表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/4

プロローグ

新作です。よろしくお願いします。

 俺、ハルの人生はいつでも、裏切りと手放しばかりだった。

 ギルドハウスの椅子に腰掛け、出された飲み物を見ながら、俺はそう思った。


 一番最初の裏切りは期待だった。

 ......しかも悪いほうで。


 なぜ俺みたいのが期待されていたか。

 理由は簡単で、今は亡き父親が世界を救った勇者と呼ばれる存在で、俺がその息子だったから。

 能力を認められたからでもなく、聖剣やら何やらに選ばれたわけでもない。


 ただ、彼の息子というだけで期待され続けた。

 別に褒められるのは嫌いじゃなかったし、悪い気もしなかったから、必死に周りに答えようと努力した。


 それでも現実は非情で、俺が虫も殺せぬと分かると大人たちの顔は変わり、また次の興味へ移っていった。


 これが俺が初めて裏切ったものであり、手放したものだった。


 それでもオヤジは、俺を見捨てず修行をつけていてくれた。

 それは俺の無能さを自覚したくなかったからなのか今となっては分からないが。


 そうして生きていた数え年で10のとき、一つ事件が起きた。

 それは、"魔獣災害"と呼ばれる事件だった。


 とある辺境にある村を一人の魔獣が襲い、全てを壊滅させた。

 あるべき家庭も、友もそれが全て奪われていった。

 俺はこの事件の唯一の生存者として生き抜いた。


 このことが更に俺を淵に追いやった。


 このせいで、俺には物凄い特殊能力──ギフトがあるのではないかとか、魔術、武術共に才があるのではないかとか。

 気まぐれな大人たちはそうやって、オークションにかけられる俺に期待と金を積んだ。


 そうして、15のときギフトを検査をした時、また裏切った。


 なんと、俺にはギフトがなかったのだ。

 そうして家を追い出され、自立した俺は冒険者としてデビューを果たした。


 一応、親切な義姉が持たせてくれた金貨で、生活に困らなかった。


 しかし、冒険者にはパーティー制度というものがある。

 四人組のパーティーしかギルド協会の支援を受けれないのだ。

 支援を受けれないということは、仕事の斡旋がない。

 だから普通は仲良し四人組で冒険者を始めるのだが、俺はそんなツテもなく、毎日募集の掲示板を見るだけだった。


 そうして、一人でバイトでこそこそと生計を立てていると、俺は一人の男と出会った。


 そいつはアランと名乗り、俺をパーティーに入れてくれると言う。


 俺は初めての仲間に舞い上がり、二つ返事で了承。

 そして、俺はパーティー"アラカルト"のメンバーとしてクエストを攻略することになった。


 メンバーは剣士の俺とアラン、小柄でよく食べる女僧侶ラプター、魔術師で無口のグリーゴ。

 力はアラン以外ダメダメで、失敗ばかりしていた。それでも俺たちは笑っていた。

 このアンバランスさが俺には心地よかったから。


 ......それも今日で終わりだが。


 俺はテーブルの向かいに座るアランと金髪の男を見る。


「......もう一回、言ってくれ。アラン」

 重たい空気が流れる。それを切り裂くように、アランが口を開ける。


「ハル。お前を」

 かちりと大きく時計の歯車が動いた。

「お前を追放する」


モチベーション向上のため、面白いと思った方は是非下から評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ