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第1話「人間やめた人間の俺が、今では引きこもり」

1話という事もあってかなり説明が多いですが、読むのがキツイって人はぶっちゃけ流し見て貰っても大丈夫です。正直な所、読んでいけば何となくわかる様になっていくと思うのでw


「__っッハ!」


ビクッ――っと体を震わせて目が覚める。目覚めたばかりなのに意識はハッキリとしてる。背中には冷や汗と思われるものでジットリと湿っていて気持ち悪い。


(……最悪だ)


これほど目覚めの悪い朝は早々無いだろう。いや、あってたまるか。

 

思い出したく無かった過去の出来事を鮮明に映し出した悪夢は、目覚めてからもずっと頭の中でそれが再生され続けられる。まるで忘れさせやしない、とでもう言う様にループ再生されている。何度も、何度も……


それを頭から振り払う様に体を起こし、洗面台に向かう。


普段は、眠り眼で四方八方に飛び跳ねている黒髪で目付きの悪い俺が映るのだが、今回はいつもに増して酷い顔をしてる。


間違いなく、あの悪夢のせいだろう。

 

意識を切り替える様に蛇口から流れ出る冷水を手の平ですくい、それをバシャバシャと顔面に掛ける。

 

冷水のヒンヤリとした冷たさが、何度も顔を撫でる。

 

顔全体から滴る雫は、窓から差し込む太陽光を反射させる月白色(げっぱくいろ)の洗面台に落ち、排水口へと吸い込まれる。

 

冷水で濡れた顔をタオルで拭い、さっぱりとした状態でリビングに足を運ぶ。

 

リビングに近づくに連れて聞こえる鼻歌が鮮明になり、食欲をそそる香りがより濃い物になっていく。

 

扉を開けたその先には、キッチンに隣接しているカウンターがあり、その直ぐ近くに4人用の椅子と長方形のテーブル。その隣にはソファーとちょっとした丸テーブルがあり、それを跨いだ所に4Kの大きなテレビがある。

 

キッチンには、レディーススーツの上からピンクのフリフリが付いたエプロンを掛け、ノリノリの様子で鼻歌を挟みながら料理する女性が一人。

 

慣れた手付きで卵を割り、それを熱したフライパンに落とす。油の跳ねる様な音をあげるのと一緒に香ばしい香りが鼻孔を擽る。


「……おはよう、姉ちゃん」

 

後頭部をポリポリと掻きながら近くの椅子に腰を下ろす。それでようやく俺の存在に気づいた姉ちゃんは……


「あっ、おはよぉ~! 愛人君!」


腰まで伸びる明るい栗色の長い髪を揺らしながら振り向いた姉ちゃんは、それはそれは眩しい笑顔でそう告げる。

 

そこらのアイドルなら裸足で逃げ出すレベルの笑顔を見せてくれたのは、俺の姉、高原ちなせだ。

 

波打つ栗色の髪、パッチリと開いた瞳は、見る者全てが吸い込まれるような錯覚すら覚える。整った顔立ちは、テレビで見る女優といい勝負、下手すればそれに勝る美しさ……と言うより可愛らしい、という表現の方が正しいだろう。

 

モデル顔負けのスラっと整ったスタイル。ワイシャツとブレザーを内側から押し上げる様に膨らんだ大きすぎず、小さすぎない豊満なバスト。俺の目測じゃD……いや。Eにまで至っているかも……

 

引き締まったウェストは、滑らかな曲線を描いて腰へ。むっちりとした太ももとお尻がタイトスカートに張り付いているせいで余計柔らかそうに見えてイロイロとヤバイ。太ももとか、お尻フェチの人間が見たら穴と言う穴から血を噴き出して出血死するレベルで……

 

まさにボン・キュ・ボン。縄文時代の土偶の様なスタイル……は、流石に言い過ぎか。

 

姉ちゃんは二人分の料理を皿に盛り付け、テーブルに運ぶ。


目玉焼きにサラダ、ベーコンに白飯と、ごくごく普通な朝ご飯。だが、そんな普通な食事が一番いい……一昔前は黒い何かと、黒い何かと、黒い何かが出てくる朝食が当たり前だったのだから。

 

そう考えるとここまで料理の腕が上がったのは称賛に値する。

 

「は~いお待たせ! 今日はごくごく普通な朝ご飯を目指して作ってみましたっ!」


自信満々に胸を張ってドヤ顔をかます姉ちゃん。―――ああっ! お姉様っ! なりませぬ。それ以上胸を張ったらタダでさえ外れそうなボタンが弾けてしまいますわっ!


「お、おう……まぁ、これはこれでいいんじゃないか? あの時の異物に比べれば……」


「あ、アハハ~……何のことかな?」


自分が数年前に作ったの料理を沸騰させる様な言い回しに明後日の方向を向いて口笛を吹く姉ちゃん。

 

それをジト目で見つめる俺。いつもと変わらない、平凡な一日の始まりだ。


あらかた食事を終え、二人分の皿を俺が洗う。


料理は姉ちゃんに任せっきりなので、せめてもの思いで食後の皿洗い位は俺がやっている。家事も料理も、家計も支えて貰ってるのだから、これくらいの簡単なことはやらなきゃバチが当たる。

 

うちは母さんを早くに亡くしている。親父が言うには、俺を産んだ後、体の弱かった母さんはそのまま息絶えてしまったそうだ。

 

だからうちは3人家族。俺、姉ちゃん、親父の3人だ。

 

親父はある組織に所属している。警察官や特殊部隊なんかでも手に負えない様な連中を捕まえる。いわば正義の味方だ。

 

俺も半年前は親父と肩を並べて同じような事をしていたのだが……とある事情から身を引いて、今はこうやってダラダラとニート生活を送っている。

 

仕事の都合上、家に帰ってくる事は少なく、家族3人で飯を食べる約束をしてもドタキャン(緊急事態)して結局姉ちゃんと俺の二人で食事を取る事も一度や二度じゃない。

 

それでも、何か特別な日だけは何があっても一緒に居てくれる優しい親父だ。

 

姉ちゃんは、高校の教師をやっていて一家の大黒柱である親父よりも稼いでる。この生活の大半は姉ちゃんのおかげだ。

 

親父も決して少ない給料ではないが、仕事道具のメンテナンスや部品やらなんやらを購入している内に雀の涙程度のお金しか残らない為、生活は姉ちゃんに任せっきりだ。

 

最初それを聞いた時、父親としてどうかと思ったが……姉ちゃん曰く、俺と自分の生活であれば何の問題も無いくらい給料を貰えているから気にしなくて良い――と、貯金も出来るほど余裕があるらしい。

 

ここまで来ると、実は姉ちゃんがアブナイ仕事をしているんじゃないかと疑いもするが……ただただ校長先生が、姉ちゃんを転勤させない様にガンガン給料を上げまくってるだけだったので心配するだけ損だった。

 

俺も元は親父と同じ組織で働いていたが、訳あって引退。その理由の一つは、特異体質によって日常生活に支障をきたす程の障害が出てしまった事だ。

 

右半身の感覚が麻痺していたり、少し歩くだけでめまいが起きたり……それらが収まる頃には、かれこれ半年掛かってこんなニート生活を送っている訳だ。

 

特異体質と言っても、今のご時世そう珍しいものでもない。総務省の統計では、一万人に一人の確立でいるらしいからな。

 

 2023年。誰もが銃を持つ事を当たり前だと思っている銃社会の日本。そして、10年前に公にされた世界の理を捻じ曲げ、科学で証明出来ない様な現象を引き起こす魔術が認知された世界。それがここだ。

 

魔術によって人々の生活は飛躍的に充実し、また、医療の最先端技術にもなった魔術は、病に苦しむ多くの人々を救った。そうして魔術は人々に認知され、世界がそれを受け入れつつあった。

 

だが、充実したのはそれだけじゃ無い。生活、医療、技術等々が多くのものに影響を与え、短期間で飛躍的な進歩を生んだ魔術は、人を殺す技術も向上させてしまった。

 

その為か、魔術が発展しだした5年前から銃や魔術を使った事件、テロが多発するようになった。このままではいけないと考えた政府は、これらを抑制する為に二つの組織を結成した。

 

『警視庁公安部 公安第0課 通称:公安0課』

 

公安の中の公安。秘密警察とも言われてる。表の世界では、姿を現すことが殆どない組織。職務上の殺人が容認されている『殺しのライセンス』を持つ公務員だ。

 

0課が優先するのは国の安定。国民一人ひとりの安全では無い。

 

その為、警察や特殊部隊が手に負えない様な凶悪犯罪を始末、逮捕するうえで国民に多少の被害が出ても、結果的に多くの人が助かるのなら割り切って犠牲にする。大の虫を生かして小の虫を殺す、そういう考え方をしなければならないのがこの組織だ。

 

他にも、国を脅かす可能性のある者の監視や暗殺。他国の情報収集など、国の安全の為ならどんな汚れ仕事もする。 

 

0課に求められる者は、政府の命令をこなせる忠実さと、どんな凶悪犯との戦いでも勝利することが出来る手腕。つまり実力があれば、年齢は問わない。例えそれが未成年でもだ。

 

親父がこの0課に所属していたこともあり、戦闘員向けの特異体質を持っていた俺は中学生の時から親父に戦いのノウハウを叩き込まれてこの0課に所属していた。

 

そもそも、俺の特異体質というのは『サヴァン症候群』という物だ。

 

知的障害のある者のうち、ごく特定の分野に限って優れた能力を発揮する者の症状を指す、というもの。

 

一度見たり聞いたりするだけで記憶出来る瞬間記憶能力や、聞いただけでその音域を正確に判断できる絶対音感も、このサヴァン症候群にあたる。

 

人間は、無意識のうちに自分の体に枷を掛けている。なんて話を聞いたことは無いだろうか?

 

人間の脳は、たった数%しか使われていない……なら何故人間は100%の力を使わないのか……それは、自身の身を守る為である。

 

筋肉トレーニングをせずとも、人間誰しも100キロ程度の力を出すことは出来る。だが、それをおこなって耐えられる体が出来ていないから、それだけの力を出せない様に脳が無意識のうちに体に枷を掛けているのだ。

 

俺の場合は、性的興奮や激しい運動をした際に生じるβエンドルフィンを自分の手で、意識で自由に分泌することが出来きる。それによって脳の神経回廊が組み替えられ、人間が脳や身体に無意識の内に掛けてしまう枷を自由に外す事が可能になる。

 

つまり何が出来るのか? と、問われれば……何でも出来る。

 

ゴリラと相撲を取って勝つ事も、100000×100000の掛け算を秒で解く事も可能だろう。

 

本来常人が生み出すことの出来ない力や反応速度、思考力、計算力といったものが常人何十倍にもなる。簡単に言ってしまえば、火事場の馬鹿力が好きな時に使える様なものだ。

 

だから、結果的に何でも出来る。だが、当然デメリットもある。

 

枷を掛けるのは、体に負担を掛けない様にする為であって、その枷を外すという事は自身の肉体に似合合わない力を産むと言う事。

 

そんな事をすれば当然、体は生み出す力に付いていけなくなり、壊れてしまう。だからいくらでも外して良いと言う訳では無いのだ。使い方を誤れば、自らの力で己を滅ぼしてしまうから。

 

俺が0課から離れた理由の一つは、まさにこの特異体質が原因だ。

 

体質を利用して力の開放率を上げたり、能力の長時間行使などによって俺の体、主に脳が限界を迎えたのだ。

 

それで日常生活に支障が出る程の障害を持ってしまった。 今は、長期間の休息と治療で何ともないが、また同じ様に能力を行使すれば同じような……いや、以前よりも酷い障害を持つ事になるだろう。それも、命の危険があるほどの。そしてもう一つの組織。それは……


『対魔術特殊強襲部隊 通称;A・M・S・A・T』 (Anti Magic Special Assault Team)

 

対人戦のスペシャリストである日本の特殊部隊SATに対し、魔術師との戦闘に特化した部隊が『A・M・S・A・T』だ。


 約10年前、アニメや漫画の世界にしかないと思われていた魔術の存在が公にされた。

 

魔術とは、世界の理を捻じ曲げ、化学では証明出来ない現象のこと。

 

体外へと魔力を放出し、それを操って魔力で描く式、魔術式を形成する。俗に言う魔法陣。これを形成することで魔術が起動し術式にあった現象が起きる。

 

その魔術が普及して10年。今では、電気や化石燃料の代わりになる動力エネルギーにもなっている。

 

魔力を流す事で車内の魔術式が起動、今までエンジンがやってきた事をその術式が行う事で化石燃料を使わず、排気ガスも出ない、地球にも、経済的にも優しい車だったり、コンロや電化製品……今まで電気やガスと言った物を使って動かして来たものが、今では魔力一つで使用できる時代になったのだ。

 

だが、誰にでも魔力を扱える訳じゃない。

 

魔術を起動するには、魔力量やそれを動かす為の魔力操作技術が必要になる。

 

魔力は俗にいう精神力。

 

これらは、既に生まれた時から決まっているため、持っていない者、持っていても量が少ない者もいる。

 

本人の意志どうこうで量が増えたり減ったりする事は無い為、使用出来ない者は一生使用できないのだ。

 

魔術式に魔力を流し込む為の魔力操作も天性の差が大きく出る部分でもあるので、今の時代でも、全員が全員楽な生活が送れる様になった訳ではない。

 

魔力によって動く道具の事を魔道具と呼び、それを作る者が魔道技師。魔術を使用して戦う戦闘員の事を魔術師と呼ぶ。

 

その魔術師との戦闘に特化しているのが『A・M・S・A・T』

 

この二つの組織が結成されてから日本での銃や魔術を使ったテロ事件は設立する前に比べて事件発生率が80%以上も低下した。

 

だが、ここ数年で事件発生率は徐々に上がってきている。その原因は……


「――――ニュースです。先日、午後十一時頃、東京都新宿駅周辺の居酒屋で自爆テロが発生しました。これによって軽症3名、重症者は5名。死傷者は11人と多大な被害が出ています。被害者の多くは男性で、ここ数日で男性を狙ったテロ行為が頻繁に起こっています。既に政府に対して犯行声明が出されており、過激派宗教組織『SDS』による犯行だと思われます……」

 

「またテロかぁ……本当に物騒な世の中になっちゃったなぁ~」

 

 俺の背から聞こえてくるニュースを見ていたであろう姉ちゃんはポツリと呟く。

 

そう、ここ数年で事件発生率が上がってきている原因は、そのニュース中に出てきた過激派宗教組織『SDS』が原因だ。

 

『SDS』は『Seven Deadly Sins』の略。7つの大罪と言う意味だ。

 

このテロリスト達が行う犯行は様々で、自爆テロや集団拉致、猟奇殺人事件など、イマイチ統一性が無いがテロ組織である事は『SDS』自身が公表している。

 

0課にいた時、何度も対峙しているのでこのテロリスト集団の事は良く知っている。

 

まぁ、だからと言って0課を離れた俺が今更何が出来るのかって話ではあるが……

 

「……姉ちゃんいいのか? そろそろ学校に行かなきゃマズい時間だろ?」


「――あっ!」


姉ちゃんは時計を確認すると、ドタドタと慌ただしい動きで準備をする。

 

手提げバッグに荷物を入れ、手早く化粧を済ませると……


「それじゃー行ってきます! お金置いといたからいつも通りお昼は好きな物食べてね!」

 

「はいよ……気をつけてな」

 

慌ただしい動きで家を出ていく姉ちゃんを見送る。カツカツ――っとハイヒールの音を鳴らして小走りで駅に向かう姉ちゃんの後姿を最後に、俺は再び寝室に戻る。

 

姉ちゃんが仕事に行っている間、俺は何をしているかと言うと……

 

ただ寝るかネットサーフィンをしているだけだ。

 

(はぁ……いつまでもこんな生活を続けているのもなぁ~。いくら姉ちゃんが気にしてないからって、いつまでもこんなニート生活送る訳にも行かないしな……)

 

なんとかニート生活を脱しようと思うも、これと言ってアイディアは出ない。

 

ここら辺じゃ中卒の俺を拾ってくれる企業も無いし、かと言って資格を取ろうにも何を……ってなるし、バイトは姉ちゃんがダメと言って聞かないから出来ない。

 

高校に通おうにも18歳じゃ遅すぎる……となると大学だろうか?

 

いや、それも厳しい。そもそも、12月上旬から高卒認定試験を受けるには遅い……正確には、高校生が習っている物が全く分からないから今から勉強して、試験を受けても、大学の入学試験を受けるには間に合わない。

 

ずっと裏社会で生きていたせいか、表の世界に戻ってきてから何も出来なくなってしまった……


(これからどうなるんだ?……俺の人生)


 不安と絶望が渦巻く中、俺は静かに眠りに落ちる。

いかがだったでしょうか? 一応、『ゆっくりハルト』という名前でyoutubeをやっておりまして、そこで投稿している『サバイバルゲーム』をベースに製作したお話です。見るに堪えない動画ですが、良かったらそちらの方もご覧ください!


面白いと思っていただければコメントやブクマ、評価のほうお願いします! 財布の中に500円しか入って無いと思っていたら、実は600円入ってたとき並みに喜びます。

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