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04. アールステッド王国



「……あの、つかぬ事を聞きますが……、ここはどこですか?」

「……王都の外れですね」

「ん?……あの、王都って?」

「アールステッドの王都ですが」

「……あーちなみに、アールステッドと言いますのは?」

「この国ですが、異国の方なのですか?」

「……あっあー異国……はい異国です」

「どちらから来られたのですか?」


眉間に皺を寄せながら聞かれたけど、これ日本って言って通じる感じ?だってアールステッドって国あったっけ?私が知らない可能性も十分ありうるけど、百歩譲ってもしあったとしても、湾岸の倉庫に入った私が、この木々に囲まれた場所にある古めかしい洋館から出てくるのはおかしいし、スマホが圏外なのも、騎士に王女、村人やあの外人の子供たち……コスプレじゃないのだとしたら、ここはまさかの異世界なんじゃなかろうか。


……巷で大流行の異世界転生ってやつか?ついに私も?いや、そもそも転生ではないからこれはトリップになる。それはそれで面白そうではあるし、もしそうなら魔法とかチート級な能力とあれば超興味あるし、生きるのだけでもまぁまぁしんどい日本よりも何故かワクワクするのは仕方がない。


「……日本です」

「……、ニホン?……ちょっと、聞いたことないですね」

「ずっとずっと東の方にあります」

「……そうなんですね」


分かんないけど、あるならずっと東へと行ってれば、その内地球1周するだろう。


……あっ。いや、うそ、地球じゃなかった。だって月が二つなんてありえない。


うぅっ、やっぱこれ、完全に異世界だわ。急に現実味を帯びてきて、今日の寝るとことか、これからの事とか、一気に不安が押し寄せてきて、さっきのワクワクなんてどっかに行ってしまった。


「……えっ」


肩に重みを感じ顔を上げると、彼女を抱っこしてた騎士様が自分の上着を私に掛けていた。


「あっ大丈夫です。寒くないので。それより2階の部屋の中で倒れてる男が彼女を襲ってた男ですから」


返すために脱ごうとしたら、何故かボタンまで止められた。


「……大きいと思いますが少し我慢してください。分かりました」


頷いた彼はすぐに指示を出していた。訓練じゃないなら事件なはずで、それは私がどうこう出来るモノじゃない。後はお任せして、この状況の整理とこれからの事を考えて、一先ずアールなんたらとか言う国の事を知らなきゃならないし、拘束されていたあの部屋も調べたい。日本だと事件現場に関係者以外暫く入れなくなるけど、この世界はどうなんだろう。


しかしこの騎士服、大きいのもそうだけど、クソ重いんだが。


「ゲオルグ、遅くなってすまない。ルミエールは?」

「殿下、馬車の方に」

「そうか、全員捕まえたのか?」

「はっ」

「ご苦労だった。……して、その者は?」

「私たちより先に、彼女が王女様を助けて下さってまして」

「彼女……女性なのか?」

「はい、女性で間違いありません」

「女性が、ルミエールを助けたと?」

「はっ。王女様がそう仰られており、助けた経緯まではまだ確認出来ておりません」

「……ほぅ」


突如、現れた長身の金髪イケメンは、サファイアの瞳を近づけ、いきなりマスクを下げた。


「……」


いきなりだな。失礼かよ。


「君が助けたと?」

「……」


だったらなんだ。そこの騎士様が言ってた通りだよ。疑うなら勝手に疑えばいいんだけど、しかし後ろの男が何か知らないけどめちゃくちゃ睨んでくるのが腹立つ。


「口が聞けないか?」

「……」


いや、それにしてもガン見し過ぎだし、後ろの男に至っては睨んでないでなんか言えと言いたい。だけどそんな事より地下の子供たちを助ける方が先だ。


隣にいる騎士様の腕を引っ張り見上げると、目を見開き戸惑いが見えたけど気にせず話しかける。


「地下に子供たちが捕らわれてて、人身売買で売り捌くとかなんとか言ってたので助けてあげて欲しいんですけど」

「何っ!子供たちを?殿下、」

「分かっている。だが、私の言葉を無視するか」


殿下と呼ばれるぐらいなのだから、きっと偉い人で、最悪王子とかもあり得るわけで、そしたらこの騎士様はそこに居るだけなのに巻き込まれただけであって、なんかそれは申し訳ない気がした。


「この国は人身売買が合法なのですか?」

「……そうは言ってない。質問に答えよと言っている」

「私はこの国の人間ではないので貴方が誰かも分かりませんし知りません。よって、さっきの質問に対し必ずしも答えなきゃならないとは思ってません。ですが、単純に答えたくないからと無視した事は、若干ですが、本当にほんのほんの少し申し訳ないと思っています。その上で、状況整理させていただくと、売られそうになって牢屋に閉じ込められている子供たちを助ける以上に、最優先するべき事だと思えないのですが?」


相手が誰であろうと私には関係ない。私はこの国の人間でもなければこの世界の人間でもない。

たまたまこの世界に紛れ込んでしまっただけの異物でしかない。だけど、売られそうになってる子供たちを関係ないからと言って見過ごしたら一生後悔する。


「この国の者ではないのか」

「間違いなく」

「……勿論、子供たちは助ける。それにルミエールを助けたと言うのなら事情を聞かねばならない」

「分かりました」

「ゲオルグ、先にルミエールを連れて帰る。子供たちは騎士団本部で一時的に保護し、明日以降対処する。犯人は地下牢へ。その者と共に私の部屋へ来るように」

「はっ」


なんか、マントを翻して馬車の方に向かった男の背を眺めていると、さっきから鋭い視線を向ける男と一瞬目が合っただけなのに殺意を剥き出しにされ、殿下と呼ばれる男と一緒に消えていった。


「……地下に?」

「あっそうです。こっちです」


彼の腕を掴んだのはいいけど、掴む必要もないかと思いなおし、手を離し先に歩き始めた。周りを見渡しながら屋内に入ると、外も中も結構な騎士様たちが居たことに今更驚きつつも、やっぱり屋内は臭すぎて忘れかけていた頭痛が戻ってきた。


階段を降り、さっき縛った男を避けながら、通り過ぎてると


「こいつも、貴女が捕縛を?」

「あ、はい。この奥にある牢屋に子供たちがいっぱいて、さっき上で捕まってた男が人身売買がどうとか言ってて……ん?」


説明をしてると突如腕を引っ張られた。


「危ないですから」


そう言って、彼が先に奥へ進んでいった。牢屋の前に着くと前に出て


「遅くなってごめんね。今助けるからね。もう少し待っててね」


腰から工具を取り出し、南京錠を開錠して鉄格子を開けようとしたら、


「今何をした?」

「鍵開けただけですよ。この程度の鍵ならすぐです」

「……」

「さっみんな怖かったね。騎士様たちが助けてくれるからね」


彼を見上げれば、付いてきてた騎士様たちに指示を出し、子供たちを外に誘導してくれる。


「こっちにも居るんです」


次の牢屋からも子供たちを助け出して、子供たちが上に上がって行くのを見守ってると


「貴女は、何者なんだ」

「……何者と言われてもなんて答えていいか……だけど、悪い事はしてないと誓って言えます」

「……鍵を使わずに開錠するのにか?」

「悪いことするためには開けませんから」

「……そうか。詳しい事は本部で聞くが、もう他には居ないのだな」

「見てない場所は分からないので確認してもらった方が間違いないと思います」

「分かった。遅くなったが王女様を助けて下さり感謝する。ありがとう」

「いえいえ」

「殿下がお待ちだ。本部へ案内する」

「……はーい」


さっきの彼女が王女様でルミエールって名前、殿下と呼ばれる男の彼女って事か?いや、でももし殿下が王子で結婚していたら妃になるだろう。あっでも婚約状態で他国の姫なのかもしれない。そもそも殿下が王子なのかも分からないし、王女がどこの王女なのかも分からない。それに兄妹って可能性もあるか……。


どうせ今から聞かれるんだから、私も聞きたいことを聞くとするか。今後の為に必要な情報か……、まず重要度を優先して聞かないとな。



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