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05. 騎士団本部へ



「馬車がないから馬になるが乗れるか?」


え、まさかの馬移動?入ってくる情報が異世界すぎて処理能力がヤバめなんですけど。

前に仕事の一環で習ったけど、何年ぶりだ?それに道も分かんないし、お城までどれくらいかも分らんないし出来れば馬車の方が助かるんだけど。


「え、あれは?」

「あれは護送用なので、こちらへ」


騎士様は颯爽と馬にまたがり、上から手を伸ばしてきた。


「……あー。はい」


やっぱそうなるよね。一人で乗るのは不安だし、犯人たちと一緒に運ばれるのも犯罪者だと思われるのも嫌だし、何より臭いから背に腹は変えられない。

でも、なんか二人で乗馬ってなんか照れる……とか言ってる場合じゃないから、馬に擦り寄り鼻先を撫でながら、


「重くなるけどごめんね。少しだけ乗せてもらうね」


鼻先にチュッとキスをすると可愛い瞳が笑ったように見えて、すりっと頬を寄せてくれた。


「あー可愛い。癒し」


動物って異世界でも癒しだわ。本当可愛い。


差し出された手を握って、馬上に跨ると抱え込まれるよう手綱を握った彼が


「馬、好きなのか?」

「動物は全般に好きですね」


腕を伸ばして鬣を撫でながら


「綺麗な子ですね。」

「ライナーだ」

「男の子?」

「あぁ」

「ライナー、重いけどよろしくね」


もう一度撫でると、視界に入った手綱を引いた彼の手はゴツゴツでやけに大きく見えた。

そして彼は他の騎士様たちにいくつかの指示を出して馬の腹を蹴った。


「後は、頼んだ」


犯人と子供たちは他の騎士様に任せるみたいだけど大丈夫なのかな?と思ったりするけど、そこは慣れてるっぽいから大丈夫なんだろう。


アールなんとか王国って言ってたけど、ラノベみたいな貴族社会のような感じなんだろうか?ってか私カタカナが苦手なんだけど、外人の名前とか地名とか覚えるの普通に無理なんだけど大丈夫だろうか?


あれ?そう言えばなんで日本語通じてるの?


あっ、もしかしてこれが異世界補正の超チート言語翻訳機能なんだろうか?言葉が通じるってすごく重要な事だよね。あー感謝。読み書きとかも出来んのかな?それだったら嬉しいな。


「あの」

「早いですか?」

「いえ、それは大丈夫です。この国の言語って何ですか?」

「アールランド語ですが」

「……そうですか」


アールランド語?アイルランド語みたいなの?ってアイルランド語なんてもちろん分かるわけないし。


字を見てないからどんなかんじなのかも分からないし、日本語で話してる私の言葉がアールランド語に変換されてるって事よね?やっぱ超チートだよね。この能力でテストを無性に受けたくなるのは仕方がない。でも、自動翻訳だから微妙な表現の誤差も修正されてるって事なんだろうか?どんな風に調整されてるのか凄く気になる。


けど、気になるのは言語だけじゃなく、やっぱり人間の三大欲求が満たされるかどうかって重要よね?


今日寝る場所が確保出来るのか、そこにはベッドがあるのかどうか、ふわふわじゃなくても良いからお布団は欲しいな。後は食だよな。世界屈指の繊細さを誇る日本人の口に合うのかどうか、飲み物関係はどんな感じなのか、これ、最も重要よね。


まぁ言うて、ぶっちゃけそこまで味付けうるさいわけじゃないけど、脂っこいのとか肉肉肉みたいなのとかは嫌だし、ラノベのようなお茶会、紅茶、お茶会、紅茶みたいな生活は嫌だな。普通においしい水があればそれで良いんだけど、もしあるなら軟水がいいな。硬水は苦手なんだけど、ミネラルウォーターがあるのも不安だ。後は性欲か……それは当分大丈夫だ。

あっ生理とか来ちゃったらどうすんの?


この世界の事は良く分かんないし、これからどうなるのかも分からないけど、もし日本に帰れるなら帰った時には時間誤差は修正してくれてないと、仕事中に行方不明って事になるのは勘弁してもらいたいない。めっちゃ社長に怒られる。


……しまった。


臭すぎて頭痛が酷かった上に、異世界という情報過多すぎる現実に脳が処理しきれてない。頭が熱い。背もたれが思った以上に温かくて心地よ過ぎるのも良くない。馬上なの揺れが心地いいのも良くない。これは今すぐ眠れと言ってるようなものだ。とかなんとか言い訳しつつ意識を手放した。





*





「……」


ここはどこだろう?なんかビジネスホテルのような感じ?ベッドは見た目以上に良い感じだ。けどベッドとソファセット以外に何もない。やっぱりテレビとかないんだろうな。だって移動が馬なんだし。


背伸びをしてベッドから起き上がると、いきなりドアが開いた。


「大丈夫ですか?」


ドアから差し込む光で顔は見えない。


「……はい。すみません」


ドアを開けたまま、立ってるから外へ出ろと言う事なんだろう。布団を直してベッド脇にあった靴を手に持ち急いで出た。


部屋の外は、机と応接セットがあり、壁には本棚がいくつも並んでいた。


「そちらへ」


ドアを開けた人は馬に乗せてくれた騎士様だった。


「ご迷惑お掛けしてすみませんでした」

「いえ、ソファへどうぞ」

「はい」


指された場所に座ると、向かいには殿下と呼ばれた男と、初めて見る眼鏡をかけた男と、目付きの悪い男は後ろに立ち上から睨んでいた。


「……あの、靴履いて良いですか?」

「あぁ」


足裏を軽くはらい、編み上げブーツの紐を絞めてるだけなのに、突き刺さるほどの視線を方々から受けた。


……え、ただのブーツで怪しいとこは何一つないんだけど、視線が痛すぎてなんか急いでしまった。


「お待たせしてすみません」

「あぁそれとこれ、君のモノだろう」


差し出されたのは、折りたたまれたパーカーだった。


「あっありがとうございます。良かった。これ重くて、しんどかったんですよ」


パーカーを受け取り、すぐに騎士様から借りていた上着を脱いで、騎士様まで持って行き


「ありがとうございました。洗って返すものなんでしょうけど、すみませんこの国の事が良く分からないものでこのままでも大丈夫でしょうか?」


「それは構わないですが、早く上に着てください」


ほんのり頬が赤くなった騎士様は上着を受け取り目を逸らした。


「あぁはい……。あのっこれ下着じゃないですよ?」

「……殿下がお待ちです。早く」

「あっすみません」


ソファに戻り、パーカーに羽織ったところで前を向いたけど、やっぱり全員どこか違うところを見ていた。露出狂とか思われたら嫌だからここは堂々としておこう。


「すみません、お待たせしました」

「……君の国は……随分薄っ自由なのだな」

「まぁ国によって、常識は違うと思うので、失礼な行動でしたらすみませんでした」

「いや、まぁいい。では、話を聞きたいのだが、大丈夫かな?」

「はい。お待たせしてすみませんでした」


ん?さっきとは少し違うのは何故だろう。何かがきっかけになったのか、それとも元々こっちの感じなのかな?だけど後ろの男だけは変わらずに睨んでくるけど、確実に私を不快にさせる人間だ。




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