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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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頂いた本の数々と初めてのお茶会

「うわあ、どれも読んだ事が無い本ばかりです」

「本当だ。これは凄い……」

 自分達にと渡された木箱の蓋を開けた途端、ぎっしりと詰まった背表紙の数々を見たマークとキムは言葉を無くして固まってしまった。

 レイも、執事が台車から降ろしてくれた木箱の蓋を開いて目を見開いた。

「公爵様、本当にこんな貴重な本を、しかもこんなに沢山頂いてもよろしいのですか」

 半ば呆然と言ったその言葉に、ディレント公爵は嬉しそうに頷いた。

「もちろんだよ。これらが其方達の研究の一助になるのなら喜ばしい事だ。言ったであろう。これらは全て、私の屋敷の書斎にあっても死蔵されて埃を被っているだけで誰の目にも触れる事は無い本ばかりだ。それは本にとってはとても不幸な事なのだよ。今、これを必要とする者達がいるのだ。それを読み、役立てる事が本の存在意義となる」

「ありがとうございます! 有り難く読ませていただきます」

 レイの喜ぶ声に、マークとキムも弾かれたように顔を上げて慌てたようにレイの隣に並んだ。そしてそのまま三人揃って両手を握り合わせて額に当て、その場に跪いて深々と頭を下げた。

「公爵様に心からの感謝と尊敬を。本当にありがとうございます」

 レイの言葉に、二人も改めてこれ以上下がらない所まで頭を下げた。

「うむ。構わんから立ちなさい。しっかり勉強するのだぞ」

 肩を叩かれ、三人はゆっくりと立ち上がって顔を見合わせた。それから歓声をあげて箱に駆け寄り本を何冊も取り出して見た。



「それじゃあ、これは全部ここに置かせて頂こう。そうすれば、俺達だけじゃなくレイルズや竜騎士隊の方々にも読んでいただけるものな」

「ああ、確かにそうだな。構わないよな?」

 隣で貰った本を確認していたレイが、その言葉に驚いたように顔を上げた。

「ええ、良いの? 持って帰ってくれて良いのに」

「まあ、時と場合によっては持ち帰らせてもらう本もあるだろうけど、基本はここに置かせて頂くよ。だって本部の会議室にあったら俺達しか読めないからさ」

「これは、どの一冊を見ても俺達如きが取り込んで良い本じゃ無いよ。それにここにあれば、古い本でも傷まないようにしっかりと管理もしてもらえるだろうからさ」

 全ての本棚の前には硝子のはまった扉がついていて、恐らく定期的に執事が扉を開けて換気もしているのだろう。埃の一つも見当たらないこの書斎は、古い本を管理するにも最適の場所だ。

「確かにそうだね。分かった。じゃあ一緒に置いてもらう事にするね。あ、ほら何してるの。ディーディー達も見てよ」

「良いの?」

 戸惑うようなクラウディアの言葉に、レイは笑顔で大きく頷いた。

「もちろんだよ。その為にここに来てるんだからね。遠慮せずに好きなだけ読んで。ほら早く」

 目を輝かせて駆け寄る三人に場所を開け、全員揃って手分けしてまずは頂いた本を机の上に積み上げていった。

 改めて積み上がった本の数々を見て、全員揃って歓喜の歓声を上げたのだった。



 その後、それぞれに好きな本を選び、午後のお茶の時間になるまで、文字通り全員が本を貪るようにして読みふけったのだった。

 ディレント公爵はそんな彼らを見て満足気に頷くと、書斎の隅に置かれた小さな椅子に座ったロッシェ僧侶とターシャ夫人のところへ行き、顔を寄せるようにして何やら声を潜めて話をし始めてしまった。




 午後のお茶は、公爵が持ってきてくれた豪華なお菓子を前に、当然公爵閣下やお目付役の二人も同席したので正式な手順で行われた為、マークとキムは何度も執事から注意を受けていたし、クラウディアとニーカも何度も困って執事の助けを求めていた。

 結局、レイとジャスミン以外は緊張のあまりせっかくのお菓子を味わう余裕も無く、初めての離宮での正式なお茶会は終了したのだった。



「うう、ここでの楽しみが……もっと自由に食べたいよお……」

 書斎へ戻った後もまだ情けなさそうな声でそう嘆くマーク達を見て、レイとジャスミンは困ったように顔を見合わせる。

「ねえ、一回ぐらいは自由にさせてあげても良いのではなくて?」

 ジャスミンの言葉に、しかし執事は黙って首を振った。

「皆様のためでございます。知識と技術、そして教養はいくらあっても決して邪魔にはなりません。せっかくの得た知識を実践する貴重な機会なのですから、こうやって出来る限り経験して、少しでも実感して覚えて頂くべきです」

「確かにそれはあるわね。いくら知識として知っていても、実感がなければ身には付かないもの」

 納得したジャスミンの言葉に、レイも苦笑いして頷き、マークの背中を叩いた。

「なんだってさ。ここでは頑張って覚えようね。ああ、それならこうしようよ。ここでは頑張る代わりに、後で本部の二人の部屋にお菓子をいっぱい届けてあげるからさ。それならお仕事しながらでも自由に食べられるでしょう?」

「ありがとうレイルズ〜お前はやっぱり良い奴だよ」

「うう、ありがとうなあ。俺は今日最後に頂いたリーフパイってのが美味しかったよ」

 レイに縋り付いて喜ぶマークの横で、キムは自分が唯一落ち着いて食べられた、葉っぱの形をした甘いパイをちゃっかりと希望しているのだった。

「あはは、了解。確かにあれは美味しいよね。僕も大好きだよ。でも、書類に破片を巻き散らかさないようにね。あれを食べるときは、お皿を出して食べる事」

「おう、忠告感謝するよ。確かに破片は絶対落ちそうだな」

 顔を見合わせて笑い合い、それから嬉しそうに手を叩き合った。



『なかなか様になっておったぞ。どうやら其方達だけの貴族のお茶会開催も夢ではなくなってきたではないか』

 机の上に現れた、からかうようなブルーのシルフの言葉に、悲鳴を上げたマークとキムが顔を覆って机の突っ伏し、同じく悲鳴を上げたクラウディアとニーカがジャスミンに左右から縋り付き、レイとジャスミンはそんな彼らを見て声を上げて笑っていたのだった。

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