コント「もし入ったら付き合ってください」
場所 とある高校の体育館
ボケ ひろき
ツッコミ ゆうこ
ゆうこ「えっと、違うクラスのひろき君だよね? どうしたの、こんなところに呼び出して? それにバスケットボール入ったかご用意して」
ひろき「今日はテスト期間で体育館は空いてるから丁度良いと思ってね。実は僕の気持ちをあなたに伝えたくて。……ゆうこさん、僕はあなたのことが好きです」
ゆうこ「えっ、そうだったの!」
ひろき「ああ。だから今からここからフリスローを打ちます。もし入ったら僕と付き合ってください」
ゆうこ「えっ、どうしよう……そんな急に言われても……」
ひろき「必ず決めて見せますから!」
ゆうこ「なんて真剣な瞳。この人本当に私のこと想ってくれてる。うん、わかっーー」
ひろき「うあいやーぱにっしゅ!(叫びながらシュート)」
ゆうこ「ーーたわ。って、はやっ! あとなんか変な声出した!」
ヒュー、ドン、ドン←ボールがゴール遥か前を通過し、床に落ちて弾む音
「…………」←数秒間お互いに見つめ合ってから、
ひろき「クソー! 失敗したー!」←膝を折って拳を床に打ち付ける
ゆうこ「いやいやいやいや、凄い悔しがってくれてるけど全然惜しくなかったからね! 全然カッコつかないから! 失敗するにしてもさ、せめてゴールリングにはぶつけようよ。リングでガンガン鳴らして、あー、入らなかったか、惜しかったって感じなら分かるよ? なに今の、全然掠りもしてないじゃん」
ひろき「二日間毎日十分練習してきたのにダメだった……クッ!」
ゆうこ「いや、クッじゃないから! それ全然練習してないじゃん! 二日間毎日って、たった二日間でよく毎日を付けれたね。日本語的におかしいよ。あと、十分って本当に成功させる気あった? ねえ、あなた本当に私のこと好きなの?」
ひろき「当たり前じゃないか!」
ゆうこ「あんなシュート打っといてそんなに言い切るところは逆にカッコいいね!」
ひろき「ごめんよー、さっきのは何かの間違いなんだよー。もう一本、もう一本だけお願いしますよー! もう一本あれば絶対入れれるからさー」←手を合わせてすりすりしながら
ゆうこ「と思ったら、必死にお願いしてきてる辺りは結構ダサい! ……でも分かった。必死なのは伝わった。だからもう一本打つの見てーー」
ひろき「せあはーいびよんぬ!」
ゆうこ「ーーるわ。って、だからはやっ! 私が言い終わる前に打つのなんなの! あとやっぱ発声が変!」
ヒュー、ドン、ドン
ゆうこ「で、また惜しさ皆無で入ってないし!」
ひろき「やはりバスケ経験のない俺には無理だったのか……クッ」
ゆうこ「いや、だからクッじゃないから! さっきからとりあえずクッって言って悔しがっとけば良いみたいに思ってない? えっ、というかひろき君あなたバスケ部じゃなかったの! それでよく自信ありげにフリースロー決めたらなんて言えたね!」
ひろき「えへへ」
ゆうこ「どこに照れる要素あったのかは分からないけど、じゃあ一体ひろき君は何部なの?」
ひろき「サッカー部」
ゆうこ「サッカー部⁉︎ いやもうそれサッカーでゴール決めれたらで良かったんじゃない⁉︎ 」
ひろき「いやほら、バスケの方がカッコよく決められる気がしたからさ」
ゆうこ「シュートの時最初から最後まで一つもカッコ良い部分なかったけどね! あと二本打ったのに決めれてないし!」
ひろき「うしっ! 次は決めます! だからもう一本お願いします!」
ゆうこ「よくあそこまで華麗に外してまた頼めるよね⁉︎ えっ、なにもしかしてこれ入るまでやるっていうオチ⁉︎」
ゆうこは一回深く息を吸う。
ゆうこ「あのさ、一つ聞きたいんだけどゆうき君はなんでそんなに私の為に必死になってくれるの? 私たちそんなに話したことないよね?」
ひろき「そうだね。でも入学当初人見知りで友達の出来なかった俺にたまたま玄関で一緒になった君は話しかけてくれた。ただそれだけだし、何気ない会話だったけど嬉しかった」
ゆうこはただひろきを見つめる。
ひろき「君に勇気をもらって今は楽しい学校生活を過ごせてる。だから俺は君が好きだ。だからカッコつけたい。だから俺は決めるまでやり続ける」
ゆうこ「そっか……。でももう良いよひろき君」
ひろき「えっ、それってどういう……」
ゆうこ「結果は伴わなくても充分想いは伝わった。だからもう良いの。ーーひろき君、付き合おう」
ひろき「えっ……やった……。やった!」
両手を上げて喜ぶひろきとそれを観て笑うゆうこ。
ひろき「あっ、でもやっぱり一本ぐらいは決めたいから最後にもう一本打っていくよ」
ゆうこ「そっか。じゃあ最後しっかり決めてね」
ひろき「任せとけ!」
ぐっとゆうこに向けて親指を立てた後前に歩いていくひろき
ゆうこ「うわっ、嘘でしょ、メッチャ近付いたじゃん!」
ひろき「いえさーいすぽっと!」
ヒュー、ドン、ドン
ゆうこ「いや、そこ決めてよ! 近付いたのにまた全然外すじゃん!」
二人顔を見合わせて笑い合って暗転。