賑やかな夕食
「じゃあ、食材を運んでくるね!」
焼き台の設置が終わり、ロディナの人達が手分けしてカトラリーやお皿の準備をしてくれているのを見たレイは、笑顔でそう言って家へ駆け戻って行った。
「レイルズ様! あとは我らがしますので、どうぞお座りになって待っていてください!」
それを見て、慌てたアンフィーがレイの後を追いかけて引き止める。
「ええ、僕にも手伝わせてよ〜〜」
「いえいえ、我らがやりますので!」
顔を見合わせてそう言った二人がほぼ同時に吹き出す。
アンフィーをはじめとするロディナの人達はずっとギードの家にいてこっちにはきてくれなかったので、アンフィーとレイは、ここに帰ってきてから初めての顔合わせだ。
小さく笑って軽く咳払いをしたアンフィーが、居住まいを正してレイに向き直る。
「レイルズ様、このような場で申し上げるのは少々何ですが、おめでとうございます。ますますのご活躍をお祈りさせていただきます。その真っ白な竜騎士様の制服が、本当にとてもよくお似合いです。ここに到着なさった際にお見かけして、実はちょっと感動のあまり泣いてしまいました」
最後は誤魔化すように笑ってそう言い目を潤ませるアンフィーの言葉に、一瞬目を見開いたレイはこれ以上ないくらいの笑顔になった。
「ありがとうアンフィー。まだまだ未熟者だけど頑張るから見ていてね。それから、ここでのタキス達をいつも助けてくれて本当に感謝してるよ。改めて、これからもよろしくお願いします」
「お、恐れ多いです」
改めてレイにそう言って頭を下げられて、慌てるアンフィーだった。
そのあと、ギードも来てくれたのでアンフィーとギードと一緒に石の家へ行き、廊下に並べられていたワゴンに積み上がっている準備の出来た食材を手分けして外に運んだレイ達だった。
「おお、これは素晴らしい」
シヴァ将軍とシルカー伯爵と共に陛下が外に出て来て、準備万端整った庭を見て笑顔になる。
広い庭の真ん中に大きな焼き台が二台並べられていて、どちらの焼き台にもすでに大きな肉や野菜が並べて焼き始められている。
その焼き台を挟んで左右に大きなテーブルと椅子が並べられていて、タキス達の家側に置かれたテーブルには、真っ白なテーブルクロスがかけられている。
「どうぞこちらへ」
控えていた執事の案内で陛下が椅子に座り、その左右にシヴァ将軍とシルカー伯爵、ルークとヴィゴが座る。
陛下が座っているのは家側なので、テーブル越しに焼き台が正面に見える位置だ。
そのテーブルを挟んだ向かい側には、レイとタキス達が並んで座る。
ギードの家側に並べられたテーブルには、アンフィーをはじめとするロディナの人達が並んで座った。
以前、アルス皇子がいた時には、ブレンウッドのドワーフギルドの人達が来ていて焼き台の管理をしてくれたのだが、今回は執事達がやってくれるのでアンフィー達も座っていられる。
「では、まずは乾杯だな」
陛下の言葉にワインの栓が抜かれ、用意されていたグラスに注がれる。
全員がグラスを手に立ち上がったのを見て、陛下は笑顔で手にしていたグラスを掲げた。
「精霊王に感謝と祝福を、そして働き者の皆にも心からの感謝を」
笑顔の陛下の乾杯の言葉に、一瞬目を見開いたロディナの人達から歓声が上がる。
レイも満面の笑みで乾杯したのだった。
「おお、これが私が引いたニンジンだな」
最初の一皿目は執事達が取り分けて陛下の前に用意されたのだが、焼いた肉の横に薄切りにして焼いたニンジンが添えられていて、それを見た陛下が笑顔になる。
「うむ、とても美味しい」
肉よりも先にニンジンを食べた陛下は、笑顔で何度も頷く。
「では、いただきます」
笑ったシヴァ将軍とシルカー伯爵も、肉よりも先にニンジンを食べて笑顔で頷いている。
「ふむ、ここのニンジンは焼いただけなのにとても甘いな。何が違うのだ?」
口の中のものを飲み込んだ陛下が、お皿に残るニンジンを見つめながら不思議そうにそう呟く。
「おそらくは品種の違いと、あとは土の違いでしょう。作物は、同じ種を使っても育てた場所やその時の環境によって出来が違ってきますから」
「そうなのか。種を植えればどこでも同じに育つのだと思っていたが、そこまで違いがあるのか?」
「かなり違いますね。あくまで個人的な意見ですが、この蒼の森で収穫する野菜は、普段ロディナで食べているものよりもどれも格段に美味しいですよ。おそらく土が違うのでしょうね」
しみじみとしたシヴァ将軍の言葉に、陛下だけでなくシルカー伯爵までが驚いている。
「失礼します。この地はノームの祝福を強く受けておりますので、例えば農作物につく虫の被害や病気の被害も最小限で済みます。作物の出来が良いのは、そういった事も関係しておるのかもしれません」
一礼したニコスの説明に、そういった事に関しては全く無知な陛下は、驚きつつも感心して足元の地面を見る。
すると、何人ものノームが現れて笑顔で陛下に手を振り、何度も頷いてから次々に消えていった。
「成る程。そういう事もあるのか。羨ましい限りだな」
笑顔でそう言い、空になったお皿を手に立ち上がる。
「せっかくだから、自分で取らせてくれ」
進み出た執事に首を振った陛下は、そう言って嬉々として焼き台に駆け寄り肉をとり始めた。それを見て、シヴァ将軍だけでなくルークとヴィゴ、レイまでが揃って吹き出し同じく空のお皿を手に立ち上がって焼き台に駆け寄る。そして陛下と並んで、焼けたお肉の取り合いっこを嬉々として始めたのだった。
陛下が来たのを見て慌てて焼き台から下がったロディナの人達は、まるで子供のように笑いながらお肉の取り合いをする陛下やレイ達を見て、揃って呆然としていたのだった。




