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いってきます!

「おはよう! 皆早いね」

 ラスティの案内で朝食を用意してくれている部屋に行くと、そこにはすでに身支度を整えて座っているタキス達がいて、レイは目を輝かせて挨拶をした。

「おはようございます。いよいよですね。レイの晴れの舞台を見たくて、早く目が覚めてしまったんですよ」

「おはようレイ。俺も夜明け前から目が覚めて、ベッドに横になってひたすら数を数えていたよ」

「おはようレイ。ワシなんぞ、夜明け前の空に輝く明けの明星を眺めながら一杯やっておったぞ」

 笑ったタキスに続き、ニコスとギードも笑顔でそう言って揃って肩をすくめていた。

「あはは、皆揃って駄目だよ。寝不足で、肝心の時に観覧席で居眠りしないでよね」

「本当ですね。気をつけましょう」

「全くだ。頑張って寝ないようにしないと」

「ワハハ、全くじゃわい」

 椅子に座ったレイの言葉に三人がそう言いながら揃って吹き出し、顔を見合わせてもう一度揃って吹き出したのだった。



「おはようございます。ではこちらをどうぞ」

 そんな話をしている間に、アルベルト達が手早く朝食の準備を整えてくれた。

 今朝は、大きめのお皿にさまざまな料理が綺麗に盛り付けられている。どれも食べやすいように小さく切ってあるのでタキス達でも苦労せずに食べられそうだ。

「いつもありがとうね。これなら作法を気にせずに食べられるね。じゃあいただこうか」

 それを見たレイが嬉しそうにアルベルトにお礼を言い、それぞれ笑顔で頷き合ってしっかりと食前のお祈りをしてから食べ始めた。

「えっと、今日のタキス達はどうするのかな。僕は食事が終わったらもう本部へ行かないといけないんだけど、大丈夫?」

 食後のカナエ草のお茶に蜂蜜を入れながら、レイがそう言って控えていたラスティを振り返る。

「はい。今おっしゃられたように、レイルズ様はお食事が終わりましたら本部へ行っていただき、そこで今日の準備をいたします。タキス様方は、午前中はこちらでゆっくりしていただき、早めの昼食をお召し上がりいただいた後に叙任式の会場となる花祭り広場へ向かいます。もちろん、この移動には屋敷から馬車を出しますのでそちらに乗って行っていただきます。観覧席は、関係者用の特別席がございますのでそちらにお座りいただきます。これならば、周りは竜騎士様の直接のお身内の方々のみとなりますので、不要な注目を集める事は無いかと思われます」

 ラスティの説明に、すでに詳しく今日の予定を聞いているタキス達も笑顔で頷いている。

「そうなんだね。じゃあタキス達の事はよろしくお願いします。はあ。僕、ちょっと緊張してきたかも」

 苦笑いしたレイが胸を押さえて大きなため息を吐くのを見て、ラスティは困ったように笑っていたのだった。



 食事を終えて一休みしたところで、レイはいつもの赤い竜騎士見習いの制服を着てラスティと一緒に屋敷の外へ出た。

 当然のようにタキス達が、執事達と一緒に見送りに出てきてくれる。

「その、赤い制服を見るのは今が最後だな。次に会う時は、ルーク様方と同じ真っ白な制服になるんだよな」

 笑顔のニコスの言葉に、レイも満面の笑みで頷く。

「そうだね。次に会う時にはもう見習いじゃあなくて竜騎士の制服だから、あの真っ白な服になるね」

「楽しみにしているよ。それじゃあ、しっかり頑張ってきてくれ。観覧席からお前の晴れ姿を見ているからな」

 ニコスにそう言われて、もう一度満面の笑みで頷いたレイだった。

 笑顔でそんな二人を見ているギードの横で、タキスはもう先ほどから感激のあまり早くも泣き出していたのだった。

「じゃあ、いってきます!」

 いつものようにゼクスに飛び乗ったレイは、見送ってくれたタキス達に笑顔でそう言うと、ラスティや護衛の者達と共に出発していった。

 姿が見えなくなるまでその場で見送ったタキス達は、揃って大きなため息を吐いた。

「はあ、午前中は絶対に何をしても絶対に上の空でしょうね」

「だな。いっその事早めに会場入りして、叙任式の準備するのを眺めていたいくらいじゃわい」

 ため息を吐いたタキスの呟きに、笑ったギードがそう言って空を見上げる。

「それは、会場関係者の迷惑になるからやめてくれ。それならもう、時間までは書斎で図鑑でも眺めている方がいい気がするな」

「ワハハ、確かにそれが良さそうだ。今日だけはどんな本を読んでも絶対に内容が頭に入らんだろうから、図鑑を眺めておるのが良さそうじゃわい」

「そうですね。時間潰しにはそれが一番良さそうです。ああ、それならニコス。あの陣取り盤を詳しく教えてくれませんか。あれの方が時間潰しが出来そうです」

「ああ、それはいいな。じゃあ詳しい陣の展開方法なんかを教えるから、やってみるといい」

「目標は、レイが家に帰ってきた時に、あの子と対等に対決出来るくらいに強くなる事なんですが、私でも可能でしょうかね?」

「もちろん。本気でやればタキスは間違いなく強くなれると思うぞ。せっかくだからギードも一緒にどうだ? 二人が強くなってくれたら、間違いなくレイは喜ぶと思うぞ」

 満面の笑みになったニコスの提案に、目を見開いたギードも笑顔で頷く。

「よし、じゃあニコスを打ち負かすくらいに強くなってやろうではないか!」

「おう、期待してるぞ」

 顔を見合わせて笑い合った三人はそのまま屋敷へ戻って書斎へ向かい、それぞれ陣取り盤の攻略本を手にしながら、昼食の時間になるまでそれはそれは真剣な様子でニコスの説明を聞いていたのだった。

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