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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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会議室にて

「じゃあ、いってきます」

 見送りに出て来てくれたアルベルトをはじめとする執事達に笑顔でそう言ったレイは、用意された馬車に乗り込んだ。中にはすでにタキス達三人が座っている。

 馬車の後ろに設置された執事や従卒専用の席に場所にラスティが乗り、キルートを先頭にラプトルに乗った護衛の者達が馬車の前後に別れて位置に着く。

「では、出発いたします」

 御者の声の後、やや軋んだ音を立てて馬車が出発する。

「バルテン男爵、何か言いたそうだったけど、謁見はどうなったんだろうね?」

 動き始めた窓の外を眺めながら、レイが半ば無意識にそう呟く。

「ふむ、一応ワシの名は出さぬように頼んであったのだがなあ」

 ギードも、若干不安そうに窓の外を見ながらそう呟いている。

「どうしたんだろうな。俺も状況がよく分からなくてちょっと不安だよ」

 苦笑いするニコスの言葉に、タキスも困ったように頷いている。

「まあ、万一何か問題があれば……マイリー様や竜騎士隊の皆様が何とかしてくださるだろうさ」

 希望的観測を述べるニコスの言葉に、三人は揃って困ったように苦笑いしていたのだった。



 何となく妙な雰囲気のまま会話も続かず、黙ったまま竜騎士隊の本部に到着する。

 出迎えてくれた執事達とラスティの先導で本部の建物に入ったレイ達は、そのまま広い会議室に案内された。

 そこには何故かバルテン男爵と共に、アルス皇子を筆頭に竜騎士隊の全員が勢揃いしていた。末席にはティミーの姿も見えるが、ジャスミンとニーカはいないようだ。

「えっと、お待たせしました」

 入ったところで勢揃いした面々を見て思わず足を止めたレイが、慌てたようにそう言って一礼する。タキス達三人も慌ててそれに倣った。

「急がせたのはこっちだからね。構わないから座ってくれ。御三方はレイルズの隣へどうぞ」

 笑顔のアルス皇子の言葉に、とりあえず何か問題があったわけではなさそうだと判断して密かに安堵したタキス達は、執事の案内でレイの隣にタキス、ニコス、ギードの順に並んで座った。

 ちょうど、ティミーの隣に座ったバルテン男爵と、大きな会議机を挟んでギードが向き合う位置だ。

「まずは報告しておこう。無事に謁見は終了して、あの見事なダイヤモンドは城の宝物庫に無事に収蔵されたよ。宝物庫を担当している管理官達も、あのダイヤモンドを一目見て大感激していたそうだからね。間違いなく宝物庫に収蔵されている宝石の中では最大だろうからね」

「いやあ、あれを出した瞬間、それはもう大変な騒ぎでございましたからなあ」

 アルス皇子の言葉に、バルテン男爵もそう言って苦笑いしている。

 それを聞いて嬉しそうに笑ったギードを何故か皆が困ったように見ている。

「ん? 何事でございますか?」

 皆の視線に気付いたギードが、不思議そうにそう言ってアルス皇子を見る。

「一応、父上には今回の謁見でのバルテン男爵からの献上品については、管轄内の鉱山から出た大きなダイヤモンドである事は、あらかじめ伝えておいた。それで献上品に対する報酬としては、なんらかの勲章程度で良いと、そこも一応伝えておいた」

「はあ、ご配慮感謝します」

 妙に歯切れの悪いアルス皇子の説明に、なんとなく話の流れで対応する事になったギードが戸惑うように相槌を打つ。

「謁見が始まったんだが、出されたダイヤモンドを前に、その……言ったように大騒ぎになってね。それで予想以上の品に感動した父上は、あれだけ言っておいたのにその場でバルテン男爵へ、今後のさらなる活躍を期待するとの言葉と共に子爵の位を授けてくれたんだよ」

「お、おう……やはりそうなりましたか」

 苦笑いしたギードは、向かいに座ったバルテン男爵、いやバルテン子爵を見た。

「謁見の場で、陛下の口から陞爵を言い渡されてもう色々と諦めたわ。まあそうなるのではないかと、実は思っておったしなあ」

 顔を見合わせて、しばしの沈黙の後に揃って吹き出すギードとバルテン子爵。

「それで謁見が全て終わって控えの間に下がった後、真顔の父上から、あれは何処の鉱山から出たものなのかと聞かれてね。最初は誤魔化していたんだけど、結局詰め寄られてギードの鉱山から出たものだと言ってしまったんだよ。申し訳ない」

 肩をすくめながらそう言ったアルス皇子が頭を下げるのを見て、慌てたように首を振るギードだった。

「いやいや、陛下に直接問い詰められれば話さぬ訳にもいきますまい」

「それでね……」

 困ったように自分を見るアルス皇子に嫌な予感がしたギードは、何か言いかけて口をつぐみ、すがるようにレイを見た。

「えっと……それでどうなったんですか?」

 ギードの無言の願いはさすがに分かったので、戸惑いつつレイがそう尋ねる。

「その結果。追加の報酬で、国に対して何らかの貢献があったものに贈られる最高位である瑠璃勲章を、バルテン子爵とギードの二人に贈ると言い出してね。瑠璃勲章ならばラピスの色だし、レイルズの養い親であるギードには良いだろうと開き直られてしまってね。それでまあ、ギードへの授与に関しては表沙汰にしないならと条件を付けてなんとか収めたんだよ。この際だから、貰ってもらえるかい?」

 最後は苦笑いしながらのアルス皇子の説明に、ギードが顔を覆って呻き声を漏らす。

「辺境に住む元冒険者の農夫で鉱夫に、そのようなものを授けて何をさせるおつもりですか……」

「いや、これは言ったように国に対してなんらかの貢献があったものに対する勲章だから、逆に言えばこれを持ったからといって、何らかの義務や権利が発生するわけではないよ。ちょっと珍しい飾り程度に思っておいてくれればいいよ」

「無茶をおっしゃる……」

「諦めろ! 俺も子爵になったんだから、お前も勲章くらいは貰っておけ!」

 笑って胸を張るバルテン子爵の言葉に、会議室は笑いに包まれたのだった。

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― 新着の感想 ―
「貰ってもらえるかい?」 「ちょっと珍しい飾り程度に思っておいてくれればいいよ」 予想通りでしたが、ノリが軽すぎる…(好き❤)
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