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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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西の離宮での昼食とこのあとの事

「うわあ、美味しそう!」

 執事に案内されて向かった広い部屋には、壁面にぎっしりと様々な料理が並べられていた。

 思わずといった風に少し大きな声でそう言ったレイの言葉に、竜騎士隊の皆も笑顔で頷く。

 タキス達も並んだ様々な料理を見て、これ以上ない笑顔になる。

「ありがとうね。これならタキス達も遠慮なく食べられるね」

 夕食は改まった席になると聞いていたので、出来れば昼食は遠慮なく食べてもらいたかったので、嬉しそうに笑ったレイの言葉に、執事達も笑顔で一礼した。

 瑠璃の館での一件は既に関係各所に報告がなされていて、夕食会のような改まった席以外では出来る限り自由に過ごしてもらえるよう配慮するようにとの通達も合わせて届いているのだ。

「ご配慮感謝します」

 苦笑いしたタキスの言葉に、執事は改めて深々と一礼したのだった。



「ああ、ルディ。お久し振りです。またお世話になりますね」

 大きな鉄板の前で大量の肉を焼いてくれている、真っ白な制服を着た大柄な男性がレイの声に笑顔で顔を上げた。

「レイルズ様。私のような者の名を覚えていてくださり大変光栄です。本日もたっぷりと焼けておりますので、どうぞご遠慮なくお召し上がりください。ですが、食べ過ぎてお腹が痛くなったなんて言わないでくださいよ」

 最後は少しふざけた風にそう言い、鉄板の横でこちらも良い香りを漂わせている大きな肉の塊を示した。

 太い金串に突き刺さった大きな肉の塊は、既に焼かれていてとても美味しそうだ。

 時折滴る脂が炭に跳ねて、ジュウジュウと良い音を立てている。

 今日は、こちらの塊肉にはまた別の料理人が控えてくれていて大きなナイフを手に立っている。

「大丈夫です! じゃあ早速ここにください!」

 満面の笑みで大きなお皿を差し出すレイの言葉に、笑顔で頷いたルディは、早速焼き立てのお肉を次々にレイのお皿に並べていった。隣では、早速焼けた部分の肉をそぎ落とし始め、用意していた大皿に山盛りにしてくれているので、ここから好きに取れという事なのだろう。

 当然、嬉々としてそちらの肉も山盛りに取る。

「お前、肉を総取りするつもりかよ! ルディ! 俺にもお願いします!」

「待って! 俺にも!」

「遅れてなるか〜〜!」

 レイの持つお皿に肉が山盛りになるのを見て、慌てたようにルークがそう言ってレイの隣に並ぶ。

 遅れてロベリオとユージンがその隣に並び、タドラと顔を見合わせて吹き出したタキス達も慌ててその横に並んだのだった。アルス皇子とマイリー達大人組も、苦笑いしつつもお皿を手にその隣に並んだのだった。



 大満足の昼食をいただいた後、改めて淹れてくれたカナエ草のお茶で休憩してから一同は書斎へ向かった。

 壁面にぎっしりと並ぶ蔵書を見て、タキスは感激の声を上げるなり移動階段を引っ張って医療関係の本が並ぶ一角に陣取り夢中になって本を選び始めたのだった。

 それを見て呆れたように笑ったニコスとギードもそれぞれ本を選び始め、竜騎士達も好きに本を選んでソファーに座り、そこからはのんびりと読書の時間になったのだった。



「ねえルーク、ちょっといい?」

 しばらくしてレイが遠慮がちに側にいたルークに声をかけた。

「ん? どうかしたか?」

 光の精霊魔法に関する本を読んでいたルークが、驚いたように顔を上げてレイを見る。

「えっとね。出来ればタキス達がいる間にマークとキムを紹介したいんだけど……どうしたらいいですか?」

「ああ、そりゃあそうだな。叙任式の後はもう予定を変えられるところはないから、するなら叙任式前に本部かここで、だな。一応、いくつか昼食会の予定を変更しておいたから、夜は無理だけど昼の間なら少しくらいは予定を開けられるよ」

「ぜひお願いします!」

 目を輝かせるレイの言葉に、何故かルークがにんまりと笑う。

「紹介するのは、マーク軍曹とキム軍曹だけで良いのか?」

「え? どういう事?」」

 ルークの質問の意味が分からず、質問に質問で返す形になるが、不思議そうに首を傾げたレイがそう聞き返す。

「大切なご家族に紹介したい子が、一人いるだろうが」

 もうこれ以上ない笑顔でそう言われて、唐突に真っ赤になる。

「レイ! もしやそれは噂のクラウディア嬢ですね! ぜひ紹介してください! 実はその巫女様にオルダムにいる間にお会い出来ないか後で聞こうと思っていたんです!」

 目を輝かせたタキスの言葉にレイが咳き込み、竜騎士達が揃って吹き出す。そしてニコスとギードも揃って満面の笑みで何度も頷いていたのだった。

『おやおや、これはまた大騒ぎになりそうだな』

 テーブルに置かれた燭台に座ったブルーの使いのシルフの面白がるような呟きに、他の竜達の使いのシルフ達と、それからニコスのシルフ達が揃って困ったように笑っていたのだった。

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