噓でしょ?
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「へえーー 一ヶ月前ぐらいからセルとね」
好奇な色を帯びた視線を私に向けながら、椅子にタスラムと向かい合うように座り用意されてたお茶を飲む。結局先程のタスラムの仲介により気勢をそがれた形となったのだ。
「セルって人と関わり持つの嫌だろ。そんな人間が同じ屋根の下で一ヶ月もなんて凄い事だよ。私とセルは同じ学校でクラスも一緒だったけど、人寄せ付けない所は昔っからあって、学校でも一人の事多かったからね。それにしても卒業して6年経って24歳になるけど、セルとこんなに長い付き合いになるとは思わなかったよ。っていうかこのパイおいしいね。香月が作ったの?」
パイの断面を見ながら味わいつつ、堪能するタスラムのお茶を足しつつ、私自身も籠に手を伸ばし、椅子に座り一口頬張る。
「これ、貰い物。確かカシューベリーとか言ってたかな」
「さっき通って来たリレイム村含めこの辺りの特産物だね。この近辺で採れるカシューベリーは有名で他国にも輸出してるんだよ。まあここは3つの国と面しているから、他国からの貿易品も多く流通しているんだけどね」
「ふんーー そうなんだ。私イマイチ地理的な事がわからないっていうか……」
「そうなのかい。なら僭越ながら私がザッくり説明するね。このリンセント王国はカスマニル大陸にある5つの国の最東にある国なんだ。その周りは海なんだけど、その先にもモルガル大陸やミュリカと言われている未開拓の大陸もある」
そう言うと胸元から紙と、鉛筆の様な物を取り出し図を描き始める事刹那。それをタスラムが指を差す。
「まあ簡易的な感じだけど、大陸自体はだいたい四角い形なんだよ。私の方から見て南、カロリロア共和国。中央、スカライド帝国、北、ワーザイト民主国。でリンセントに面してない国としてエリフェル公国があるだ。国によって気候が違うトコあるから、特産品とかは面白い物がはいってきたりするだよ。まあ、公国以外はわりと色んな物が入ってきてるだ」
「タスラム商人だからそういう事詳しいのね」
「商人って。ペテン師の間違いだろ」
「何いってるんだ。顧客からはお墨付きを貰ってるんだよ。仕事はちゃんとしないとね。それが追々こちらの有益に繋がってくるんだから」
「ふーん。で今回は何の用だ」
「サーベルキャットを」
「却下だ。誰にも譲らん」
「と言うのは嘘で。今日は商い事で来たんじゃないんだよね」
「…… 悪いが他の奴に回せ。タスのそれ絡みはやっかいな事が多すぎる」
「それは無理。もう兄からの親書きちゃったし」
そう言うと、宝飾のしてある筒のような物を胸元から取り出す。そして机に置くと彼の左手に魔法陣が形成される事刹那、自身の右手母指がぱっくりと切れ血が流れたのだ。
「ちょ、ちょっと」
いきなりの行動に思わず声を上げる私を宥めると、その赤い液を筒中央の朱色の宝石に数滴垂らす。すると、巻物が開くように机の上に手紙が勝手に広がり、文字が浮きでたのだ。そしてそこにはこう記されている。
『シャンアーガストフラワーの自国栽培形跡あり。カロリロア共和国と国境近くフムレ村至急迎い調査せよ。 リンセント王国、国王セイレーン・ファスリナ・フォード』
目の前の現象に驚きを隠ないと共に内容の意味がイマイチ掴めずセルリルの方に視界を向ける。すると斜め前に座る彼は天井を仰ぎながら息を吐く。
「これはもう断れないよねーー 王直々に依頼来ちゃってるし、血判封で来てる事だから超極秘事項だから」
「…… 見なかった事にしろ!! こちらも他言無用にしてやるから他者に回せ」
「へえーー そんな事言える立場じゃないだろ? 王直々の案件なのに。でもどうしても無理っていうなら他あたるしかないけど。いやーー 残念だな。今回の案件フムレ村は平行して集団失踪事件も起きてるって言うのに。本当残念」
「集団失踪?」
含みのある笑みを見せるタスラムが話しを続ける。
「気になるでしょーー。 何がしらの精神系魔法かと思うけど。君が探している人達の属性魔法だよね」
先まで明らかに興味を示さなかったセルリルの表情が一瞬にして真剣な面持ちへと変わる。そんな様子を目にしタスラムはニヤリと笑い、話しを続けた。
「いきなりいなくなって数週間後には帰ってきてるらしいだけど、その間の記憶がない。しかも時期が決まって、花の収穫時期前後らしいんだよ。ここ数年で10人はいるらしくて、毎年失踪する村民もいるみたいなんだ」
「タス。今の月暦は」
「今日で7日かな」
するとセルリルは深い溜息を吐いた。
「日にちないだろうが。香月、直ぐに出かける準備しろ」
「ちょ、ちょっともう少し説明してよ。色々と聞きたい事あるんだけど!!」
「移動中に話す」
「おいおいセル。彼女を連れていくのか? 情報が少ない上、全容のわからない魔法が施行されていて危険な事が多いのに」
「だからだ」
「はい? セルがいくら冷感人間とは知っていても、国民、ましてや女性を危険な目に合わせるのは王の親族的には良しとしないよ」
今までヘラヘラと笑っていた顔が急に真顔になると、セルリルを睨む。そんな彼を一瞥しながら席を立つ。
「流石国民思いの王の親族らしい発言だな。だが安心しろ。香月は何故だか魔法系統全般使えない、効かない体質だ。ちゃんと立証してある。それに今回俺絡みで協力を依頼し本人も了承済みだ。それにもしもの時は俺が状況判断で対処する」
その言葉に、タスラムが驚きの表情を浮かべ私を見た。
「…… おいおいそんな事有りえないだろう」
「俺が嘘を言って一体何の得があるんだタス?」
「まあそうだけど。いや…… 今までに魔法使えない、効かないっていう人に出会った事ないからさ。あまりにも特質した能力だなと……」
感嘆の声を上げる彼に対し私もまた伺いを立てるような顔つきでタスラムに視線を送る。
「一つ聞いて良い?」
「何だい?」
「さっき王様とか親族とか言ってたけどあれって?」
「ああ。私には上に二人兄がいて長男が父の退位で国王になって、次男が宰相してる。私はその三男だから王弟かな。因みにこの瞳の色は代々王の血族が継承される色なんだよ。だから歩くとちょっと目立っちゃうんだ」
あまりにも軽い雰囲気で言われたものの、いきなりの展開に絶句するしかなかった。
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