プロローグ③ スキル獲得不良
佳一たちは案内された大きな扉を通り、部屋の中へと進む。
部屋の中心部分には台座があり、その上には成人男性の手のひらよりやや大きめの板が置いてあった。
王らしき人物たちもここにいたようだ。奥の方でこちらをじっと見つめている。
「それではただいまより、スキル確認を行います。」
黒いローブの男は、同じような恰好の男たちに何か指示を出している。
指示を出された男たちは、佳一たちの方に近寄り、縛っている縄をほどいていく。
全員を解き終えたところで、黒いローブの男が口を開いた。
「ではまずは貴方から。」
初めに指名されたのは、高校生くらいの少年だった。
少年は男たちに連れられ、大きめの板の前に立たされる。
「その板に手を当ててください。」
黒いローブの男が指示を出し、少年はおっかなびっくりといった様子で板に触れた。
それと同時に、部屋の壁に何かが映し出された。
「えっ!?これは!?」
少年が慌てて板から手を放そうとしたが、黒いローブの男たちに抑えられる。
壁に映し出されている何かを見た佳一は、驚愕した。
[ステータス]
赤塚元康‐健康
16歳
[戦闘スキル]
剣の極意‐レベル1
火魔法の知識‐レベル1
強靭‐レベル1
怒涛‐レベル1
[補助スキル]
洗濯‐レベル1
料理‐レベル1
言語理解‐レベル0
[職業]
高校生
おそらく少年のものであろうステータスやスキルが、壁に大きく映し出されている。
「おぉ!剣の極意とは!最初の方からこのようなスキルが出るとは幸先が良い……!」
黒いローブの男がニタニタと笑いながら、赤塚元康のステータスやスキルを見ている。
「これは期待できますね。では次の方!」
そう言うと黒いローブの男たちは元康を佳一達がいる方とは離れた所に連れて行き、元康がいなくなった板の前に別の転生者を連れてきた。
今度は10歳になるかどうかといったところの少女だ。
少女もまた、恐る恐るといった様子で板に触れる。
[ステータス]
神木しずく‐健康
9歳
[戦闘スキル]
水魔法の知識‐レベル1
古代魔法の知識[聖]‐レベル1
[補助スキル]
料理‐レベル1
言語理解‐レベル0
[職業]
小学生
「うぉぉぉおおおっ!!?古代魔法の知識、しかも氷属性とは!?!?!」
黒いローブの男は気絶しそうなほど興奮している。
そのままの勢いで付近にいた男たちに何かを喋っていたが、喋り終わるころには落ち着いてきたようで、先ほど同様に神木しずくを元康のいる方へ連れて行ってから、
別の転生者を板の前に連れて行きスキルの確認をさせた。
次もまた少女。東雲こころとステータスに書かれている9歳の少女は、古代魔法の知識[氷]を持っているようだ。
その後も転生者のスキルの確認を行ったが、誰のスキルに対しても黒いローブの男は同じように狂喜しているため、佳一はやや飽きはじめていた。
そうして他の転生者のステータスを眺めているうちに、佳一の番が回ってきた。どうやら最後だったらしい。
「ではそちらの板に触れてください。」
先ほどから何度も見た動き。
佳一は自分がどんなスキルを獲得しているのだろうと、不安ながらも期待に胸を膨らませながら板に触れる。
[ステータス]
天崎佳一‐健康
22歳
[戦闘スキル]
[補助スキル]
言語理解‐レベル0
[職業]
会社員
佳一には、スキルが無かった。