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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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午前中の予定とお弁当準備

「えっと、出発は昼前なんだよね」

 用意された朝食を綺麗に平らげたレイが、カナエ草のお茶の入ったカップを手に自分の右隣に座るルークを見ながらそう尋ねる。

「おう。もう今日の俺達の予定は、あとはもうオルダムへ向けて出発するだけだよ」

 同じくカナエ草のお茶を飲んでいたルークの言葉にレイは笑顔で頷いてから、左隣に座るタキスを見た。

「じゃあ、午前中は畑仕事でも手伝おうかな。それとも、上の草原で家畜達にブラシをかけてあげる方が良いかな?」

 レイの言葉に、紅茶を飲みかけていたタキスが驚いた様に手を止めて、カップを置いてから首を振ってレイを見た。

「ゆっくりしてくれて構いませんよ。家畜達のお世話や畑の世話はロディナの皆さんがやってくれますからね」

「ええ、そんなの何もしない方が僕にしたら退屈だしつまらないよ。じゃあ最後だし、上の草原でもう少し子竜達と遊んでこようかな」

「ああ、それはいいですね。でも遊びすぎて疲れて居眠りこけて、蒼竜様の背中から落っこちたりしては大変ですから走り回るのは程々でお願いしますよ」

「あはは、飛んでいるブルーの背中から落っこちたら大変だね。じゃあ程々で遊ぶ事にするね」

 ブルーの背の上で寝たりしないと一瞬言いかけたレイだったが、笑っているタキスを見てすぐにこれは自分の苦手な比喩だと理解して、小さく吹き出しながらそう答える。

『そうだな。飛んでいる最中にレイを落っことすのは、我もできれば避けたいものだな』

 現れたブルーの使いのシルフが空っぽになったお皿の横でそう言いながら笑っているのを見て、タキスも小さく吹き出してからレイと顔を見合わせて揃ってもう一度吹き出したのだった。



「ほら、最後だしもうちょっと遊ぼうか」

 食事の後、ニコスに頼んで子竜達のおもちゃ用の材料用に置いてあるのだという、古い布や千切れたロープや紐などが入った木箱をもらい、タキスとギードにも手伝ってもらって大急ぎでおもちゃを作ったのだ。

 途中、興味津々の陛下が自分も作ってみたいと言い出し、急遽陛下にも参加してもらって追加のおもちゃを作ってもらったりもしたのだった。

 無事におもちゃが仕上がったところで、そのまま陛下も一緒に全員揃って上の草原へ向かった。

 すでに、ロディナの人達やアンフィーが家畜達や騎竜達を上の草原へ連れて上がってくれていたので、良いお天気の草原では、ロディナの人達が交代しながら家畜やラプトル達にブラシをかけてくれている。

「あはは、君たちは目敏いですねえ。僕らがおもちゃを持っているって分かるの?」

 かなり大きくなったとはいっても、まだまだ小さな体のシャーリーとヘミングが、レイ達を見つけて嬉々として駆け寄ってきた。

 しかも、レイだけでなく陛下の前にも陣取りキュウキュウと甘えたような鳴き声を上げて飛び跳ねている。

「どうやら早く投げろと催促されているようだな」

 苦笑いした陛下が、胸元から先ほど作ったおもちゃを取り出して見せる。

「ウキュウ!」

「キカカカキュウ!」

 目を輝かせたシャーリーとヘミングが、それそれ! と言わんばかりに鳴いてさらに大きく飛び跳ねる。

「分かった分かった。そう急くでないわ」

 呆れたように笑った陛下が、二匹の目の前におもちゃを持っていき、わざとゆっくりと目の前で振ってから大きく振りかぶって一気に放り投げる。

 弾かれたように二匹がそれを追いかけるのを見て、陛下が声を上げて笑う。

 シルフ達におもちゃを弾かれてさらに追いかけ、そこから草原いっぱいを使った追いかけっこが始まったのだった。

「こらこら、無茶しないでくれよな」

「段差につまずいて怪我でもしたらどうするんだって」

 夢中になって走り回る子竜達を見てブラシをかけていた何人かが慌てたようにそう言いながら立ち上がって走って行き、つまずく危険のある大きな石の横や、地面に段差がある部分などの前に立ち、腰のベルトに取り付けていた警告の鈴がついた小さな棒を構えたのだった。



 ルークやヴィゴも加わり楽しそうに子竜達と遊ぶ一同を見ていたニコスは、タキスに声をかけてから足早に坂道を降りて一人で家へ戻った。

 レイ達に持って帰ってもらう、昼食のお弁当を用意する為だ。

 一応、料理人からお弁当用の材料は一通り準備してありますと言われているのでそれを使うつもりだが、チーズと燻製肉と生ハムは、ここで作ったものを使う予定だ。

 それから今回は、いつも使っている丸パンや雑穀パンだけでなく、ここにいる料理人達にレシピと自家製酵母の入った瓶を預けておいて焼いてもらった、黒パンもお弁当に使うつもりだ。

 陛下は間違いなく黒パンをご存知ないだろうし食べた事もないだろうから、そこはレイに説明を頼む事になるが、せっかくの機会なので、市井の、特に貧しい者達が食べているものの一端を知ってもらいたいとのニコスの願いからだ。

 汚れた服を着替えてしっかりと水場で手を洗ったニコスは、まずは地下の食糧庫へ行き自家製チーズと燻製肉や生ハムの塊をカゴに入れて台車に積み、それを調理室に運ぶ。

 タキス達とアンフィーだけの普段の料理なら居間の台所で全て行っているが、今回のように料理人の人達が大勢来てくれている時には、普段は使っていない昔は食堂だった場所にある広い調理場を使ってもらっている。

 ここなら食堂だった場所も、配膳準備に使ってもらえるからだ。

「ああ、ニコスさん。黒パン、焼き上がっていますよ!」

「ニコスさん! この黒パンのレシピって、貰って行っても構いませんか?」

 台車を押して入ってきたニコスに気付いた料理人達が、満面の笑みでそう言いながら駆け寄ってきて荷下ろしを手伝ってくれる。

「俺、美味しい黒パンなんて初めて食べました!」

「焼き上がったのを試食して、冗談抜きで感動しましたよ」

「あれってやっぱり、酵母菌の違いですよね。あの、代価は払いますのであの酵母菌も分けていただけませんか!」

「お願いします!」

 目を輝かせて口々にそう言って頭を下げる料理人達に取り囲まれてしまい、ニコスはあまりの予想外の出来事に驚いて咄嗟に返事が出来なかった。

「や、やっぱり駄目ですよねえ」

「厚かましいお願いでした」

「レシピだけでなく、酵母菌まで欲しいなんてわがまま言って申し訳ありません!」

 若干涙目になりつつ何人もに慌てたようにそう言って謝られてしまい、ニコスはとうとう我慢出来ずに吹き出してしまった。

「もちろん、あのレシピは持ち帰っていただいて大丈夫ですよ。是非、美味しい黒パンを普及させてください。使っていただいた酵母菌もまだありますから大丈夫です。あれは瓶ごとお譲りしますのでこちらもお持ち帰りください。ああ、薬草庫に別の酵母菌も幾つか育てていますから、あれも別の瓶に入れてお渡ししましょう。酸味が違いますので、同じレシピでも味が変わりますよ。よければお使いください」

「ありがとうございます!」

 全員から歓喜の声と共にお礼を言われて、もう笑うしかないニコスだった。

 そのあとは、皆に大注目されながらいつものお弁当を作る羽目になり、もう諦めて途中からはニコスが指示をして一緒に作ってもらったのだった。



挿絵(By みてみん)

2026年4月10日、TOブックス様より発売となります「蒼竜と少年」第二巻の表紙です。


イラストレーター様は、第一巻に引き続きKaworu様が、今回も素敵な世界とキャラクター達を描いてくださいました!

あの、エイベルがついに登場です!

どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m

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