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異世界根無し草  作者: 陸海月
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 §1 サカモトさん編その二  『意思確認:2』 

「転生とは魂の無い肉体に魂を移すことです」


 「どうやって?」


 「お答えできません」


 ……大事なことなのにいきなり回答拒否。質問の仕方をかえてみようか。


 「魂の無い肉体とは?」


 「通常肉体とはそれを維持していくのに必要な各臓器、外界に干渉するための器官及び外界からの干渉された際にこれを感知する器官(もちろん一部が欠損、機能不全等あります)とそれを制御する脳およびこれに準ずる器官、これらが揃って肉体と定義します」


 「脳に準ずる器官?」


 「どの世界でも脳は基本的に同じです。しかし特殊な環境により制御機関が脳より変質したものや人為的に作り出された脳および脳機能を代行する人工物、魔具、魔力塊等です」


 「まぐ?まりょくかい?」


 聞いたことがない言葉だけど


 「魔具とは魔力的の込められた人工物、鉱石、植物等を指します。魔力塊とは魔力そのもを指します。この場合、いずれも魔力が主に作用して脳機能の役割を果たします」


 魔力!なにそれ?詳しく聞きたいけど、話がズレるな。


 「じゃあ、魂とは」


 「魂は通常脳と同化しています。様々な知覚情報を取り入れ脳と共に発達します」


 「不可分なの?」


 「そうとも言い切れません。人の世界のおいて人為的に脳から分離を試みた例、魂のみの消滅を試みた例があります」


 「それらの例は成功したの?」


 「成功か失敗か分かっていない。です」


 「というと?」


 「『魂が脳から分離している状態』『魂の無い脳である』これらの状態を人の世界においては証明する手立てがありません」 

 

 「ワシは証明にはならんの?サカモトさんは『魂のみ留めている』状態っていってたよね」


 「証明にはなりません」

 

 「なぜ」


 「魂そのものを肉体と脳制御による知覚ができないからです。魂は……例えば片倉登さんの世界で紳士的行為の総称としての『大和魂』という『言葉や行動』だったり『職人魂』などは職人の大傑作などの『創作物』であり、魂が肉体を通じて言葉や物など脳が知覚できるものに具現化されないと知覚できないんです」


 「じゃあ、幽霊とかは?肉体を失ってどうやって他人に『知覚化』させることができるんですか」


 「片倉登さん」


 「はい」


 サカモトさんが眉を八の字にしてこちらを残念そうな目でみている。


 「信じているんですか?ユーレイとか……はぁ~あ」


 「あ、いえ。そういうわけでは」


 サカモトさんはわざとらしく咳払いしながら手元の原稿用紙をペラペラしていた。はぐらかされたのか?


 魂を知覚できないってどういうことだ?でもサカモトさんはワシを知覚しているように思えるのだが


 「サカモトさんはどのようにしてワシを知覚しているですか?」


 サカモトさんが原稿から顔をあげまっすぐこちらを見る


 「私が魂だからですよ」


 驚いた。ただのアナウンサーじゃないと思っていたがまさか魂とは


 「魂は魂を知覚できると?」


 「そうですね。知覚といいますか記憶の共有と言うほうが近いかもしれません」

 

 「記憶の共有?」


 「お互いの魂同士が接触することにより私サカモトの記憶と片倉登さんの記憶が一部共有されます」


 「一部ですか」


 「記憶の集合体である片倉登さんの魂には『意思』があります。その意思が私の記憶の全てを受け入れること拒否しています。同様に私の『意思』も片倉登さんの記憶の全てを受け入れること拒否しています。」


 「……」

 

 何故?と問う前になんとなく湧いてきた疑問を先に問う。


 「自分が自分であるため?」


 「そうとも言えます、意思とは記憶の集合を留める為の器のような概念です」


 サカモトさんは続ける。


 「一般的な『意思』には他者の記憶を全て受け入れる程の容量、また他魂の『意思』を制御し得る力を持ちません。仮に受け入れたとしても意思同士が混ざりきらずに一方か脳の制御権を優位に保ちながらも不定期にもう一方の意思が脳を制御し、肉体としては支離滅裂になってしまうでしょう。」


 魂の完全同化はあり得ないみたいだ。ガチもんのジ〇ル博士とか凄まじいんだろうか想像がつかないな……おっと、話が大分逸れた。


 「魂と肉体は分かりました。それでは魂の無い肉体をどのようにして見分けるですか?」


 「魂が触れば分かります。脳だけの存在や脳の障害や病気等により『他者に魂を知覚させることができない』脳に魂がある場合は、触ってみて『あっいるな』と知覚すれば他を当たればいいのです」


 「脳だけの存在って!そんなのあるんですか?」


 「ありますよ」


 「どうやって脳そのものを維持しているのですか?」


 「魔力により維持と劣化を防ぐ処置を施すとか、また脳を記号化した魔具、同じく人為的に記号化されたものを劣化しない物質に記録する等それほど珍しくはありません。魂は記号化できませんが、脳があるならばたいては同化しています」


 脳ってもっと「神聖な 不可触な 複雑な」みたいに人が簡単に弄ってはいけないもののように感じていたが、これまでのサカモトさんの話を聞くとUSBメモリーみたいな扱いだと感じてしまう。PC立ち上げてメモリーを挿せば魂付きでヒトが起動する。そいつがPCの内臓スピーカーから「OK グー〇ル 電気つけて」ってCMでおなじみのアイツに声をかければそいつの魂を目で見て知覚できるって仕組みか。


 しかし、そんなに簡単に捉えてもいいものなんだろうか。


 「このくらいでよろしいでしょうか?そろそろ……」


 お、そういえば意思確認の最中だったな。どうしようか、このまま転生するほうが面白そうだな。


 「転生でお願いします」


 「承りました。では、審査を始めます」


 

   


 

 

  


 

 







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