一つの恋の⋯⋯有道
エドモンド殿下の教会での100日祈祷も終わりが見えて来た。
いよいよ来週にはリリアナの元に駆け付けられると思いを馳せながら習慣化した祈祷後の昼食を摂っていた。
側近と午後のスケジュールを打ち合わせしていた時、見知った修道士がこちらに慌ててやって来るのが見えた。
「此方でしたか。先触れが参りましたのでお持ちしました」
「あぁ、わざわざありがとう。急ぎなのか?」
「はい、できれば至急お会いしたいとの事ですが」
「公爵が此方にか、承知した」
「公爵家とはどちらの?」
「ウェールズ公爵がおいでになるそうだ」
「ハワード様では無くですか」
「至急という事は何かあったのだろうか」
急いで食事を済ませて今日の予定分を少しでも片付けようと部屋へと戻った。
其れから暫くしてウェールズ公爵がやってきた。
「教会まで押しかけることになっ⋯⋯」
「いや、挨拶はいいです。公爵が来られたという事はハワードの病に何かあったのですか?」
「ハワード絡みですが病の件ではありません」
「良かった。体調はその後?」
「相変わらずと言ったところです」
「此処を出たらお見舞いに領地の方へ伺いますので」
「殿下はお忙しい方、会えるかも分かりませんから。大丈夫の様ならご連絡致しましょう」
「そうですね、頼みます。それで?」
「実は⋯⋯此方をまずはご覧ください」
「手紙ですか、アリーシャ・ドクトール?」
「今日ハワード宛に届いたものです。お読みください」
エドモンドは手紙を読んで黙り込んだ。
「ハワードが病で引き篭って居ますので私が開封して読んだのですが」
「この文面からすると初めての手紙ではない様だ。それに修道院を出ることが決まっているかの様な文言。公爵家ではそう言った話になっているのですか?」
「殿下、その様な事は私も初耳だったのです。ハワードとその女性の絵空事です」
「まず第一に彼女はもう平民です。私的な手紙にしても身分詐称していますね」
エドモンドは呆れて言った。
「仰る通りです」
公爵は居た堪れないように身を縮めた。
「それとハワードにも言える事ですがアリーシャ嬢の平民降格の罪を理解していないようですね」
「はい、安易に愛妾として囲おうとしていたようですので理解していなかったかと。申し訳ないです」
「無期限なので下手をすると彼女は終身刑となるかもしれません」
「息子には良く言い聞かせます」
「それにまだ新婚ではないですか、メリッサ夫人がお気の毒です」
「実は、結婚前にもアリーシャ嬢から手紙がまいりまして」
「手紙?」
「はい、殿下との婚約破棄の頃に助けを求められ領地から出奔したのです」
「それで?」
「その時はメリッサがいち早く気が付きまして追いかけて途中で捕まえたらしいのです」
「あの頃か。確かハワードは領地に居たのでしたね」
「それで私に連絡が来まして説教して結婚式を早めた次第です」
「そうだったんですね。それとあちらから多額の金銭を要求していますね」
「金の出所がはっきりしません、今調べさせているところです」
「それにしても修道院で多額の金銭が必要とは。使い道を含めてアリーシャ嬢の動向を探らせましょう」
「この件はハワード個人のみで公爵家は関係ありませんので、宜しくお願いします」
「分かりました、報告確かに受けました」
「王太子殿下、もう既に調査を始めている事は話さなくてもよかったのですか?」
「あぁ、話そうか迷ったが後々の事を考えて公爵の顔を立てての方がいいだろうと思ってね」
「さようですか」
「しかし、ハワードが支援者か」
「お辛いですね」
それにエドモンドは答える事が出来なかった。
ただぼんやりとハワードは本気でアリーシャ嬢が好きだったんだなと思いを巡らせた。
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