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一つの恋の……伝達

 ウェールズ公爵は手紙を持つ手が震えていた。

 確かにハワードが結婚前にアリーシャ・ドクトールの要請で王都に向かおうとした事は知っている。

 メリッサからの報告があって慌てて領地に帰還した。

 当時婚約破棄されそうだったアリーシャ嬢を助けたかったらしいが、証拠は万全で却って庇う事で我が家の立場が悪くなるのは分かっていた。

 それと少なからず気があることを知っていた為、叱りつけてメリッサとの結婚を早めた。

 これで縁が切れたものと思っていたが。

 この手紙によると平民になったアリーシャ嬢の為に保護申請をして修道院から出し、新しい邸宅を王都に持たせて愛妾として囲うつもりだった様だ。


「……なんて事だ!」

「旦那様、どうかなさいましたか?」

 それまで黙って側にいた執事が心配そうに聞いてくる。


「ハワードの奴がとんでも無いことを企んでいた」

「若旦那様が?」

「結婚前から計画していたと言うことか。メリッサがありながらこの様なことを平気で企むとは」

「どうなさるおつもりですか?」

「そう言えばメリッサが結婚前から思い悩んでいたと言っていたな」

「若奥様はお気づきでは無いのでしょうか?」

「知らんだろう。あんなに献身的に看病をしているのだから」

「しかしこの計画、現実的では無いのでは?」

「そうだな、この手紙によるとかなり無茶な要求を堂々としてきている」

「若旦那様はアリーシャ嬢に本気なのでしょうか?」

「そうだろう。かなりの金銭的援助をしている様だからな」

「……」

「……金は何処から出ている?メリッサが金庫番として帳簿もキッチリ付けていて無駄金は無いはずだ」

「若旦那様が借金を?」

「至急金の出所を調べさせてくれ。それと王太子殿下にお会いできる様に先触れを出してくれ」

「もう王太子殿下にお会いになるのですか?」

「この件は王太子殿下も関わりがある、無駄に王家に疑念を抱かせる訳にもいかない」

「尤もでございます、直ぐに手配致します」

 執事は慌てて出て行った。

 公爵はイライラとして小さく悪態をついた。


 全くとんでも無いことを。

 事前に分かって良かった、今なら手の打ちようもある。


 そしてふとメリッサの言葉を思い出す。

「結婚前から何か悩んでいた」

 確か医者によるとストレスが肌に悪いと言っていたか。

 原因はアリーシャ嬢絡みか。

 ならば自業自得と言えるだろう。

 安易に約束を交わしたものの実現が難しくなって追い詰められたか。

「全く、情けない奴だ!」

 ハワードに対する心配や同情心が霧散(むさん)していく。

「先ずは王太子殿下に手紙を見て頂いてハワードの現状も話さねばならんだろう」

 公爵は気持ちを落ち着かせる為、パイプタバコに火をつけた。

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