。そんな彼を治療をしてくれたレミロザと共に見つめている。
あれからどのくらいの時間が経ったのであろう。それ際も今の私にはわからない。ただここにセルリルが運ばれてからとてつもなく長い時間が経っているように感じていた。そんな中、私は彼の傍に座り、名を呼び続けている。私自身承諾した案件での失態。しかもそれによって目の前のセルリルが意識を取り戻さない現実。悔しく、自身に対して怒りがとめども無く溢れる。しかし、今は何よりも彼に目覚めてほしい。私は、様々な感情が入り混じる中、唇を強く一回噛み締め、再度口を開く。
「いつまで寝てるのよっ、セルリルッ」
その時だ。瞼が少し動く。私は、再度、彼の名を読んだ。すると、その瞼がゆっくりと開き、天井を見つめる事暫し。セルリルが横にいる私を一瞥すると、再度天井を仰ぐ。そんな彼を、立って様子を見ていたレミロザが、安堵の表情を浮かべる。
「香月様。もう大丈夫ですよ。とりあえず、私は食事持ってきますね」
そう言い、彼女は部屋を出ていき部屋には私と彼の2人となった。そんな中、セルリルは再度周りの様子を見ているようだ。その姿に、安堵と共に、様々な感情が湧き上がりる。私は、下に視線を移し、膝の上で拳を握る自身の手を見つめた。そして、先からいく回も口にしていた彼の名を呼ぶ。
「聞こえている」
「聞こえてるんなら返事ぐらいしろ!!」
そう言い顔を上げ、彼を見る。すると、セルリルはじっとこちらを見つめた。
「この状態で返事できるか」
「四の五の言うな!!」
そう口走ってしまったが、こちらの感情を今の状態の彼にぶつけるのは良いことではない。私は、すぐさま口を紡ぐ。すると、セルリルが口を開く。
「聞こえていた。今さっきまでずっとだ。どんだけ連呼してるんだ一体」
「だって、重傷だったし、レミロザさんもこのまま意識戻らなかったら危ないって言うから」
そう言い言葉を濁す。
「…… お前は馬鹿か?」
「はあ?」
予想外の言葉に私の語尾が上がると共に、瞬時に彼を睨む。それに対しセルリルは深い溜息をして見せた。
「香月がいくら承諾したからといって、こんな惨事に巻き込んだ事に普通なら激高してもおかしくないだろう? その右肩の押さえ布からしても、お前自身負傷しているんだぞ。そんな状況にも関わらずこんな俺の名を連呼する…… 何故俺の心配をしているんだ?」
「…… 胸くそ悪いからよ。どんなに腹黒だろが、目の前で同居者に死なれたら私がたまったもんじゃない。死ぬのは勝手と思ってるかもしれないけど、残された身にもなりなさいよね。いろんな事情は人それぞれ抱えているだろうし、セルリルの生い立ちなんて知りもしないけど…… 同じ屋根の下で暫く住んだ手前、それなりに人となりを知っちゃってる以上、生半可ほっとけるわけないでしょ」
そう言い、じっと彼の顔を見つめる。セルリルもそんな私の顔を凝視する事暫し。彼が突如背中を向け沈黙すると共に、部屋が一気の静まり返ったその時。
「セルリル・オルフェ・ミトリナ」
「急に何それ?」
「俺の本名」
「そんなに尾が長いの? オルフェ…… ミトリナ…… どこかで聞いたような?」
私は、以前の記憶を掘り返す。
「確か、ミトリナってこの前そんなような名前の町セルリル行かなかった?」
「…… 以前親が領主だったからな」
「はい?」
いきなり彼からのカミングアウトに思わず声が裏返る。そんな私を余所にセルリルの話は続く。
「俺の両親はあの町周辺一体を統括していた辺境伯だった。名はガンダル。母はリリー。代々ミトリナ辺境伯家系は剣術に秀でていて、当時は今のような魔法一点張りの感覚は今よりなくてな。勿論父はそんな魔法一辺倒主義的風潮が出てきてた時期でもあり、魔法を毛嫌いしていたよ。そんな中、母との一子として俺が生まれた。勿論父は剣術を軸として俺の記憶がない時期から剣を握らされ叩き込まれていて、俺自身幼少期での覚えている記憶の中では既に腰に剣をつけていた。だが、いくら教えても剣術は上達しなくてな。そんな父はある日、領地の政を一手に仕切っていた祭司に相談し、義務教育を控えた7歳の時に、俺の基本的素質を様々な角度で検証したらしい。そこで出された答えが、剣術より魔法の方が格段に能力が高いという結論だった。それに落胆した父は俺に魔法を使えないように暗示をかけさせ、今まで以上に剣術を教え込んだ。ただやはり、暗示をかけられているだけで、魔法が完全に押さえられるわけでもなく、暴走的な事が度々あって…… 日頃押さえられているせいか、その暴走っていうのが、屋敷の半分ふっとばしてみたりとかで、俺自体どうずる事もできなかった。なんせ魔法を毛嫌いしてる人だったから、何の知識も教えてもらえなかったからな。お陰でいつ、暴走するかわからない俺の魔法に使用人達は怖がって日常生活で話してくれた人は母以外いなかった。まあ後別邸に公妾がいてその人が産んだ子供で、ライラという異母妹も居たが、そいつとは会えば多少会話をしたか。でも当時は会う機会が少なく、公妾が亡くなってからは別邸でほぼひきこもり話す機会がなくなっていたがな。そんな俺が9歳の時に隣国から元兵士の残党がうちの屋敷を襲撃した。流石に相手は元兵士という事と奇襲もあってあっという間に制圧され、目の前で両親が殺害され…… それにより再び魔法が暴走してその周辺すべてを吹き飛ばした。そのせいで両親は瓦礫の下になって…… あの時まだガキだった俺は魔法知識が無くてロクに扱えないとわかっていたのにも関わらず、両親に不死の魔法を掛けてそこで力つき…… 目を覚ました時には、王国の医務室に寝ていたよ。その時、起きた話として、当時討伐に加わった兵士達が、幻覚を見始め、戦闘不能に陥ったり、死んだ筈の同僚に襲われ、俳諧しているという騒ぎになった。どうやらそれを指揮し、操っていたのが、不死になった両親だったようでな。まあこの国で神経系統をイカレさせる事なんて内服しか知らない。ましてや死人が歩き出すとかあり得ない話だろ? 勿論建国以来そんな事が起きた事例もなく、鎮圧迄に時間を要したらしい。そんな奴等は混乱に乗じて姿を晦ました。まあその後、事が事だけに現当主の安否も不明の為、一旦爵位は王に返上し、俺は国の管轄下に置かれた。同時に魔法の素質を買われ、追々国の駒になりうるという判断で魔法学校に入学させ今に至るわけだ。まあ、そんな背景はあるにせよ魔法を一から学べた事でそれなりに知識を得る事は出来た。ただあの不死の術式は未だに俺にも解けん代物で…… そんな時に魔法を一切無効にする香月、お前を拾ったってわけだ」
「…… 一気に言われても…… っていうか平然と話す内容じゃないでしょそれ?」
「そんなつもりは無いんだが」
いきなりの情報量に寸刻の時間を要したのち、ふとした疑問が脳裏を過ぎる。
「でもその話聞いて思ったんだけど、あの対峙している母親? が言ってる事って矛盾してない? 実際にはセルリルは殺していないんでしょ?」
「あれはあくまでも死人であり、完璧なクローンではないからな。生前の強い思念によって形成されてもる物であり、そう力ない物でれば、スケルトンアミーの様に利用されて終わる」
「だから何が言いたいの?」
「俺に殺されると思うぐらい嫌悪し怯えていたのだろう」
「それこそ憶測じゃない!! 実際に!!」
「実際に聞いたさ。野党に剣を突きつけられた母親が、俺の顔を見て狂ったように笑いながら。『父親に俺の暴走を止めるように言われ、いつ暴走するかもわからない恐怖に怯えていた』と言い最後に呪うように睨みつけたからな。でもあんな姿が見れたお陰で早い段階から子供なりに踏ん切りが付けられた。俺の汚点であるアイツ等を消滅させてやるってな。だいたいこの髪型も母に似せる事でその思いを忘れない為にしているようなもんだから」
「…… ごめん」
「何故謝る」
「いや、話たくなかったよなって」
「別に。事実を言ってるだけであって、話すつもりもなかったらこんな話最初からしない」
「そうなんだけど……」
思わず言葉を濁し、その後何も言えなくなってしまった。本人は淡々と話しているとはいえ、彼自身にとってはかなりのトラウマになっているのは確かだ。そうでなくては、今までの人生の大半をこれらの一件に、固執する必要性など無いのだから。
事の根深さにこれ以上の言葉が出ない。その時、入り口付近から人影を感じると共に、いい匂いがしてきた。
「遅くなってごめんさない。お腹空いたでしょ? たいしたモノではないですが作ってきましたので」
すると、小鍋を持ちながらレミロザが部屋に入り手の鍋をワゴンの上に置く。
「そういえば香月様。サロマが肩の様子を診ると言ってましたので彼女の所に行ってみて下さい。骨や筋肉のしくみに関しては彼女の方が知識ありますので」
「わかりました。因みにサロマさんは?」
「広場挟んだ真向かいのツリーハウスにいます」
「ありがとございます。早速行ってみます。後ーー セルリル起きて早々だけどちゃんと食べなよね。せっかく作ってきてもらったんだし。それにあんたの十八番の嫌みの切れが悪いとこっちも調子が狂うから!!」
渡りに船ばりのレミロザの登場に感謝する。そして私は、立ち上がり、その場をすぐさま離れると、私の背後で2人が何かを話し出す。が、私はそれに気に留めることなく、向かいのツリーハウスへと歩みを進めた。
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