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03. ……は?



彼女の手を握ると細く白い手でぎゅっと握ってくれたので、ニコリと笑い、横たわる男の写真も忘れずに撮ってから、臭すぎる男の股間を思いっきり蹴り上げた。もちろん使い物になるかどうかは定かではない程度の強さにしてだ。


瞬間、彼女はひゅっと喉を鳴らしたけど、その次はほんの少し笑っていた。


「こんな臭い男のは使えない方が世の為ですよね」

「……」

「じゃあ行きますよ」

「……あのっ貴方は」

「あー通りすがりの人間です」

「……」


安全確保したらこっそり姿を消すから何を聞かれても素性を明かすことない。


廊下に出たことで少しだけ臭いもマシになったけど、太ももに剣の刺さった横たわる男に彼女は怯えていた。


「大丈夫です。しばらく目は覚めないと思いますけど、動けないようにしてあるんで」

「……」


ニコリと微笑んだところで、階下が騒がしくなり、男たちの怒号が聞こえ始め、どうしようかと身構えたところで、彼女が


「……助けに来てくれたんだと思います」

「警察?」

「……?」

「貴女の味方ですか?」

「ええ」


味方って警察じゃないのかな?あっまさか別のコスプレマフィアとか?そっちだったら私には敵じゃないか?え、どうしよ?彼女を置いて逃げる方が良いのか、一緒に逃げた方が良いのか、どうしようかと考えてるうちに足音がドタドタと聞こえたと思ったら、剣をもった男たちがすぐそこまで来ていた。


「王女様っ」

「王女様っご無事ですかっ!」


……え?王女?そんなのまで設定してんの?え?劇団とか目指してる系?え、まさかの撮影中とか?


「ゲオルグ、剣を降ろして」

「ですがっ」

「彼女が助けて下さったのです」

「……」

「剣を降ろしなさい」

「……王女様……失礼致しました」

「王女様っ!!」



いきなり口調までもしっかりしだした彼女が私を見つめて微笑んだその後ろから、さっきとは別の村コスの男が剣を振り降ろすのが見えた瞬間、彼女をさっきの男たちの方へ背中を押しながら、警棒で強めに手首を叩けば剣も手から落ちていく。


「……クソっ」


手首を抑え痛がる男の顔面を蹴り上げ、後ろへ飛ばし倒れたところで足を捻り上げれば、汚いうめき声と共に足首の関節を外した。


「……うあああああああっ」


うるさいから背後に回り首を絞めたらこいつも臭かった。意識を奪い立ち上がると、彼女と男たちがジッとこちらを見ていた。そして彼女がこっちに来ようと足を進めたところで後ろから手を引かれていた。


「危険ですので」

「あのっお怪我はありませんか?」


警棒を腰に戻しつつ、彼女の方へ歩きながら


「これぐらい全然大丈夫です。ご心配なく」

「お強いのですね」

「いえいえ、多少応戦出来るかな?ぐらいですよ。それより臭すぎて頭が痛いので早く外に出ませんか?」


マスクを元に戻しながらそう言えば、臭い?と不思議そうに小首を傾げた。


……クソ可愛いんだけど。


「貴女は……」


彼女の顔をほけーっと見てると後ろから切れ長の目で怪しむ男が私を見ていた。おー、まさに騎士団って感じのコスプレで、これは好きな人にはたまらない感じの衣装に黒髪長身の爽やかイケメンときた。流し目なんてされたら何人倒れるんだろう。


「私?あーたまたま怪しい人たちを見かけたのでこっそり付いてきたら彼女が襲われてたんですよね」


嘘は付いてない。あっそうだ。通報しないと。ポケットからスマホを出したらやっぱり圏外だった。


もう一台出しても同じように圏外で、周りを見渡そうにも窓もないから分からない。そんな私をジッと見ていたのをスルーして、斜め掛けの鞄にスマホをしまい顔を上げて


「早く外に出ましょう。鼻が曲がりそうです」

「……そ、うですね。ゲオルグ」

「はっ。王女様、失礼します」


その騎士コスの彼は軽く彼女をお姫様抱っこして階段を颯爽と降りて行った。衣装だけじゃなくそんなとこまで騎士になりきっているらしい。やっぱり演技の練習かなんかだろうか?


「……どうぞ」


ふと声を掛けられ見上げると、残りの騎士コスたちは何故か顔を赤らめていた。


「……ども」


彼女を襲っていた男の事を言おうかと思ったけど、状況が良く掴めないし、なんか演技の練習かもしれないし、いや、その場合、剣を刺したのはまずかったか?まぁ転んで刺さった事にすればいいか。……だけど、コスプレでやる意味よ……分からんな。どうせ、暫く寝てるだろうから様子見てからにしよう。


騎士コスの彼らに誘導されながらを階段を降りると、4人の男は既に拘束されていて、その他にもまだどこかに居た様で全部で10人ほど拘束されていた。それを横目に誘導されるまま外に出れば何故かそこは湾岸の倉庫ではなく、古めかしい洋館が木々に囲まれた場所だった。


「……は?」


いやいや、湾岸の倉庫に入ったよね?下調べで来たのは間違いなく倉庫だった。


……ん?でも、よく考えてみたら、牢屋にいる子供たちや、強姦未遂とか、本当に危険な場所への調査は私はさせて貰えるレベルに達していない。学生の身分でバイトの立場にある私は調査資料の作成や、浮気や人探しの情報収集が主な仕事だった。だから事件が絡んでいそうな危険な依頼は社長を筆頭に武道や格闘を得意とする精鋭部隊が動いていた。


って事は、来る現場を間違えてしまったとか?……こんな危険な現場に偶然来てしまったとしたとか?シンプルに社長が現場を間違えて指示してしまったとか?


……あっスマホ。鞄から出してみてもやはり圏外だった。



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