男、追放2
多分3話です。
「なにをするんだよ!!!」
「何って、さっきから言ってる通りお前を殺すんだよ」
黙るアランの代わりに、ルウズが答える。
「お前はここで死んで、それを補う形でボクが入る」
アランがゆっくりと剣を取り出す。
「書類上ではお前は追放されたことになるからさ、安心してよ」
「何が安心だ!!!!第一、あの二人が了承したのかよ!!!」
俺は声を荒げながら、ルウズを睨む。
少しの沈黙の後、アランが重くしゃべった。
「グリーゴもラプターも了承した」
「なに!?」
あの二人の性格はさておき、アランもだが、こんな提案乗るはずがない。
だが、実際にアランは無言で剣を構えている。
「簡単だよ。ボクが友人としてアドバイスしただけだよ」
俺の周りをちょろちょろと歩き回りながら、ルウズは言った。
「使えないゴミなんて消して、俺に乗り換えろよって」
ポンと表情を殺しているアランの肩にルウズは手を乗せる。
「そしたら、お前の両親の借金をゼロにしてやるよってな」
「本当なのか?」
俺が問いかけるが、質問を振り切るかのように剣をこちらに向かって振る。
「よけなきゃ」そう思ったが、体に力が入らない。
まるで全身が鼓動をしているように震え出し、立っていられなくなる。
俺は体の異変に従うように力なく倒れこむ。
「やっと効いたか」
ルウズは下品な笑みを浮かべながら、俺の顔を覗き込む。
「なにを......した!!」
痙攣する喉を抑え、声を張るように叫ぶ。
「薬を盛ったんだよ」
「なんだと......!?」
アランの顔が少し曇る。
「これだよ。最近流行りの魔獣病。あれの特効薬さ」
毒々しい色の水が入った瓶を軽く振りながら、ルウズはいった。
「これは口止めされている情報だが、この薬は失敗作だ」
そう言い終わるかというタイミングで、ルウズはアランに瓶をぶつける。
「こうなってしまうからなぁ!!!!!」
静かに割れる音がなり、アランは水浸しになる。それと同時に、アランが激しく咳き込み始める。
アランは俺と同じように倒れる。
「まんまと騙されやがって、お前の家族の借金も消さねぇし、お前ら弱小パーティーなんかに入るワケねぇだろ!!!」
痺れる体で必死に咳を止めようとする、アランの体を蹴りながらルウズは言った。
「女だけはァ!!上物だから、俺がもらってやるよ!!!」
ルウズは蹴りを止めたと思うと、懐からもう一個、特効薬を取り出すとアランに投げつける。
「ぐぁぁぁぁぁぁ!!!!」
アランの低い声が裏道に響く。
それと同時に、アランの体から何かのひびが割れた音がした。
アランの体が沸騰しているかのように凹凸ができる。
──この音は......。
脳裏に昔の記憶がよぎる。俺が封印してきた記憶。
燃える村。狂う人々。そして、仮面の男。
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!」
思わず叫ぶ。
だが、その声も地ならしのような叫び声にかき消される。
そこにはアランの姿はなく、巨大な二足歩行の狼型の魔獣がいるだけだった。
「ははは。やっぱりボクの作戦は完璧だ」
自分の作戦に感動しているのか、笑顔でルウズは俺に言葉を投げかける。
「ふざけるな」
手に思いっきり力を込め、立ち上がろうとするが、当然の如く力は入らない。
俺の行動に驚いたのか、ルウズは少し目を見開く。
「しかし、あのヤブめ。何が万人を一瞬で魔獣にするモノだ。こいつには効いてないじゃないか」
金髪の男が咳き込みながら、俺の顔を一蹴りする。
「まあ、いい。魔獣にならなくても、こいつに殺されるだろうな!」
体が麻痺しているようにではなく、目にえぐられるような痛みがくる。
「じゃあな。名ばかり勇者」
俺は去りゆく意識の中、俺の心は不思議と落ち着いていた。
でもそれは諦めからくる思考停止なんかじゃなかった。
ただ、記憶の片隅にある誰かに謝っていた。
ごめんな。約束果たせなくてと。
そのまま、俺の意識は完全に消えた。
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