弱音言ってます?
遊びに来て頂きありがとうございます
「凡にだが、何が情報等そちらでわかっている事を教えてくれ」
「はい。先日の隣国国境とは別に険しい山脈の尾根に二国を跨ぎ広がる鎮魂の森というのが広がっています。あの森は無数の魔物等が生息している事もあり、一般の人間は滅多に足を踏み入れることはまずありません。ただあの森の周辺の諸国は100年ぐらい前まで、死人を埋葬していた関係上、眠りの祭壇と呼ばれる場所があります。その場所は以前まで使われた事もあり、我々魔女もあの森でしか採取できない薬草諸々等で、足を運ぶ事があります。先日も薬草を採取しに向かった魔女達がいたのですが、その者達が眠りの祭壇周辺にスケルトンアミーが多数見かけたと報告を受けております」
「スケルトンアミー? セルリル何それ?」
「死した者の骨という事だ。基本あいつらは意志を持たない傀儡だ」
「ってことは操ってる人がいるって事?」
「香月様。正解です。ただ、操るにしてもそれ相応の力がないと出来る事ではありませんし、操れる個体数もそれに応じて変わってきます」
「どのくらい居そうなんだ?」
「眠りの祭壇設置内の洞窟内は不明ですが、ざっとみつもっても、30体はいたようです」
「…… わかった。情報感謝する。早速だが、明日にでも出発を考えているのだが、可能な支援を教えてくれ」
「わかりました。サロマ例の物をこちらへ」
すると彼女の背後に立っていた老婆が本棚の一角に置いていた布で巻いた物を持ってくる。そして壁に立て替えてあった袖机を設営し、その上に布包みを広げた。そこには、緑色の蔦であまれた細いブレスレット3個と、黄色の蛍光色の液体の入った小瓶一本、透明の液体の入った小瓶が数本が並び、それらをサロマが指を差す。
「端から、透明の小瓶は体力回復液でございます。後この黄色の液体はアミーに有効とされております発光液です。仕様の際は直接見るのを避けて頂きますようお願い致します。最後にこの腕輪でございますが、転送発動リングでございます。あくまでもその場に行った事の有る当事者のみが対象になりまして、その場所からこの集落までまたは、その逆が蔦を切った人と、その人物にふれていたモノが瞬時に移動可能になる代物でございます」
彼女の話が終わったのを見計らい、私は遠慮気味に挙手をした。
「あのーー これらのアイテムって誰でも使えるんですか……」
「はい。香月様の体質の件はタスラム様から聞いていましたので、使える仕様になっております。ただ仕様が仕様だけに、数がこれだけの上に回復液に関しては、気持ちの問題程度かと。大した準備できずに申し訳ございません」
「いや、助かる」
そう言うと、会釈をする彼にお構いなくといった表情を浮かべ笑みを零したレミロザは、目の前の食事に手を差し向ける。
「とりあえず、冷めないうちに食事どうぞ」
彼女のその言葉に甘え、昼から取ることのなかった食事にありついた。
窓からうっすらと光が差し込み、暗いツリーハウス内を照らす。辺りは虫の鳴き声と、梟に似た鳴き声が微かに聞こえる。
そんな夜更け、食事後案内されたツリーハウス内を布で仕切った状態でセルリルと床についていた。しかし、明日の件もあり、なかなか眠りにつけずじっと天井を見つめていると、布越しのセルリルから溜息の声が漏れた。どうやら彼も眠れないでいるらしい。
「セルリル。眠れないの?」
「…… 何故そう思う」
「いや、溜息してるし。しかも今回の件に関していつもと様子が変だから。実際にセルリルの追ってる人物なの?」
「ああ…… ほぼ確実だ。この世界で精神を操る魔法など存在しいというのが原則。それは人の脳内の問題だからな。薬や、薬草を服用する事で引き起こされる事はあっても魔法でどうこう出来る事じゃない。だが、唯一それを使える奴らを…… 知っている。俺はその現状を見る事はなかったが、当時目撃した者達が多数いるからな」
「そっか…… それにしても、一連の件、概要がわからなすぎなんだけど少し説明してくれない?」
その問いかけに暫くの沈黙が流れた後、彼は大きく呼吸をした。
「俺の親族の可能性が高い。その人物は不死」
「…… じゃあセルリルも不死なわけ?」
「俺は違う。親族も元は普通の人間だった。だが、俺がアイツ等を不死に変えた」
予期していなかった発言に言葉が出ない。彼の魔法全般の才能は凄いと思っていたが、人の死さえも魔法で変えてしまったという事に、思わず背筋が寒くなる。たが、非道の行いは多々あるが、彼自身に害を与えなければ、手にかけることはないという事もセルリルと生活を共にしてわかっている。そんな彼が身内に不死の魔法をかけた原因は一体なんだったのであろうか……
(不死っていう事は一回死んでるってことだよね。でも明日はその親族の息の根を止めに行くってことで…… なんだか複雑な気分……)
そんな時、不意に亡くなった母の事が頭を過る。もし現世にそんな事が出来る技術があれば、当時の私の人生は多少なりとも違う方向へ行ってたのではないだろうか。
(でもきっとそんな技術があったとしてもお母さんは断っただろうな)
月日だけが流れ、周りには知人もなく、持て余す程の時間は人としての輝きを失っていく。人には寿命があるから、後悔のない様に懸命に一日、一日を暮らしていけるのだと思う。そんな日々から他者との関わりを経て、互いに信頼や、共感し合える仲となる…… それは自身がここに居ても良いのだと胸に抱かしてくれる。母が亡くなり、その後生きていた中での教訓。
(まあセルリルも色々あったって事なんだろうねきっと)
そんな事を思い、布越しに外から入る月光で山脈の形を模した彼の寝姿を、まじまじと見つめる。すると彼がいきなり鼻で笑う。
「ったく、我ながら反吐が出るっ、俺の最大の汚点だ。どんな形にせよアイツ等を生かすかたちになっちまった。だからこの件は俺が…… どんな手を使ってでもケリをつける必要がある。フッ。そんな背景もあって王国からも目を付けられる始末だっ」
吐いて捨てる様な言葉を口にするも、その後沈黙が空間を支配する事暫し。再度一声あげる。
「とりあえずざっと話した通りだ。俺はお前に、自身の尻拭いの上、親族を葬る片棒を担がせる事になる」
「成る程…… 確かに気分が良い話じゃないけど、そのままでも可愛そうじゃない。その話だと、不死になりたくてなった感じじゃないし、セルリルもしたくて不死にした訳ではなさそうだから」
「…… ああ。全くもって」
「んんーー ねえ、大丈夫? いつもの横柄さがなくて調子狂うだけど。何だかかえって心配になってきた!! 明日その状態で倒せるの?」
「まあ、香月の最終兵器という立場は揺るぎない事だからな。即ちお前の頑張り次第だ」
「えっ!! またそのパターン? 少し気持ち落ち込んでるのかと思ったけど、やっぱり性悪のまんまだわ」
「五月蠅い。明日もある。寝ろ」
「それはこっちのセリフ!!」
言葉の勢いのまま寝転がり、布を頭まで被ると彼が視界から消える。が、背になんとなくセルリルの気配を感じながら、瞼を閉じた。
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