目覚め、再会
そこはかとなく4話です。
「なあ、この世界はどこまで広いと思う?」
やる気を溶かすような暑さの中、繧「繝シ繧キ繝」が言う。
なんだよ突然に。
「俺な、15になったら王都に行って、考古学者になろうと思ってるんだ」
恥ずかしそうに、だけど輝きに満ちた瞳で彼は言う。
お前が考古学者?似合わないな。
俺はからかいながら、繧「繝シ繧キ繝」を見る。
「だからさ、古代の遺跡とか調査するだろ?そしたら、呪いとかついちゃうかもしれないだろ?」
もじもじしながら、繧「繝シ繧キ繝」は俺を相変わらず、俺を見ている。
やがて決心がついたといわんばかりに、繧「繝シ繧キ繝」は立ち上がる。
「オレが、もし、人間じゃなくなったら、お前が殺してくれ」
そう言って、繧「繝シ繧キ繝」は走り去っていく。
おい。どういう意味だよそれ。
俺のこえは届かない。
「おい。おーい」
代わりに声が脳内に響く。
「おーい。寝すぎですよ!!!!!」
俺はその声に驚き、勢い良く目を開く。
「あ!!!起きた!!!」
そこには女の子がキス間際ぐらいまでこちらに近づき、覗き込んでいた。
「あなたはね、魔獣に襲われたらしいですよ!!!」
いきなり、そんなことを言われた。
「そうですか......」
それしかいう言葉が見つからず、俺は冷たい反応をしてしまう。
「あ、その前に。ここがどこか分かります?」
そのままの距離を保ちながら、女の子は話しかけてくる。
「わかりません」
「ここはビョウインですよー」
言いなれない単語をいうかのように、女の子は施設名を言う。
病院?ということは、あの人の.......。
「おや、出会ってすぐなのにもう、そこまで行ったのかい?」
はるか昔に聞いたことある声が横から聞こえ、俺はそのまま眼だけを動かす。
「あ、先生!!!」
そこには、風変わりな格好──白衣っていったけ?あれ。に身を包んだ女、大魔導士イマオカ マスミが立っていた。
「師匠と呼びなさい......と。久しぶりだね。ハル」
ついで感覚で俺にイマオカさんが俺に挨拶する。
「お久しぶりです。父の葬式以来ですね」
「それじゃ、私は定時なので!!!」
何か空気を察知したのか、どたどたと音を立てて女の子は去っていく。
「彼女はファミリア。私の弟子さ。かわいいだろ」
それを見送った、イマオカさんは自慢げに俺に言う。
確かに活発な小動物みたいでかわいいが、人との距離がわかってない。というかあれは、おバカの部類だと思う。
「愛嬌があるって言ってくれ」
「......やめてくださいよ。心を読むのは」
「悪い、悪い」とイマオカさんは、笑いながら言う。
イマオカ マスミ。彼女のギフトは読心。文字通り、心を読む能力だ。
その能力を生かして、セラピストをやっていたりもする。
「あれでも、君と同じ20だよ」
「え?」
おれはゆっくりと起き上がりながら、イマオカさんと話す。
「さて、君の様態だが」
イマオカさんは空気を変えるように一つ、咳をすると間髪開けずに話を始める。
「なんの異常もない。君、本当に魔獣に襲われたのかい?」
イマオカさんは診断書とにらめっこしながら、俺に問いかける。
アランのことが頭をよぎる。
「......はい」
俺は事実を述べる。
「あ、そう」
イマオカさんはちらりと俺を見ると、そのまま確認作業に移っていく。
「次、腹出して」
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「ホントに異常ないわー。スゴ」
イマオカさんはぶつぶつとつぶやきながら、診断書のチェックシートにペケを付けていく。
俺はその暇な時間をさっき見た、あの夢のことについて考えることにした。
「オレが、もし、人間じゃなくなったら、お前が殺してくれ」
その声が頭の中で乱反射し続ける。まるで、約束を確認するように。
「おーい」
イマオカさんのその声で現実に戻ってくる。
「君、考え込みすぎ」
つまらなそうに俺を見ているイマオカさんは、一つ、大きなため息を吐く。
「そういうところ、マキと似てるよね」
母さんの名前を出して、イマオカさんは懐かしそうな顔をする。
「大事なことは言わないで、ずっと抱えてさ。あ、手、出して」
文句を言いいながらイマオカさんは、石を取り出す。
俺は、言われた通りに手を差し出す。
「困ってたら相談はしろよ」
そういいながら、イマオカさんは俺の手に冷たい石を乗せる。
俺はあまりの冷たさに驚きながら、手元の石を見る。
石はきれいな緑色をしていた。
「何ですか?これ」
俺は魅入りながら、イマオカさんに問う。
「ん?魔獣病の検査石」
「え?ああ......」
俺のその反応が期待道理だったのか、大いに笑顔になりながらイマオカさんは俺を見る。
しまった。こういう人だった。
「緑になれば正常だよ」
俺の失望を関係なしといったように、イマオカさんは診療に戻った。
俺は次に備えて、警戒心を高めることにした。
「あ、今ので終わりだから帰っていいよ」
それも、あっさり見透かされたいたみたいだが。
*******
使い終わったペンをインクの中に浸けると、ふう。と私は大きなあくびを一つした。
一つ、仕事が終わるたびに疲れるが、やはり彼の時は気楽だな。
そう思いながら、さっきまで緑色に光っていた石を見る。
やはり、どんなに才能がなくても彼は勇者と大賢者の息子。運命は彼をほっときはしない。
「さてと」
私は立ち上がり、特注品の棚から一つの物を取り出す。布でグルグル巻きにされ、よくわかんない札が貼ってあるそれを。
長くしまっておいたせいか、それはかなりの誇りをかぶっていたが、それでも気品は失っていない。そう感じた。
ゆっくりと邪魔なものを取り除いていく。
そうして、露わになったその剣は禍々しさを帯びていた。
「......本当に悪趣味だ」
私は悪態をつきながら石をそれに嵌める。
うまく嵌ったようで、魔剣はそれを美味しそうに飲み込むと勝手に浮き上がる。
「久しぶりね。魔剣デストルドー」
私は隠し持っていた簡易魔術防壁を起動する。青色の光が私を包む。
だが、デストルドーはお前じゃないと言うように一度光ると、窓を突き破り外へ出ていってしまう。
その衝撃で簡易魔術防壁も割れてしまう。
「ほんと……これだから安物は」
片手で魔法を使い、窓ガラスを元の形に戻す。
逆再生をしたかのように、窓は寸分違わぬ姿になる。
「ふぅ~」
私はらしくもない声をあげながら、ドサッと椅子へ座る。
これで歯車は1つ回りだした。後は、彼次第だ。
私は達成感に包まれながら、彼のカルテを見る。
「………始まったかな?」
彼方から聞こえる戦闘音を聴きながら、私は自分の首から垂れる十字架を指で撥ね飛ばす。
願わくば彼に幸運を。
モチベーション向上につながるので是非、評価をお願いします。