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おかえり!

「ありがとうございました。では気をつけてお帰りください」

 ラプトルを預けていた居酒屋の店主にそう言われて、笑顔で手綱を受け取るタキス達だった。

 円形市場を出てラプトルを引き取った一同は、増えた手荷物をカゴに分けて載せただけで人通りの多い街の中では騎乗する事はせず、手綱を引いてのんびりと周りを見ながら歩いていた。

 途中、学生時代に通っていた文具店を見つけて立ち寄りせっかくなのでと言って少し買い物をしていたら、当時を知る年配の店主がまだご健在でしばらく店主と楽しそうに話をしていたタキスだったが、学生の団体が店に入って来て一気に忙しくなったのを見て、慌てて邪魔にならないように店を後にしたのだった。

「はあ、本当に楽しい時間を過ごさせてもらいました。私の記憶とは変わっている部分もかなりあったので、うっかり自分達だけで出掛けていたら間違いなく途中で迷子になっていたでしょう。オリサーさん。ベルスさん、フェルナさんも、護衛と詳しい案内をありがとうございました。おかげで美味しい雪玉も食べられたし、懐かしい方々にもお会い出来た上に色々と買い物も楽しませてもらいました」

「い、いえ。私は自分の仕事をしただけです」

 店を出たところでタキスが嬉しそうにオリサー達に改めてお礼を言い、まさかのタキスからの改まったお礼の言葉に、オリサー達は慌てていたのだった。

「さて、日も暮れてきた事ですしそろそろ戻りましょうか。あまり遅くなると、先にレイが帰って来るかもしれませんからね」

 タキスが傾き始めた夕日を見て笑顔でそう言い、その言葉にガンディとニコス達も揃って西の空を見た。

「確かにそろそろ戻った方が良さそうじゃな。では、行くとするか。もうここならば乗っても構わんだろう」

 周囲を見回したガンディがそう言い、引いていたラプトルに軽々と飛び乗った。

 それを見たタキス達もそれぞれの騎竜に乗り、ここからは列になってゆっくりとラプトルを進ませて街を出て行った。

 城壁を抜けて一の郭に入ったところで白の塔へ戻るガンディと別れ、タキス達は瑠璃の館へと戻って行ったのだった。



「おかえり!」

 タキス達が瑠璃の館に戻ると、もうレイが戻っていて玄関まで出てきて出迎えてくれた。

「はい、ただいま戻りました。レイの方が戻るのは早かったんですね」

「うん、今日は忙しかったんだよ」

 控えていた執事達にラプトルを預けたところで、タキスが自分の乗ってきたラプトルに積み込んでいたお土産を思い出した。

「雪玉をお土産に買ってきましたよ。まだ夕食には少し早いでしょうからおやつにしますか? それとも夜食にしますか?」

 笑ったタキスの言葉に、レイが目を輝かせる。

「ああ、その包みって美味しい雪玉のお店だよね。以前ガンディと一緒に街へ出た時に行ったお店だ!」

 見覚えのある包み紙に押されたお店の印を見て、包みを受け取ったレイが満面の笑みになる。

「ええ、これは師匠に教えてもらったお店ですからね。そうそう、護衛の方もここのお店がおすすめだと言っていましたから、きっと有名な店なのでしょうね。ちなみに私がアーシアと一緒によく買いに行っていた雪玉のお店は、残念ながらもうありませんでしたけれどね」

「ええ、それは残念だったね」

「でも、雑貨屋さんや文具店などは何軒もお店が残っていて、店主やお店の方と話も出来ましたから楽しかったですよ」

「はいはい、話は中でしようか。そんなところで立ち話をされたら、皆が困っているじゃないか」

 その時、笑ったニコスに背中を叩かれてそう言われてしまい、レイとタキスは揃って吹き出した。

「あはは、ごめんなさい。うん、じゃあとりあえず中に入ろうか」

 確かに控えていたアルベルトとラスティも、揃って困ったように玄関の扉を開けたままこっちを見ている。

「申し訳ありません。では中で話しましょう」

 苦笑いしたタキスも皆に謝り、そのまま中へ入っていった。

「じゃあ、僕はちょっと小腹が空いているから一つだけいただこうかな」

 包みから漂う甘い香りに、嬉しそうなレイがそう言いながら包みをラスティに渡す。

「かしこまりました。ではお茶の用意をいたしますのでお待ちください」

 通された部屋のソファーに座ったレイが笑顔で頷くのを見て、タキス達は一旦部屋に戻り、すぐに部屋着に着替えて戻ってきた。

「あれあれ、またずいぶんたくさん買って来てくれたんだね」

 お皿に綺麗に並べられたたくさんの雪玉を見たレイが、苦笑いしながらそう言ってソファーに座るタキス達を振り返った。

「ええ、せっかくなのでお世話になっている屋敷の皆さんにも食べてもらおうと思って色々買ってきたんです」

「そうなんだね。ありがとう。じゃあラスティやアルベルト達にも食べてもらわないとね」

 笑ったタキスの言葉にレイも笑顔でそう言い、驚くラスティを見た。

「これは我らにまでお気遣いただきありがとうございます。では、皆様がお召し上がりになられた後で、残ったものを後ほど屋敷の皆でありがたくいただきます」

 嬉しそうなアルベルトの言葉に、皆笑顔で頷き合ったのだった。



「えっとね、今日は聞いていた以上に大忙しだったよ。本部に行って叙任式に関する一通りの説明を受けた後は、竜騎士隊の皆からたくさんのお祝いをいただいたんだ。えっと、アルス皇子殿下からはミスリルの槍を、マイリーからはミスリルの盾を、ヴィゴからは大きな強弓をいただいたんだよ。どれもすっごく綺麗な細工が入っていてもう見惚れちゃったんだ」

 レイの前にはカナエ草のお茶が、タキス達の前には紅茶が用意されて、それぞれ選んだ雪玉を食べながら本部での話を聞いた。

 そうやら竜騎士隊の皆からだけでなく、陛下やマティルダ様など皇族の方々や貴族の方々から贈られたお祝いの品々が本部に届けられたらしく、それを見たレイはもう大感激していたらしい。

 何を貰ったのかを嬉しそうに話すレイを、タキス達も同じくらいの笑顔でずっと何度も頷きながら話を聞いていたのだった。

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