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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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晩餐会と懇親会

 その夜、紅玉(ルビー)の間にて開催された晩餐会は、陛下やマティルダ様、両殿下を始め錚々たる顔ぶれが揃った大規模なもので、晩餐会自体、正式な紹介を受けてから初めてだったレイとカウリは、表面上は平然としていたが、二人とも内心では相当焦ったり慌てたりして、何度もスプーンやフォークを飛ばしたり間違えたりしそうになって、それぞれの知識の精霊達に何度も助けられていた。



 一番最初に、陛下の挨拶の後、オリヴェル王子とティア姫の無事の到着を精霊王に感謝して全員起立して乾杯をした。

 それから、次々に出てくる見事な料理の数々に舌鼓を打ちつつ、あちこちで和やかに会話は交わされていた。



 国を守る精霊竜の伴侶である竜騎士達は、席順としては皇族の次、つまり貴族達の中では最上位の席順となる。皇族と並んで座っているその竜騎士達の中では一番端の末席の二人だったが、全部の席から見れば、明らかに上から数えた方が早い位置だ。



「今の自分が座ってる席順を考えると、正直言って怖くなるな」

 綺麗にナイフを使って骨付き肉を切りながら、苦笑いしたカウリが小さく呟く。

「僕もそう思う。だけどさ、僕は一人じゃなくって、ブルーと一緒に座ってるからここにいても良いのかな、とも思ってるよ。まあ……やっぱり分不相応だとは思うけどね」

 そう言いつつ、肉を見る振りをしながらチラッと目線をやったのは、血統至上主義であるリューベント侯爵夫妻だ。当然座る席順はレイよりも下になっている。

「出来る事なら、変わってやりたいってのになあ」

「そうだよね、あんな目で睨まれてもどうしようもないのにね」

 小さくため息を吐いたレイも、小さな声でそう答える。

『放っておけば良い。隠れて吠える程度の事しか出来ぬ愚か者達だ』

 あまりに辛辣なブルーのシルフの言葉に、見習い二人が揃って小さく咳き込む。慌てて誤魔化す様に一礼して、それぞれワインを口にした。



 緊張しかない晩餐会が終わる頃には、見習い二人は本気で倒れる寸前に疲れ切っていた。

「はあ、座ってるだけなのに、ここまで消耗するって……」

「同意しかありません。でもこの後、懇親会があるんだよ。演奏するんだよ」

「勘弁してくれ〜」

 情けない内緒話をしている見習い二人を、後ろから誰かが背中を叩く。

「こら、情けない事を言うでないぞ。ほら、しっかりせんかい」

 ディレント公爵夫妻が笑って立っていて、二人は慌てて背筋を伸ばした。

「そうだ、常にそうしていなさい」

 笑顔で頷く公爵にもう一度背中を叩かれて、声なき悲鳴を上げた二人だった。




 懇親会の開催される別室に順番に通されたが、レイとカウリはここでようやく一息つける様になった。

 確かに、この場の主役はオリヴェル王子であり、アルス皇子だ。

 そして竜騎士隊の中では、当然の様に結婚を控えた若竜三人組に人が集まり、他の者達は、比較的のんびりと落ち着いて挨拶回りをする事が出来た。

 レイも、あちこちで一生懸命挨拶をして周り、合間に少しくらいはお菓子を食べる事が出来た。

「まあまあ、あんなに食べてまだ食べられるの?」

 端っこで、一口サイズのカスタードタルトをいただいていると、背後から笑みを含んだ声で話しかけられて、レイは慌てて背筋を伸ばした。

「マティルダ様。大丈夫なんですよ。甘いものは別腹と申しましてな」

 少しそっくり返って態とらしくそう言うと、マティルダ様を始め、周りにいた女性達がコロコロと扇を口元に当てて笑った。

「貴方は相変わらずね。初めての晩餐会はどうだった?」

 小さな声でそう聞かれて、レイは情けなさそうに眉を寄せた。

「正直言って、座ってるだけで、あんなに疲れたのは生まれて初めてでした」

 その言葉にまた皆が笑う。しかし、その笑いはとても優しい笑いだった。

「とても上手に振る舞えていましたわ。レイルズ様は、もっとご自分のなさる事に、自信をお持ちになっても良いと思いますわよ」

 後ろで控えていた伯爵夫人にそう言われても、はい、そうですねと返せる訳もない。

「ありがとうございます。もっと自信を持てる様に、いろんな事を勉強します」

 なんと答えたら良いのか分からずに困っていると、ニコスのシルフ達が教えてくれる。そう答えると、笑顔のマティルダ様に頬を撫でられた。

「それはそうとまた背が伸びたみたいね。そろそろ、本当にヴィゴと同じくらいになるのではなくて?」

 実を言うと、もうレイルズの身長は竜騎士隊の中ではヴィゴに続く高さになっている。しかし、体格的にまだまだ未成熟な為、それほど大きい様には見えないのだ。

「レイルズは、もう私より大きいですよ」

 マイリーの声に、マティルダ様が驚いた様に目を瞬く。

「ほら、こっちへ来て並んでごらん」

 言われて、マイリーと背中合わせに並んで見せる。

 レイが手を伸ばして頭を押さえて見せると、周りから小さなざわめきと笑いが起こった。

「まあまあ、本当だわ。すごいわね。初めてここに来た時って、確かタドラよりも小さかったわよね?」

「はい、そうです。一番小さかったです」

「それが二年ほどで、二番目にまで大きくなるなんてね」

「成長期、恐るべし。ですね」

 苦笑いするマイリーに、レイは笑って首を振った。

「でも、まだ竜騎士隊の人から、一本取った事が無いんです」

「まあ、そこはそう簡単に見習いに負けるわけにもいくまい? こちらにも先輩の意地があるからな」

「うう、悔しいです」

「目標は、ヴィゴから一本取る事なんだろう? 期待してるぞ。是非あいつの鼻っ柱を叩き折ってやってくれ」

「百年かかっても出来る気がしません」

 またしても眉を寄せて口を尖らせるレイルズを見て、周りは優しい笑いに包まれるのだった。




「では、準備がありますので失礼します」

 背中を叩かれ、一礼してそのままマイリーと一緒に下がる。

「そっか、演奏するって言ってましたね」

 裏へ廻り、準備されていた竪琴を見て笑顔になる。

 竪琴の上には、ブルーのシルフが座って手を振っている。

「一応、もう一回調弦を確認するから、そこをどいてください」

 椅子に座りながらそう言い、右肩に座ったブルーのシルフにキスを贈ってから、竪琴を手にするのだった。


『楽しみ楽しみ』

『素敵な歌声』

『楽しみ楽しみ』

『優しい音色』


 そろそろ集まって来た竜騎士達が、それぞれの楽器を準備し始める。

 それを見て、呼びもしないのに集まって来たシルフ達は、楽しそうに笑いながらあちこち飛び回ってはキスを贈ったり、弦を弾く振りをしたりして大喜びで遊びまわっているのだった。

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