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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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夕食会への乱入者って?

「はあ、今日は少し改まった夕食会があるとは伺っておりましたが……ここまでですか」

 ため息を吐いたタキスの呟きに全く同じ思いだったニコスとギードも、揃って苦笑いしつつ、顔を見合わせてうんうんと頷き合っていたのだった。



 夕方近くまで、マイリーとニコスの陣取り盤での対決を見学していた一同だったが、そろそろ夕食会の準備をしなければならない為にその場はひとまず解散となり、タキス達は執事の案内で別室に通された。

 レイとは部屋の前までは一緒だったが、彼も自分の準備があるからと言って一旦そこで別れた。

 ニコスとギードと共に通された部屋には、何人もの執事達が待ち構えていた。当然のように三人の為のそれぞれの種族に合わせた正式な衣装が用意されている。いわゆる第一級礼装だ。

 予想以上の豪華な衣装を見たタキスの呟きに、何度も頷いたニコスがため息と共にタキスの肩を叩く。

「まあ、ここへ来た時点で俺達に拒否権はないんだから、諦めろ」

「そうじゃな。もうこれを楽しむぐらいに開き直ればいいわい」

「そうですね。そう考えるのが一番いいのでしょうね。でもやっぱり慣れない扱いに緊張しかありませんよ」

 揃って乾いた笑いをこぼすニコスとギードの言葉に、同じくため息を吐いたタキスも乾いた笑いをこぼしつつそう言って困ったように頷いていたのだった。



「うわあ、三人ともすごく格好良いよ!」

 廊下へ出たところでティミー用に作られた一番小さな第一級礼装に身を包んだレイが待っていて、同じく改まった衣装に身を包んだタキス達が出てきたのを見て目を輝かせて小さく拍手をした。

「ちょっとやりすぎな気もしますが、まあ正式な夕食会との事でしたから、こうなるのは当然なのでしょうね」

 細やかな飾りのビーズが縫い付けられた胸元をそっと引っ張ったタキスが、苦笑いしながらそう言って首を振る。

「とてもよく似合ってるよ。えっと、さっきラスティから聞いたんだけど、今夜の夕食会にはガンディも参加してくれるんだって。あの変化の術をタキスが行使したって聞いて、すっごく驚いていたらしいからね。きっと、来たら質問攻めにされるんじゃあない?」

「その前に、きっとガンディ様に其方が揉みくちゃにされるだろうがな」

 笑ったギードの言葉に、レイは小さくなった自分の姿を見て情けない悲鳴を上げたのだった。



「えっと、夕食会に参加するのは竜騎士隊の皆とタキス達、バルテン男爵じゃなくて子爵、それからガンディなんだよね?」

 一応身内だけとはいえ正式な場なので、未成年であるティミーとジャスミンとニーカは参加しないと聞いている。となると、これで全部だろう。

 時間までこちらでお待ちくださいと言われ、通されたいつもの休憩室のソファーに座って指を折って人数を数えていたレイがルークに質問する。

 休憩室には既に全員揃っていて、ちなみにバルテン子爵も別室にて用意していた第一級礼装に着替えていて既に合流しているので、まだ到着していないガンディ以外はこれで全員いるはずだ。

「一応その予定だったんだけど、あと二人追加になったよ」

「えっと、どなたですか?」

 不思議そうなレイの質問に、苦笑いしたルークが何故かタキス達を見た。

「せっかくなので、参加したいとゴリ押しされまして、一応後日あらためて場を用意すると言ったんですが、これのせいで結局止められませんでした。申し訳ありません」

 そう言って何故かレイを指差している。

「お二人という事は、ご夫婦お揃いで……ですよね?」

 三人の中で唯一状況が分かっているニコスが、困ったようにそう言ってルークを見る。

「ええ、ご夫婦での参加です。一応、あくまでの身内の夕食会であって晩餐会ではないと伝えてありますから、そこまで改まる必要はありませんのでご安心を」

 何やら含んだ様子のルークのその言葉に、首を傾げたレイがニコスの腕を引く。

「ねえ、ニコスには分かっているみたいだけど、どなたが参加なさるの?」

 どう考えても、レイには誰が来るのかさっぱり分からない。

 タキスも同じように首を傾げているが、同じように首を傾げていたギードとバルテン子爵が、何故かいきなり横を向いて揃って思いっきり吹き出して咳き込んだので、驚いてそっちを見る。

「あの、ルーク様……まさかとは思いますが……」

「お、お越しになられるのですか? しかも奥方様まで……」

 二人の言葉に、ここでタキスまでが口を押さえてて悲鳴を上げてから横を向いていきなり咳き込む。

「待ってくださいルーク様! いきなりそれは、ちょっと正直に申し上げてとっても困ります!」

 血相を変えるタキスの叫びに、何故かもう一度ルークが謝っている。

「ええ、一体何の事を言ってるのか全く分かりません! 誰が来るのか解説を求めます!」

 唯一分からなくて口を尖らせるレイを見て、ニコスがこれ以上ないくらいの大きなため息を吐く。

「分からないか?」

「分かりません!」

 また口を尖らせるレイを見て、もう一度ため息を吐いたニコスが休憩室の扉を見た。

 そこには、今到着したばかりのガンディが笑いを堪えて立っていて、ゆっくりと部屋の中に入ってきてレイ達の向かい側のソファーに座った。

「さて、どなたがお越しになるのであろうなあ」

 完全に面白がる様子のガンディの言葉に、もう一度眉を寄せて口を尖らせたレイが無言で考え込む。

 竜騎士隊の皆は、全員揃って笑いを堪えるのに必死だ。

「えっと、この顔ぶれと一緒にご夫婦で参加しておかしくない人って……」

 そのまましばし考えていたレイが、不意に顔を上げてルークを見る。

「いいから言ってごらん」

 にっこりと笑ったルークにそう言われて、レイがニコスを見る。笑いを堪えたニコスが頷くのを見てからもう一度ルークを見た。

「もしかして、お越しになられるのって、陛下とマティルダ様? もしかして、小さくなった僕を見に来られる?」

 笑って頷くルークと一斉に吹き出す竜騎士隊の皆を見て、レイは情けない悲鳴を上げて顔を覆ったのだった。

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