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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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叙任式前夜

「はあ、やっぱり明日の事を考えると緊張しちゃうよ」

 夕食を終えた後もタキス達と少し話をしていたのだが、もう明日に備えて早く寝なさいと言われてしまい、もうその場は解散となりおやすみを言って部屋に戻って来た。

 しかし、やはり自分で思っていた以上に緊張しているようで、湯を使った後、いつものようにラスティとおやすみの挨拶を交わしてベッドに潜り込んでもどうにも気が休まらず、目を閉じてもどうにも眠る事が出来ずにいた

「ああ、もう!」

 しばらくしてそう言って腹筋だけでベッドから起き上がったレイは、ニコスが編んでくれたカーディガンを羽織ってベッドから降りて窓辺に向かった。

 カーテンを開けて窓を開くと、丸い月が正面に上がっているのが見えて思わず笑顔になる。

「そっか、今夜は満月なんだったね。じゃあ少しだけ見てみようっと」

 一つ深呼吸をしたレイは、手早く天体望遠鏡を組み立てるとノートを手に椅子に座り、いそいそと天体望遠鏡を覗き込んだ。

「綺麗だなあ……」

 思わずと言った風に小さくそう呟き、しばらく無言で天体望遠鏡越しに見える月に見惚れていた。



 その時、軽いノックの音がして驚いて顔を上げた。

「はあい」

「失礼します」

 入ってきたのは、さっきお休みを言って下がったラスティで、何故かワゴンを押して入ってきた。

「あれ? どうかしたの?」

 驚いたレイが慌てて立ち上がると、笑顔のラスティはそのままワゴンを押して窓際まで来てくれた。

「ああ! パンケーキだ!」

 ワゴンに載せられていたのはやや小ぶりのパンケーキで、綺麗に切った果物とクリームが添えられている。

 カナエ草のお茶も用意されているのを見て、レイはこれ以上ない笑顔になった。

「そう言えば以前話したね。叙任式の前夜はきっと緊張して眠れないだろうから、僕は星でも見ていようかなって」

「はい、それで私はこう申し上げましたね。ワインを飲んで翌日二日酔いになっては大変なので、その時には深夜のパンケーキをご用意いたしましょう。とね」

 その言葉に、レイはもう一度笑ってからパンケーキを見た。

「ありがとうラスティ。実はちょっと小腹が空いていたので、ビスケットでも齧ろうかなって思ってたんだ」

「おや、そうでしたか。ではビスケットもお召し上がりになりますか?」

 壁に作り付けられた棚に並ぶビスケットの瓶を振り返ったラスティの言葉に、レイは笑って首を振った。

「せっかくだから、このパンケーキをいただきます。さすがに今から両方食べたら、今度はお腹いっぱいで眠れないと思うからね」

 嬉しそうにそう言ってナイフとフォークを手にしたレイを見て、ラスティも笑って頷いたのだった。



「今夜は満月なのですね。これは綺麗だ」

 開いた窓から見えるまん丸な月を見て、ラスティが感心したようにそう呟く。

「そういえばラスティには見せた事が無かったね。ほら、今ならここから月が見えるよ。あ、時間が経ってちょっと位置がずれちゃったね。えっと、ちょっと待ってね、今合わせるから」

 カトラリーを置いたレイが笑顔でそう言い、置いてあった天体望遠鏡を覗く。

 しかし、少し時間が経って月の位置が変わった為、慌てたようにそう言ってすぐに月の位置に合わせ直した。

「はい、これでいいよ。どうぞ見てみてね。その間に僕は残りのパンケーキをいただきます!」

 笑顔でそう言われたラスティは、一瞬驚いたような顔をしたがすぐに笑顔になって言われた通りに天体望遠鏡を覗き込んだ。

「おお、これは素晴らしいですね。ええ、あれがこんな風に見えるんですか。これは素晴らしい……」

 思わずと言った風に顔を上げたラスティは、窓から見える月をもう一度見てから改めて天体望遠鏡を覗き込んだ。

「本当に素晴らしいですね。良きものを見せてくださりありがとうございました」

 満面の笑みのラスティにそう言われて、嬉しそうに何度も頷くレイだった。



「はあ、美味しかった。ありがとうねラスティ。じゃあ僕はもう少し月の観察をしてから休みます。ラスティも、もういいから休んでね」

「はい、では下がらせていただきます。ですがレイルズ様も早めにお休みください。明日、槍比べの際にレイドの背の上で眠っていて落っこちても知りませんからね」

「あはは、それは大変だ。僕、頑張って勝ち抜くつもりなのに! じゃあ、少ししたらちゃんと休みます!」

 笑ったレイの言葉にラスティも笑顔で頷き、もう一杯カナエ草のお茶を用意してからパンケーキのお皿を片付けてから下がった。

 笑顔でその後ろ姿を見送ったレイは、改めて天体望遠鏡を覗き込んで、用意したノートに月の模様を描き始めたのだった。

 夢中になって天体望遠鏡を覗き込むレイの肩の上では、ブルーの使いのシルフが先ほどから現れて座っていて、そんなレイの様子をとろけるような笑顔でいつまでも見つめていたのだった。

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