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朝練の前に

「ああ、もう! またやられた〜〜〜!」

 ベッドから起き上がったレイの叫びに、集まっていたシルフ達が大喜びで手を叩き合って笑っている。

「レ、レイルズ様……とにかく、洗面所へ……今、増援を、呼んで参り、ます……」

 笑い過ぎて呼吸困難になったラスティが、そう言ってレイを洗面所へ押しやってからふらふらになりつつ部屋から出ていく。


『やった〜〜〜!』

『悪戯大成功〜〜!』

『成功成功!』

『もぎゅもぎゅだもんね!』

『もぎゅもぎゅだもんね!』

『ね!』

『ね〜〜〜!』


「だからもぎゅもぎゅって何!」

 洗面所で頭を押さえたレイの叫びに、揃って吹き出してからまた大喜びで手を叩き合うシルフ達だった。



「相変わらず、レイルズの髪はシルフ達のおもちゃになっているみたいだな」

「って事で、今朝の芸術作品を見学に来たよ〜〜」

「はあい、僕もいま〜す」

 その時、開けっぱなしになっていた部屋の扉からルークとロベリオ、それから笑顔のティミーが顔を覗かせた。

 そして彼らの背後には笑いを堪えたヴィゴとマイリーとカウリ、それからユージンとタドラが並んでいる。

 当然、全員が白服姿で準備万端だ。

「うわあ、もうそんな時間なんですか! ちょっとだけ待ってください!」

 まだ戻ってこないラスティを大人しく待っていたレイが、慌てたようにそう言って洗面所から顔を出す。

 その瞬間、全員揃って思いっきり吹き出した。

「ちょっ! お前、何がどうなってるんだよ。その頭!」

「ぎゃはは。これはまた凄い!」

 ルークとカウリの笑う声と二人の執事を引き連れて戻ってきたラスティを見て、もう一回揃って吹き出す竜騎士達だった。



「はあ、何とか無事に元に戻りました! 着替えるのでもう少しだけお待ちください!」

 しばらくしていつものふわふわな髪に戻ったレイが洗面所から駆け出してそう言うと、適当に椅子やソファーに座って待っていた皆がまた揃って吹き出す。

 何しろ、ベッドサイドに戻ったレイは、皆がいるのも気にせず一息に夜着を脱いで下着だけになったのだ。

 それを見て笑ったカウリが立ち上がり、黙ってまだ開けたままになっていた扉を閉めてくれた。

「大変お待たせしました!」

 大急ぎで白服に着替え、ラスティが用意してくれていた訓練用の柔らかな革靴を履く。

「よし、じゃあ主役の準備が出来たみたいだから行くとしようか」

 笑顔のルークの言葉に、皆も立ち上がる。

 アルス皇子は奥殿から直接、朝練を行う訓練場へ来るので、ここにはいない。

 今朝もレイを先頭にしていつもの朝練を行う訓練所へ向かった。



「おはようございますレイルズ様!」

「おはようございます! 今朝もご一緒させていただきます!」

 駆け寄ってきたマークとキムが、レイのすぐ前で揃って直立してそう言って敬礼する。

「うん、おはよう。じゃあまずは準備運動からだね」

 笑顔のレイの言葉に二人も頷き、手分けしてまずは準備運動を始めた。

 今朝は、いつもはロベリオ達と一緒に別室へ行くティミーもここで一緒に準備運動をしている。

 そこへちょうど白服姿のアルス皇子もやって来て、マイリー達と一緒に準備運動を始めた。

「ねえティミー。思っていたんだけど、もしかしてまた少し背が伸びた?」

 ロベリオと並んで屈伸しているティミーを見て、レイがふと思いついたようにそう尋ねる。

「はい! 前回測った時より6セルテも伸びました! 実は、成長痛が酷くて眠れなくて、一時期はちょっと寝不足になったんです。今はハン先生にお願いして痛み止めを定期的にいただいているので、少しはマシになりました!」

 胸を張った嬉しそうなティミーの言葉に、レイも笑顔になる。

 まだ横幅の方が全然なのでひょろっとした印象を受けるが、確かに最近だけでもかなり伸びているだろう。

「これでようやく身長の方は、僕の年齢の平均に近いくらいにまで伸びましたね。でも、体重の方はまだ全然です。筋肉以前にもう少し太りたいんですけど、今のところ成長分は全部身長に回っているみたいですね」

 残念そうにそう言って、腕を上げて軽く曲げて見せる。

 レイならここで筋肉がグッと盛り上がるが、残念ながらティミーの細い腕には筋肉はほとんどついていないのでほぼ変化無しだ。

 自分の、女性のような細くて柔らかな腕を見てティミーが悔しそうな顔でため息を吐く。

「大丈夫だよ。僕も成長が始まった頃は背ばかり伸びて体重が全然増えなかったからね。でも頑張って鍛えていると、ある時からグッと筋肉がつき始めたんだ。だから絶対にティミーも大きくなれるよ」

「それなら嬉しいです。じゃあ運動や訓練も、もっと頑張ります!」

「うん、でも無理は駄目だからね」

 笑顔で手を叩き合うレイとティミーを竜騎士達は揃って笑顔で見つめていたのだった。



「では失礼します!」

「勝ち抜き戦、頑張ってください!」

 一通りの準備運動と走り込みを終えたところでまた直立したマークとキムが笑顔でそう言い、改めて敬礼してから仲間達のところへ戻って行くのを笑顔で見送ったレイは、まずはいつもの棒を手にルークと軽く手合わせをしてもらった。

 しっかり体が温まったところで、カウリが用意してくれた棒状のクジを引く。

 棒の先端に数字が書いてあるのでこの数字の順番に対戦するのだ。

 手にした棒を見せ合い、誰が一番だと言って笑い合っていたレイは、案内役の兵士に連れられたタキス達がやって来た事に、まだ気が付いていないのだった。

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