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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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西の離宮へ

「さて、無事に授与も終わった事だし、少し遅くなったけど食事にしようか。レイルズ達もまだだろう?」

 アルス皇子の言葉に、ギード達と話をしていたレイが驚いたように振り返る。

「夕食は本部に用意する予定なので、今から食事の為に瑠璃の館へ戻っていたら、食べてすぐにまた来てもらう事になるからね」

 来る途中で十二点鐘の鐘の音を聞いた覚えがある。あれから少し時間が経っているので、確かにもう昼食の時間としては少し遅めだろう。

「えっと、食事は何処で? あ! もしかして食堂へ行くんですか?」

 いつも自分が食べている大好きな食堂を三人にも見て欲しい。無邪気にそう考えたレイの言葉に、アルス皇子は驚いたように目を見開き小さく吹き出した。

「ううん、さすがにそれはちょっと無理かな。知らせは寄越してありますので、このまま西の離宮へ参りましょう。あそこの書斎もなかなかの蔵書量ですよ。よければ夕食までゆっくり読書でもなさってください」

 にっこり笑ったアルス皇子の言葉に、タキスの目が輝く。

「確かに、あそこの書斎もたくさんの本があるから、好きなだけ読んでもらえるね」

 笑顔のレイの言葉にタキスが頷き、そのまま全員揃っての移動となった。



「ほら、この子がいつも僕が乗っているラプトルだよ。名前はゼクス。とても賢い良い子なんだよ」

 第二部隊の兵士達が用意してくれたゼクスの手綱を受け取ったレイが、得意そうにそう言ってゼクスをタキス達に紹介する。

「これは確かに賢そうな子じゃな。それに鱗の艶の素晴らしい事。おお、あの時の馬具をそのまま使ってくれておるのか。なかなかに良い色になってきたな」

 嬉しそうにゼクスの鼻面を撫でたギードが、その背に乗せられている鞍に気付いて嬉しそうな声を上げる。

 それは、以前ブレンウッドの街で彼らがレイの為に購入した鞍で、レイがオルダムに来る際に持たせたもので、もちろん普段のレイはずっとその馬具を使っている。

 正式な竜騎士見習いとしてラプトルに乗る場合は、専用の馬具があるのでそれを使うが、日常的に使う道具に関しては特に決まりはないので皆それぞれに好きなものを持ち込んで使っているのだ。

「確かに、使い込んで良い色になってきたよね。でも馬具の手入れは基本的には第二部隊の皆さんがしてくれるから、僕はほとんど何もしていないんだけどね。いつもありがとうね」

 笑ったレイが、控えていた第二部隊の顔見知りの兵士達に笑顔でお礼を言う。

「いえ、これが我らの勤めですのでどうぞお気遣いなく。ですがレイルズ様は、いつも道具をとても丁寧に使ってくださいますので、ほとんど我らのする事はありません」

 嬉しそうなその兵士の言葉に、笑ってもう一度お礼を言ったレイだった。

 ちなみに、フェアステッドの街に残してきたタキス達が乗ってきたラプトルは、まだオルダムに到着していないとの事で、用意されたラプトルに乗って貰った。



「歩いてもすぐの距離だろうに、わざわざラプトルに乗るとは何とも贅沢じゃのう」

 整備された林の中へと続く道を見て、ラプトルに乗ったギードが苦笑いしながらそう呟く。

「ここへ来てすぐの頃に、私も同じ事を言った覚えがありますね。でもまあ、ここでは一時が万事こんな感じですよ」

「やっぱり、どう考えても寛げる気が微塵もせぬわい」

 ギードとタキスの会話を聞いて、竜騎士達は揃って苦笑いをしていたのだった。

「あれ? ティミーは?」

 確か、さっきは一緒にいたはずだが来なかったのだろうか?

 不意にティミーがいないことに気がついたレイがキョロキョロと周りを見る。

「まあ、あの場にティミーを同席させたのは彼にも経験を積ませる為だよ。非公式とはいえ、皇王様自らの勲章の下賜だからね。ちなみに午後からは、ティミーは本部でお勉強の時間だよ」

「そうだったんですね」

 ルークの説明に納得したレイが頷き、そのままゆっくりと進んで林を抜ける。



「ああ! ブルー!」

 到着した西の離宮の広い庭には、ブルーが湖から出てきて待っていてくれたのだ。

 即座にゼクスを駆けさせてブルーに走り寄る。鞍の上からそのままブルーに飛びつく。

「おいおい、無茶するなって!」

 慌てたルークが即座に腕を伸ばして、シルフが確保してくれたゼクスの手綱を受け取って引く。

 驚きに目を見開いているタキス達を見て苦笑いしたルークが、軽々とラプトルから飛び降りてまだ少し驚いて跳ねているゼクスを落ち着かせる。

「よしよし、もう大丈夫だぞ。全くあいつは毎回毎回……」

 大きな腕に上がりブルーの顔に抱きついているレイを見て、呆れたようにそう呟くルークだった。

「蒼竜様は、いつ見てもお美しい……」

「本当ですね。改めて見ると大きさにも驚きます」

 ラプトルに乗ったまま半ば呆然とニコスがそう呟き、同じくラプトルに乗ったままのタキスも感心したようにそう呟く。

「あ、ごめんね」

 そこでようやく我に返ったレイが顔をあげ、慌てたように振り返って謝った。

「まあいいさ。とりあえず中に入ろう。俺は腹が減ったよ」

「僕もお腹ぺこぺこです!」

 笑ったルークの言葉に、満面の笑みのレイもそう言ってブルーの腕から飛び降りた。

 タキス達も笑顔で頷き会いラプトルから飛び降り、来てくれた執事に手綱を預けたのだった。

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