牢獄にて
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石の壁が高く積み上げられ、その天井近くに鉄格子がはめ込まれた窓があった。空気口を兼ねた窓はその一つしか見あたらず、その遙か下にある石畳まで日差しが届くことはまずない狭い部屋で、シャレン商会の社長が、室内の傍らで蹲っている。
それを鉄越しのドア窓から様子を伺うタスラムの姿がそこにあった。
「うんーー あれ以上は聞き出せないかもね」
両手を軽く上げてお手上げといった表情を浮かべる。そんな彼の姿を壁に寄りかかり睨む。
「そんな顔しても、出てこないモノは出てこない」
「タスの尋問の仕方が温いんだ。俺にやらせろ」
「はあ? 一般人に尋問はやらせません。しかもセルにやせたらそれこそあの社長の命が危うい」
「生かしておく事あるのか?」
「ほらそれだよーー」
溜息をついたタスラムが苦笑を浮かべる。
「でも、今回は結構有力な情報だったと思うけど。セル的にはどうなの?」
「ああ。多分間違いない」
その言葉の後暫し黙り込むも、タスラムがその沈黙を解いた。
「で、どうするつもりだ?」
「勿論、この世界から排除するまでの事だ」
「そんな事本当に出来るの? あの人達不死になったんだろ?」
「だとしてもだ。それに今までのような手だてがないといった感じでもないからな」
「それって、香月の事?」
「そうだが」
するとタスラムが、矢で射抜くような視線を俺に向ける。
「セル。何が起きるかわからないのに彼女を駒として使うつもり?」
「ああ」
「相変わらずと言いたい所だけど、それには賛同できないな」
「タスには関係ないだろ? あくまでも俺と香月の問題であり、彼女は既に協力を承諾済みだ」
「それ、ちゃんと説明してあるの? なし崩し状態ならそれは成立とはいえないだろ?」
「それはタスには関係ない」
その言葉と同時に、俺の顔横の石壁に彼が拳を叩きつけた。鈍い音と振動を背中で感じ目線をタスラムに合わせる。
「彼女に怪我を負わせるような事を仕様ものなら許さないよ」
「何だお前。だいぶ香月にご執心だな」
「そうだね。私が思っている以上に彼女に興味があるみたいだよ。さっきからのセルの話が全く腑に落ちないし、腹も立つ。だいたいこの件はセルの一族の問題であって彼女は全く関係ない」
「だとしても、俺が今こうやって生きる選択したのも俺自身の悲願を成就する為だ。それが成し遂げるなら何でも利用させてもらう」
「セル、お前っ!! …… まあいい。お前達一族は、あの一件以来国の監視対象になっている。御家騒動とはいえ、国滅亡の火種になることだってありえる。だから、旧友という名目で定期的に顔をだすけど実際は監視というウエイトの方が高めだし、不穏な行動があれば私の一存で手に掛けても構わない話しになっているからね」
「まあ俺の処分はタスの判断で下せばいい。ただお前に俺がやれるならの話しだが」
睨むタスラムに不適な笑みを浮かべてみせ、暗い廊下を歩き出す。そして途中で足を止め、振り向くことなく背後の彼に声を掛ける。
「心配するな。前も言ったがもしもの時は香月だけでも退去させる処置を俺が状況判断でする。それに協力を仰いでいる身だ。悪いようにはしない」
そう伝え照明乏しき石廊下を歩いて行く。そして暗がりの廊下先の階段を登り、一階に着いた所で、警備兵が階段口に二人立っていた。
「お疲れ様です」
その声に反応することなく、一階出口に向かい、いくつものドアが並ぶ廊下を通る。すると、目の前がいきなり開け、天窓を用した吹き抜けエントラスに出た。がたいの良い兵士が闊歩する中、その障害を回避しつつ、クロークについているフードを被ると外へ出る。
都市ミトリナ。リレイム村の隣の都市であり、中核都市という事から、国の中枢を担う機関も出張所という形で設置されていた。その中の一つの機関であるこの周辺の防衛を担う詰め所を後にする。五番の目の様に整備された街並みには出店や、商店が並び、村とは比べモノにならない程に、モノも人も溢れ賑やかである。
そんな中を器用に潜り抜け、足早に街の門へと向かうと、何も見ることなく、街を後にした。基本的に騒がしい場所は好まないという事もあったのだが、今は持たらされた情報が俺の足を早める。
(やっと、一人見つけた)
あの一件で、連行されたシャレン商会の社長の事情聴取がある程度終わったという事で、昨日この街に足を運び、その顛末を聞いたのだ。
その話によれば、数年前紺桔梗色のバーヌースで、全身を覆うような状態の人物が店に訪れたとの事。そして社長を呼び出し、オレンジ色の魔石を見せ、『これは、人の精神を操れる代物です。有る程度の知識のある者であればこの石から同じような魔石を大量に作る事が可能ですので試してみてください』と言い、試作品であり、使ってみてくれないかと渡されたという。
それ以降その人物が店を訪れる事はなかったと言っている模様。ただ、今回の件が注視される以前からあの周辺では不可解な事が起きていた様で、実際にタスラムが諜報人の話として、数年前よりあの辺りで死人が俳諧しているという情報がちらほら入ってきていたようなのだ。なので此度はその死人案件も踏まえて、捜査をしていたようなのである。まあ蓋を開けてみればその事案は当初の予想の絡みとは別だったのだが、死人俳諧情報は年々頻度が上がっているとのことなのだ。
思いがけずの報。ここ数年なかなかしっぽを掴めなかったが、確実に探し続けたモノの一人と確信出来る情報。
「直ぐにでも行って…… そしてこの手でケリをつける」
憎々しい思いを込めた独り言を零し、草原の中を村に向かい風を切って歩いた。
読んで頂き有難うございます
星、いいね、感想
頂ければ幸いです
また次回の更新ですが少し間を頂き
3月21日(火)8時30分以降更新とさせて頂きます
新な章に入りましたが この章はセルリルの
拗れきった性格の要因が判明する感じになってます
暫く空いてしまいますが、また遊びに来て頂ける様なら嬉しいです




