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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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神殿へ

「お待たせしました!」

 着替えを終えて休憩室に戻ったレイは、その場に直立して大きな声でそう言った。

 しかし、何故か全く反応が無い。

「あれ?」

 首を傾げつつ見てみると、アルス皇子を含めた全員が無言で自分を見つめている。

 しかも、さっきはいなかったティミーとジャスミンとニーカの姿もある。

 しかし、三人もポカンと口を開けたままで揃って固まっている。

「えっと……」

 予想外の反応にどうしたらいいのか分からずそう呟くと、小さな笑い声が起こった後に何故か拍手が起こった。

「レイルズ様! すっごく格好良いです!」

 目を輝かせたティミーが一番に口を開く。

「レイルズ素敵よ! これはディアがどんな反応をするか楽しみね!」

「レイルズ素敵! 本当ね。ディアがどんな反応をするか私も見てみたい!」

 そして、手を取り合ったジャスミンとニーカも、目を輝かせながらそう言って甲高い歓声を上げた。

「うわあ、これは予想以上だな」

 呆れたようなルークの呟きに、首がもげそうな勢いで若竜三人組が揃って頷いている。

「あの体格にこの制服を着れば見栄えするだろうとは思っていたが、成る程。赤毛のせいでさらに見栄えしているわけか」

「いやあ、これは本当に予想以上だ」

「レイルズ、すっごく格好良いよ!」

 ロベリオとユージンの呟きに続き、まだ拍手をしていたタドラが目を輝かせてそう言ってくれる。

「あ、ありがとうございます」

 格好良いと言われて嬉しくなったレイが、少し恥ずかしそうにそう言って笑う。

「いやあ確かにこれは予想以上だな。今夜の夜会でのご婦人方とお嬢様方の反応が楽しみだねえ」

 腕を組んだカウリの呟きに、アルス皇子と大人組は揃って吹き出していた。

「レイルズ様! おめでとうございます!」

「レイルズ、おめでとうございます!」

「レイルズ、おめでとうございます!」

 満面の笑みのティミーとジャスミンとニーカの声が重なる。

「ありがとうございます」

 こちらも満面の笑みになったレイが嬉しそうにそう言い、三人と順番に手を叩き合った。

 ここからは竜騎士としての正式な務めになるので、見習いのティミー達とはここでお別れだ。

「じゃあ行こうか。まずは精霊王と女神オフィーリアの神殿に順番に参って祝福を受けるんだからな」

 笑ったルークの言葉に、笑顔で大きく頷いたレイだった。



 アルス皇子を含む竜騎士隊の皆と一緒に、まずは精霊王の別館へ向かう。

 移動距離としては大した距離では無いが、ここは歩きではなく全員揃ってラプトルに乗っての移動だ。

 しかも普段は整列して移動する際には一番後ろに並ぶレイだが、今日は主役である為に、ルークに言われてついた位置は、何とアルス皇子のすぐ後ろ。つまり先頭から二番目の立ち位置だ。

 慣れない視界に戸惑いつつも、ゼクスの背の上で必死になって背筋を伸ばしていたレイだった。

 到着した精霊王の神殿でラプトルを預け、まずは礼拝堂にある精霊王の祭壇に正式な作法で参拝して蝋燭を捧げる。

 これは正面の祭壇にある精霊王だけでなく、十二神それぞれの像にも順番に蝋燭を捧げて周りそれが終われば改めて精霊王の前で剣を抜いて跪いて祈るのだ。

 今日、叙任式がある事はこの場にいる全ての人達が知っているので、竜騎士達が順番に正式な作法に則って参拝するのを目を輝かせて見学していた。

 真っ白な制服を着たレイは、もう礼拝堂にいた人達全員からの大注目を浴びてしまい、予想以上の大注目っぷりに参拝で跪いたレイはこっそりため息を吐いていたのだった。

「うう、予想以上の大注目だよう」

 思わず小さな声で呟くと、苦笑いしたルークに無言で背中を叩かれた。

 さすがに竜騎士達が全員揃っている状態で声をかけて来る猛者はいなかったようで、そのまま顔見知りの神官に案内されて広い応接室に通される。

 以前、カウリの叙任式の際に見たのと同じように、真ん中に大きな座り心地の良さそうな椅子が置かれ、その後ろに見覚えのあるソファーが並べられていた。

 今回は、当然真ん中の椅子に座るのはレイだ。

 神官に勧められてレイがその椅子に座ると、それを見てから竜騎士達もソファーに分かれて座った。

 応接室の壁際に整列していた先頭の見習い神官達三人が進み出てレイの正面の少し離れた位置に立ち、その場に並んで跪き両手を握って跪き深々と一礼する。

 そして決められた祝いの言葉を述べてから立ち上がり、最後に祝福の印を切って下がる。

 レイは特に何も言わずに軽く座ったままで一礼するだけでいい。

 しかし、見習い神官と三位の神官は数名ずつなのですぐに終わるが、二位の神官以上は一人ずつの挨拶となるのでとにかく時間がかかる。

 途中ちょっと飽きてきたレイだったが、そんな様子は全く見せずに終始笑顔で祝福の言葉を受けていたのだった。



 ようやく全ての神官達からの挨拶が終わったところで、早々に女神の神殿の別所へ全員揃って移動する。

 もちろん近いが、ここもラプトルでの移動だ。

 到着した女神の神殿の分所でも、女神像とエイベルの像にこれまた正式な参拝を行う。

「エイベル、今日は僕の叙任式なんだよ。本当に夢みたいだ。でも、まだまだ一人前には程遠いと思うからさ。もし、僕が間違ったり迷いそうになったら、またあの時みたいに助けてくれたら嬉しいな。それから、タキスがオルダムに来てくれているんだよ。もう会ったかな?」

 跪いて頭を下げ、こっそりと友達として話しかける。

 笑ったエイベルの顔を思い浮かべ、レイも笑顔で顔を上げて立ち上がった。

 そして、今装備しているミスリルの剣を軽く引き抜いてから力一杯戻す。

 軽やかなミスリルの音がして、周りにいたシルフ達が一斉に喜んで手を叩いたり、クルクルと回って大はしゃぎしている。

 そんな彼女達を見て小さく笑ったレイは、一つ深呼吸をしてから来てくれた僧侶の案内で別室へ移動して行ったのだった。

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