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こっちの身にもなれ!!

遊びに来て頂きありがとうございます

「サ、サーベルキャットだ!!」


 晴天の霹靂とはこういう事を言うのかもしれない。が、いきなりの出来事でただただ唖然と立ち尽くす。そんな中、輩は止まっていた魔法陣を展開させると、獣の方に向け放ったのだ。

 しかし、彼の攻撃は獣の一声で砕かれ、全く歯が立たない。その隙に逃げる魂胆だったのか、慌てて湖畔から逃げ出し、森の中へとかけていく。

 すると今度は獣が一回天に向け遠吠えを上げる。次の瞬間、光る粒子が瞬く間に一本の柱に集約された。するとキャットは正面を向くと同時に、先とは比べものにならない声をあげたのだ。

 それと同時に、前方から後ずさりする程の冷風が直撃した。咄嗟に片手で顔を隠すも、瞬時に辺りが凍えるような空気に包まれ、おずおずとその手をどかす。すると、池には一直線の氷の道が出来、逃げようとしていた男は完全に氷柱の中で氷ついていた。

 その状態に慌てて、子供達の方に目を向ける。冷気漂い視界がぼやける。その時だった。


「香月お姉ちゃん大丈夫!!」

「大丈夫!! それこそアレル、キアラ怪我ない!!」


 声を頼りに剣を仕舞いつつ向かうと、視界に土壁のようなのが見えた。するとその壁の背後から子供達が顔を出す。


「香月お姉ちゃん!!」


 声を上げながら足にしがみつく二人の頭を撫でる。


「これは……」

「助けてくれたの。魔法使いが」


 目を輝かせながらキアラが顔を上げた。頭を傾げる私の目の前に今度は長い絹のような髪を掻き上げながら、いつもの不機嫌な顔つきでセルリルが現れたのだ。


「随分派手にやってるな」

「私じゃないわよ!! それになんであんた来てるのよ。あんなに否定的だった癖に」

「俺の用件が終わるまで、お前に死なれては困るからな」

「はあ? 言いたい事は大いにあるけど…… 今はとりあえず目先優先しないとまずいか。因みにだけどあの獣……」

「ああ。サーベルキャットだ」

「成程ね。確かに強そう。で、どうするの? いろんな意味で」

「…… とりあえず、そのガキ共どうにかしろ」


 確かにこのままでは二人を巻き込んでしまう。ふと、その時男が氷柱標本になっている事を思いだし、セルリルに声を掛ける。


「ちょっと、あの獣の目引いておいて。後作戦も考えて!!」


 そう言い二人を連れ、店主の方へと走って行く。すると、彼は陣が解け倒れている。急いで掛けより肩を起こした。


「店長大丈夫ですか?」


 すると、反応は薄いがそれに答える。とりあえず安堵するのも束の間、池の方で急に明るくなったと思い見ると火の玉が飛ぶと共に、熱風が頬を掠める。どうやら、セルリルがキャットと対峙しているようだ。


「とりあえず、森の中で隠れて。二人はお父さん守る。良いね。今度は絶対出ちゃ駄目!!」


 そう言いながら、店主の片腕を私の肩に回し、森まで運び再度二人に言い聞かせると、戦線に飛び込む。すると、向こう岸に居た筈のキャットがこちらまで既に足を踏み入れ、私に長い犬歯を突き立てようとしたのだ。慌てて二本の剣を抜きそれをガードするも、明らかに獣の力が勝り、軽く吹っ飛び、受け身を取る。すると、その数メートル横にセルリルの姿が確認できた。


「ちょっと、何してるのよ!! あんた凄腕なんじゃないの?」

「お前の耳は節穴か? 厄介な相手だと話ただろう。尚且つ個体数が少ない上に生体も謎だともな」

「だからしょうがないって言いたいの? あんたのわりには弱腰発言ね」

「戯け。勝機はある」

「ふーん、じゃあどうするのよ」

「キャットを池の真ん中辺りまで誘い込み、お前だけ岸に戻ってこい。出来るよな」

「何? また私囮なわけ?」

「そこで、ゴネてる場合じゃないぞ。早く決断しないとまた氷魔法がくる。まあそれで商店の奴らが巻き込まれても俺は一向に構わないがな」

「あああってもう。わかったわよ。やればいいんでしょ!!」


  自棄糞的感情がそのまま言葉となって露わとなると共に、剣を足下に置く。そして近くに落ちていた石を手にし、キャットの前に走って行くと、顔にめがけて投げつけた。


「こっちよ猫ちゃん!!」

 

 そう叫びながら、氷の道を走り出す。キャットもその挑発に乗り、私の後を追う。滑る足元は全力疾走するには難しく、早くも獣に追いつきそうになるが、懸命に足を進める。

 そして池の中心を越えた所で身を翻すと、今出せる最速の走りで獣に向かい入って行く。それに反応した獣は片足を上げ踏みつけようとするも、空いた足下を滑り潜り抜ける。それにより獣の背後に回る事に成功し、一気にセルリルのいる岸まで全力で駆け込む。そして私の片足が縁に乗ったその直後だった。

 先とは比べものにならない冷気が一気に体を包むと同時に余寒を帯た疾風が通り抜ける。すると私の足先にある湖面が一気に凍り付く。と、同時に、一瞬にしてこちらに向かおうとしていた獣を覆い尽くす。その直後、空を貫くような氷柱のモニュメントと共に、ダイヤモンドダストが舞った。


「我ながら完璧な氷魔法だな」


 確かに圧巻と言ってもいい風景である。が、湖面から数ミリ足が離れているだけの状態での陣の発動に、思わず目の前で満足げな笑みを浮かべるセルリルを睨む。


「ちょっと!! 私がもう少し岸に行ってからでも発動よくない?」

「お前、魔法効かないんだから気にすることじゃないだろ?」

「それにしても気分悪いわ!!」


 私が一喝する声が響く中、細氷は尚も月明かりを浴び輝きながら降り注いだ。

読んで頂き有難うございます

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