朝の一幕とレイの食事
「う、うん……ふああ〜〜〜」
『お、起きたか?』
枕に抱きついたまま欠伸をしたレイは、すぐ横にいたブルーの使いのシルフの声に、うっすらと目を開けた。
「おはようブルーって、あれ? もしかして、僕、寝坊した?」
窓から差し込む光がかなり高くなっているのに気付いて慌てて飛び起きる。
『心配はいらぬよ。今日はゆっくりで良いそうだからな』
慌てるレイの肩にふわりと飛んできて座ったブルーの使いのシルフの言葉に、立ち上がりかけたレイの動きが止まる。
「えっと、そうなの?」
『ああ、ちなみに其方の家族達も少しゆっくり起きて別室で朝食をいただいたあとは、休憩室でアメジストの主殿と、其方の家族の黒い髪の竜人が陣取り盤で張り切って対決しているよ』
「あはは、そうなんだ。じゃあ僕も起きようっと……あれ? 何これ?」
笑ったレイがベッドから降りて髪をかき上げようとしたところで、何やら妙な顔になる。
「えっと……ねえ、もしかしてこの髪でも悪戯したの?」
謎の緑色の紐で括られた細い三つ編みを一本引っ張ったレイが、頭上で目を輝かせて自分を見ているシルフ達を上目使いで見上げる。
『新作三つ編みなの〜〜〜!』
『しかも期間限定!』
『張り切ったの〜〜〜!』
『頑張ったんだよ〜〜〜!』
キラッキラに目を輝かせながら口々に頑張ったのだと報告するシルフ達の言葉に、レイは遠慮なく思いっきり吹き出したのだった。
「おはようございます。お目覚めですか?」
楽しそうな笑い声を聞きつけ、着替えを手にしたラスティがノックの音の後に入ってくる。
「ぶふっ!」
しかし、予想外の豪快な三つ編みを見たラスティが堪えきれずに吹き出して慌てて横を向く。
「やった〜〜! ラスティを笑わせたぞ〜〜!」
何故か得意そうにそう言って胸を張るレイの言葉に、もう一度吹き出して咳き込むラスティだった。
「この、草を使って三つ編みを留めるのは、いつもティミー様がされている悪戯ですね。最近ではタドラ様も同様の被害を受けていると聞いておりますので、どうやらお二方に悪戯しているシルフ達からこのやり方を教えてもらったみたいですね。なかなかにシルフの皆様は勤勉なようですね」
苦笑いするラスティの呟きに、洗面所の鏡に映った自分の姿を見てもう一度豪快に吹き出したレイだった。
そしてシルフ達がいつものように手伝ってくれたおかげで三つ編み自体はすぐに解けたのだが、さすがに外から摘んできた雑草で括った髪をそのままにしておくわけにもいかず、急遽お手伝いの執事達も来てもらい用意されたお湯を使って洗面所でレイの髪を洗ったのだった。
一応、やり過ぎた自覚はあったらしいシルフ達が手伝ってくれたおかげで、洗い終わってびしょ濡れだったレイの髪は、あっという間にサラサラに乾いてラスティと執事達を驚かせたのだった。
「お疲れ様でした。お食事はお部屋にご用意しますので、そちらにお座りになってお待ちください」
部屋に戻ったところでそう言われて、大人しく椅子に座って待つ。
「食べたら僕も休憩室へ行こうっと。ニコスとマイリーの対決を見たいもんね」
ブルーの色のクッションを抱きしめながらの呟きに、側にいたブルーの使いのシルフも笑って頷く。
『ちなみに、まずはアメジストの主が一勝して、今は二戦目の真っ最中だよ。今のところ、ほぼ互角の戦いのようだな』
「ううん、早く見に行きたい!」
ワゴンを押して来てくれたラスティは、驚いたようにレイを見た。
「ん? いかがなさいましたか?」
「あのね、今ブルーが教えてくれたの。休憩室でニコスとマイリーが陣取り盤で対決してるんだって。早く食べて見に行かないとね」
嬉しそうなレイの言葉に納得して頷く。
「それは確かにそうですね。では、どうぞお召し上がりください」
「うん、ありがとうね」
嬉しそうにそう言い、食前のお祈りをしっかりしてから食べ始めたレイを見て、笑顔のラスティが少し下がる。
今、テーブルに並べられた豪華な料理の数々は、しかしいつもの食事量よりもはるかに少ない。
レイの体が小さくなって以降、喜んで食べているので他の皆はあまり気が付いていないが、ラスティや執事達は、とある変化に気がついていた。
レイの食事の絶対量が、かなり少なくなっているのだ。
これは、今のティミーと同じかそれより少し多い程度。いつものレイが食べている量に比べれば圧倒的に少ない。
心配になったラスティがタキスに確認したところ、変化の術の場合は現状の体格に合わせた食事量になるのだと聞き、密かに安堵していた。
叙任式前に、万一にもレイに体調を崩されると色々と問題が出るので、その辺りにはかなり気を遣っているラスティや執事達だった。




