第1話
あるところに、人間を襲う悪いドラゴンがいました。
そのドラゴンは漆黒の鱗に身を包まれていて、大きな翼が生えています。
ある日、勇者が現れました。
その勇者は恐れることなくドラゴンに立ち向かいます。
勇者はドラゴンに癒えぬ傷を付けられてしまいました。
勇者は傷を癒すために、聖なる大地へと向かいました。
まだ勇者は帰ってきません。
今も私たちは、勇者の帰りを待っているのです。
「ねぇお母さん、なんで勇者は帰ってこないの?」
「んー、勇者は悪いドラゴンを倒すために必殺技を覚えてるんだよ」
「必殺技ってなに?」
「皆が幸せになることだよ」
この時、母が言った言葉をアリスは理解できなかった。まだ6歳の少女には難しすぎる例えなのかもしれない。
「よくわかんない! アリスお散歩してくる」
「暗くなる前に帰って来るのよ。それと遠くに行きすぎちゃだめよ」
アリスは元気に返事をして散歩に向かった。
「今日はお花畑にいこー」
アリスが住んでいる村は自然に囲まれた小さな村だ。村の外にお花畑と湖がある。
「おや、アリスちゃんじゃないか。またお花畑に行くのかい?」
「うん、ロイ兄ちゃんは今日も遊んでくれる人いないの」
「えっとねアリスちゃん、ロイお兄さんは村の門番なの。この村を守ってるんだからね」
「あっそ。じゃあね」
アリスは最初からロイには興味がないのだ。ただそこにいたから話しかけただけ。
それからすぐにお花畑に着いた。ここには沢山の種類の花が咲いている。
「いいにおーい。ドラゴンもここに来れば人なんて襲わなくなるのに」
アリスはここに来ると、毎回花と会話している。
はっきり声が聞こえることもあれば、何かが聞こえるだけの時もある。
「ねぇお花さん、今日のアリス可愛いー?」
「……逃……て」
「え? なーに?」
「逃げて!」
アリスは耳を塞いだ。いきなり大きな声が聞こえて驚いたのだ。
「逃げるってなんで」
「はやく! ここから離れて!」
沢山の花が同じことを言っている。この村に危険が迫っているのかもしれない。
「あれ……なに」
アリスは空を見た。そこには黒い大きな物体が飛んでいた。
「ドラゴン」
漆黒の鱗に身を包まれていて、大きな翼を生やしたドラゴンが村に向かって飛んできたのだ。
アリスの真上を通り過ぎた時に、風で花は全て散ってしまった。
「お母さん……。はやく戻らなくちゃ!」
アリスは村に向かって走り出した。しかしもう遅い……。
アリスが村に着いたとき、すでに建物は崩壊し、炎が木々に移っていた。
「お母さん、お父さん、助けて……」
アリスが目を覚ました時、そこは知らない場所だった。
新連載です。初めて恋愛ものを書くので、皆さんの意見やアドバイスを積極的に取り入れていきます。
これからよろしくお願いします。