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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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二人の実演

「それでは、我が軍が誇る第四部隊の精鋭達による精霊魔法の実演をご覧ください!」

 直立した司会役の士官の声が広場に響き渡る。

 進み出て来たのは、マークを中心に半径10メルトほど離れた位置で円陣を組む六人の竜人達だ。キムは一旦下がって、マークの真後ろの位置で掌を上にして、軽く離して胸の辺りまで上げて直立している。



「ライト!」

 その中の一人、指揮を取る竜人の少佐の声と同時に、円陣を組んだ竜人達の左右の手に光の玉が現れる。

 煌々と見事な輝きを放つ光の玉は、それぞれの手の上で右から左に、また左から右に、大きく山なりに飛んではぽんぽんと跳ね回っている。

 真ん中に立つマークが両手を合わせて手の中に巨大な三つの光を呼び出す。他の兵士達の光とは明らかに大きさが違う。



「ほう、彼は人間なのに、あれほど強い光の精霊を呼べるのか」

「彼はマーク伍長、第四部隊の期待の若者ですよ」

「素晴らしい」

 身を乗り出すオリヴェル王子の言葉に、アルス皇子が得意そうに説明する。



「フラッシュ!」

 少佐の声と同時に、マークの持つ光の球達が一際大きく輝く。その後、全ての光の球が点滅を始める。

 大きく前に差し出したマークの手の上で、まるでお手玉をするかのように点滅しながら交互に跳ね回る光の球はとても楽しそうだ。それを見たマークの顔に笑顔が浮かぶ。

 その時、後ろにいたキムの左右の手の上に20セルテほどの大きさの炎が現れた。

 大きく息を吸ったキムは、腹に力を入れて大きく叫んだ。

「受け取れ!」

 そのまま、両手の上にあった炎を、10メルト前に立つマークに向かって左右同時に手を大きく振って放り投げたのだ。

 まるでそこらの球を投げるかのように軽々と。

 赤い尾を引く炎の塊は、綺麗な放物線を描いて消える事なくマークの元に飛んでいった。



 マークはその声を聞くと同時に、光の精霊達を一旦上に大きく放り投げる。

 空いた手で、後ろを見もせずに投げられた炎を見事に左右同時にそれぞれに受け取ったのだ。まるで、炎がマークの手に吸い込まれて行くかのようだった。

 そこに光の球が落ちてくる。

 しかし、マークの手の中の炎は消える事なく燃え上がり続け、落ちて来た光の球達を炎の上昇気流で再び大きく上に飛ばした。



「ええ! 今、何をしたのだ!」

 思わず声を上げて中腰になるオリヴェル王子に、しかし周りの竜騎士隊の皆は平然としている。

「ほお、腕を上げたな」

「ああ、これは見事だ」

「完全に合成魔法を制御している。素晴らしい」

 マイリーとヴィゴが揃って感心する横では、アルス皇子も嬉しそうに、素晴らしい素晴らしいと繰り返している。

「アルス、今のは何だ? 一体何をしたら、何をしたら精霊の炎を消さずにあんな事が出来る?」

「オリー、良いから座って。まだあるから」

 にんまりと笑うアルス皇子を無言で見て、オリヴェル王子は座り直した。しかし、視線は目の前のマークとキムに釘付けだ。




 後ろにいたキムが手を叩くと、マークの手の中にあった炎が一瞬で消え、あちこちから感心したようなため息が漏れる。

 オリヴェル王子は、瞬きもせずに見つめている。

「この後は光の盾と矢を使った実演だ、そのあとも楽しみにしていると良い」

 アルス皇子の説明に無言で頷く。



 落ちて来た三つの光の玉をお手玉しているマークに、円陣を組んだ兵士達が向き直る。

 両掌で、光の玉達を包んだマークが大きく叫ぶ。

()でよ! 光の盾!」

 その瞬間、マークの両手に直径2メルト近くある二枚の光の盾が現れたのだ。

 大きく輝くその光の盾に、オリヴェル王子がまた息を飲む。



 竜の主ならばいざ知らず、ただの人間でこれほどまでに完璧に光の精霊魔法を扱える兵士を、王子は知らない。



 ゆっくりとそのまま左右に広げた手の中で、光の盾は消える事無く見事な輝きを放っている。

 竜人の兵士達が三人ずつマークの左右に分かれる。



「ライトニングアロー!」

 声と共にそれぞれの竜人の手に、細い光の矢が現れる。

「放て!」

 少佐の大声と共に、一斉に中心にいるマークに向かって光の矢が放たれる。

 会場のあちこちから堪えきれない悲鳴上がり、オリヴェル王子も目を見開いて立ち上がる。

 しかし、マークは平然とその全てを光の盾で受け止め、光の矢を尽く一瞬で、音も無く消滅させてしまったのだ。

 そのままマークが軽く手を打ち合わせると、瞬時に光の盾は消えて無くなった。



 静まりかえった会場から、大きな歓声と拍手が起こる。

 言葉も無く見ていたオリヴェル王子も、立ち上がって大きく拍手をした。



 全員直立して敬礼の後、竜人の兵士達は下がったが、マークとキムの二人は残ったままだ。

 また10メルトほど離れた位置で並んで立ち、正面に向かって一礼した後、お互いに向き合うように立つ。

 ちょうど正面に対して横向きに立った状態になる。



 再びマークの右の手には光の球が、キムの右の手には大きな炎が現れる。

「まさか……」

 食い入るように二人を見つめるオリヴェル王子の呟きの通り、頷き合った二人はまるで遊ぶかのように、互いの手にある光の玉と炎を同時に互いに向かって投げ合ったのだ。

 光の玉も炎も、消える事無く綺麗な放物線を描いて投げられ、受け止められた相手の手の中で一度跳ねた後に、再び同時に投げ返されてお互いの手の中に戻った。

 笑顔で頷き合った二人は、そのまま何度も手の中のそれを平然と、まるで遊んでいるかのように投げ合った。

 だんだん投げる速さが早くなり、投げ合いながらゆっくりとお互いに前進して1メルトほどの距離まで近付く。最後は互いに持っていたそれを手渡した。

 それぞれ、光の球と炎を手にしたまま正面に向き直り、深々と頭を下げたのだ。

 ふわりと浮き上がった炎は、キムの頭上2メルトほどの高さ留まりでしばらく燃えていたが、やがてゆっくりと消えていった。

 同じく浮き上がった光の球も、炎と呼吸を合わせるかのようにゆっくりと消えていった。




 静まりかえった会場から、今までで一番大きな歓声と拍手が沸き起こった。

「見事であった!」

 声と共に立ち上がったオリヴェル王子だけでなく、竜騎士隊の全員が立ち上がって大舞台での大役を見事に果たした二人に、惜しみない拍手を贈ったのだった。

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