歓談室での一幕
「はあ、本当に美味しかったです。準備をしてくださった皆様に心からの感謝を」
デザートの果物を食べ終えたタキスが、笑顔でそう言ってアルベルトを振り返る。
同じく食べ終えたニコスとギードも、揃って笑顔で頷いている。
「過分なお言葉、おそれいります。裏方の者達にお言葉を伝えさせていただきます」
笑顔で一礼するアルベルトに、同じく食べ終えたレイも満面の笑みで何度も頷いていたのだった。
そのあとは、揃って歓談室と呼ばれる部屋に移った。
小柄なニコスの体が埋もれそうなくらいのふかふかで大きなソファーに座り、改めてレイおすすめの貴腐ワインで乾杯した。
話題は、もちろん近付くレイの叙任式の話になる。
時折ニコスが話してくれる、隣国の竜の主の叙任式の様子なども聞き、もう準備が大変なんだと言いつつもレイはもうずっと嬉しそうな笑顔だった。
「そうだ。早い方がよかろう。ここで贈呈式をしてしまおう」
二杯目の貴腐ワインが無くなったところで、笑顔のギードがそう言って立ち上がる。
「え、何の贈呈式?」
驚くレイの言葉に、三人が揃って呆れたような顔になる。
「我らからの祝いの品に決まっておろうが。ちなみに、アンフィーとシヴァ将軍からも預かってきておるからな」
当然のようにそう言われて、納得したレイも笑顔になる。
彼らの荷物は、執事達が受け取りそれぞれ泊まる予定の部屋に置いてくれてあるはずだから、それなら取りに行かないといけない。
「あ、それならわざわざここまで持ってきてもらうのもなんだし、部屋を変わろうよ。確かあっちにもお客様用の歓談室があったよね?」
同じく立ち上がったニコスとタキスを見て、レイも満面の笑みでそう言って立ち上がった。
三人に泊まってもらう部屋のすぐ側には、宿泊客同士が交流してもらえるように歓談室が用意されているのを思い出したからだ。
もちろん、その部屋もいつでも使ってもらえるように準備が出来ている。
笑顔のアルベルトの案内で部屋を出たレイ達は、客室横にある歓談室に移った。
一旦歓談室にレイを残し、タキス達はそれぞれの部屋に贈り物を取りに行った。
「ふむ、ようやくこれを渡せる時が来たか」
自分のために用意された広い部屋で、突き当たり奥の大きな棚に置かれた贈り物の入った細長い木箱を手にしたギードは、嬉しそうに小さくそう呟いてその木箱をそっと撫でた。
「すみませんが、こちらに並ぶ木箱と、それからこれも、レイのいる先ほどの部屋に運んでいただけますかな」
振り返ったギードは、控えていた執事にそうお願いして手にしていた木箱も軽く上げて見せた。
持ってきた着替えなどはすでに整理されているが、明らかに贈り物だと分かるこれらの木箱は、そのまま戸棚に並べられていたのだ。
「かしこまりました」
即座に大きなワゴンを押してきた執事が、ギードが指定した木箱を順に確認しながらワゴンに積み込んでいく。
「それからこれ、だな」
私物の包みがいくつも置かれた別の棚の前に立ったギードは、そこから一つの包みを取り出して大事そうに抱えた。
それから、ワゴンを押した執事と共に歓談室へ向かった。
廊下で、それぞれ同じように荷物をワゴンに積み込んだタキスとニコスと合流して、お互いの荷物を見て笑顔で頷き合う。
アンフィーとシヴァ将軍の贈り物は、ギードがまとめて預かっているので一番荷物が多いのだが、二人の荷物も複数ある。
「まあ、何しろ待ちかねた叙任式の祝いの品なのだから、当然そうなるわな」
ギードの呟きにお互いの荷物の山を見て、もう一度揃って顔を見合わせてから吹き出した三人だった。
「ええ、何その大荷物!」
揃って部屋に戻ってきた三人を笑顔で迎えたレイだったが、それぞれの背後に控えた執事が押すワゴンを見て、驚いたような声を上げる。
「何って、レイへの贈り物に決まっておろうが。では、まずシヴァ将軍から預かってきたのを渡すぞ」
にんまりと笑ったギードは、手に持っていた包みを一旦横に置き、ワゴンから30セルテ角ほどの大きさの木箱を引っ張り出した。即座に、ワゴンを押してきた執事がそれを手伝いテーブルの上に載せる。
別の執事がこれも即座に釘抜きを差し出し、受け取ったギードが手早く木箱の蓋を開けて中に入っていた包みを取り出した。
「これはシヴァ将軍から個人的な贈り物だと言われて預かって参った品じゃ。それから、こっちは先に届けてある分の目録じゃそうな」
「ええ、目録?」
驚くレイに、笑顔のアルベルトが進み出る。
「後ほど報告する予定でしたが、レイルズ様宛に様々な方からお祝いの品が届いております。シヴァ将軍閣下からのお荷物は、ロディナの方々の分の贈り物を全てひとまとめにしてお送りいただいておりますので、その目録かと」
アルベルトから告げられた説明に半ば呆然と頷きつつ、笑顔のギードから最初の贈り物を受け取ったレイだった。




