俺に隠し事してないか?
遊びに来て頂きありがとうございます
「おじさんありがとう」
遠くに森も見えるものの目先には青々と茂る野原。そこに一本の道が延々と続いていた。そんな道をひたすらまっすぐ進み、目の前には山々が近くに見え始めた。
そんな中、タスラムは一声掛け荷馬車から降りる。それに追随しセルリルが下車するものの、同行した私は馬車に酔い全く動けないまま、荷物によりかかりぐったりしていた。セルリルは溜息をつきつつ、再度荷馬車に足を踏み入れ、私を片手で抱えて下車させると同時に、草原の上にほおり出す。
「セル何やってるんだ。何回も言ってる事だけどもうちょっとレディの扱いには配慮しなよ。君だってそれなりに修習した筈だろ?」
「ふん。理解はしているが、それを実行するかの有無は俺にあるだろ? にしても、こんなに荷馬車に弱いとはな」
「香月大丈夫かい?」
「ど、どうにか……」
唸るように答える私にタスラムは手を伸ばそうとするのを、セルリルが一声かけそれを静止させる。
「タスは情報収集が適任だろが。こいつの対処はしておく」
「えーー なんか残念なんですけど……」
「四の五の言うなよ。商人」
「はいはい。行ってきますよ。香月待っててね。ついでに何かおいしそうな物買ってくるから」
そう言うと彼は、村の入り口にあるこじんまりとした門を潜り、民家が立ち並ぶ方へと走っていく。そんな傍らでは、セルリルが自身の肩に私の手を回し木陰へと連れて行くと、木の根本に座らせた。
「運動神経は人並み以上なのにな」
「それとこれとは別でしょ」
寄りかかりグッタリする私に水を差し出す。それを貰い口に含み大きく呼吸をした。国境までに要した日数、馬車で4日。流石に尻も痛くなるわ、微妙な加減に乗り心地が悪い状態で、揺られ続けたせいで今も頭がグラグラする。そんな移動中今回の経緯を聞いた。
今回問題視されてる事は、国同士の取り決めによる貿易流通に関する事で事案が起きているようなのだ。と言うのもカロリロア共和国のドル箱とされているのがシャンアーガストフラワーが、安価に出回っているという話を共和国側から情報が届き調査依頼がきたのである。
この花は主に薬として特に麻酔といった神経系の類の物に使われ、共和国でも国境の周辺にしか生産できない代物であり、非常に高価で取引されているのだ。
そんな中、それより安価に出回る代物が自国から出回っているとの事。共和国側はフラワーが値崩れを起こす事を危惧、また収益も大幅に落ち込む事を懸念しており、勿論そのままにしておけば国同士の摩擦につながりかねない。ましてや王国でその様な栽培行為があるとなれば、隣国として対処しなくてはならないわけで思った以上に国を絡んだセンシティブな案件である。
それを踏まえ確かな腕のある人間を要してそれを解決するようにと言うことでセルリルに白羽の矢が刺さったのだ。
またこの花は特異として月歴13日の日没から月が真上に上がる迄の、蕾の間に収穫しないと、効力は失われてしまい花が開く。開いてしまえば価値がないとの事。なので、こんな急転直下の話しになっている。
そんな状況化において、私より遥かに状況が把握出来ているであろうセルリルの様子が通常と違う事に違和感を感じていた。先の様にいつもと同様、傍若無人な態度を示したと思いきや、移動中腑とした時に彼を見た時、いつも以上に表情は硬直し、緊張し張りつめた空気を漂わせていたのだ。
(初日にタスラムが探している人達とかなんか言ってたけどその事?)
まあ私に聞いて欲しいならセルリルから話してくるであろうし、人には聞かれたくない事だってあるのは理解しているつもりだ。
(どっちみち私が関わりそうだし。そのうち話してくれるでしょ。にしてもいつもと感じが違ってかえって怖すぎるわ)
横に座る彼をチラリと見る。するといきなり名前を呼ばれ、思わず一回体が跳ねた。
「な、何?」
「香月。お前実は他に俺に隠している能力ないか?」
「あるわけないでしょ。何でいきなりそんな話になるわけ?」
「…… タスの真顔」
「真顔?」
「ああ。香月を連れ行くと言った時」
「あれ。タスラムの真顔だったわね」
「久々に見た。あいつの本気」
すると、セルリルは胡座をかきその上に肘をついてみせ指を組む。そしてそこに顎を置いた。
「まだ会って半日も経ってもいないっていうのに、タスの本気を出させたんだ。それに商店のカギ共が異様に懐くのも早かった経緯もある…… やはり何等かの能力以外思い当たらない」
「そんなの能力でもなんでないわよ。私は私のままだし、セルリルの言う能力っていうのがわからないけど。私から言わせればあんたの方が能力あるじゃない。嫌みを言わせたら天下一品だし、睨みを聞かせれば無く子も黙る。それに悔しいけどセルリルの魔法は凄いとしか言いようがない。それは断言出きる」
そう言い切った私の横顔を彼がじっと見つめる。それは今までの彼から見たことのない目を丸くし驚く顔がこちらを凝視し続けているのだ。その視線がやたら強く感じる。
「あのーー 私の顔に何かついてる?」
「…… 別に」
するとセルリルは視線を元に戻す。その直後、前から何かを抱えながら歩いてくるタスラムが、手を振って歩み寄ってくる姿が視界に入った。
「貴方のそのネックレス綺麗ですね。どこで買ったのかな」
「これですか? これはねーー」
若き女性陣の中心には軽快なトークとジェスチャーで彼女等を魅了しているタスラムの姿がった。村の通りで異様な光景に振り返る男性陣等を横目に、話しは盛り上がっているようだ。そんな情景を見慣れた私とセルリルは裏路地に入る道の建物の影で輪を見つめつつ、不審者がいないか見回る。そんな中、ハーレムは解散され、タスラムがホクホク顔でこちらにやってきた。
「大収穫だよーー 多分首謀者はシャレン商会だ。ちなみに彼女達が着けていた宝飾品全部魔具だ」
「魔具だと? あんな大量のがか? 確かシャレン商会は北方にある大都市を拠点とした大手だな」
「ここって?」
「最南だよ香月。だからかなりの距離だね。しかも2、3年前から移動販売と表して宝飾品を売ってるらしいんだよ」
「シャレンは本職は薬卸だと記憶してるが」
「そう、それなのに、宝飾品を数年前からこの時期に出張販売とか言って来てるらしいんだ」
すると、タスラムが身を屈め指を差す。そこにはでっぷらとした体格で身長も今の私を少し大きくしたような七三分けをした男が、汗を拭いながら村の広場で簡易的な店舗内に居る事が確認出来た。
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