お出迎え?
「ええ! 迎えに行ってもいいの!」
朝食を終えて休憩室へ戻ってきたところで、ルークから嬉しい話を聞きレイは目を輝かせた。
そんなレイを見て、ルークとマイリーは苦笑いしながら頷いている。
「本当なら、俺達全員で大々的にお出迎えしたいところなんだが、さすがにそれはやりすぎだろうからな」
「陛下やマティルダ様も同じ事をおっしゃっておられたよ。それで相談の結果、代表してレイルズとルークに出迎えに行ってもらう事にしたんだ」
苦笑いしているマイリーの言葉に、陛下やマティルダ様、それから竜騎士達全員からの大々的な出迎えを受けて途方に暮れるタキス達の様子を思い浮かべてしまい、吹き出しそうになるのを必死で堪えたレイだった。
「フェアステッドの街の駐屯地には連絡してある。ルークが一緒に行くから、レイルズはラピスと一緒にそこまで行って三人を連れてきてくれればいい」
マイリーの言葉に笑顔で頷いたレイは、急に何か考えるかのように黙り込んだ。
「ん? どうかしたか?」
その様子に、ルークとマイリーだけでなく、一緒に話を聞いていた若竜三人組とヴィゴとカウリ、それからティミーとジャスミンとニーカも心配そうにレイを見た。
「えっと、具体的にはどうすればいいのかなって思ったの。今から僕がブルーに乗ってフェアステッドの街へ行って、駐屯地にブルーを置いてから宿まで行けばいいの?」
そう言いながら自分の胸元を軽く引っ張る。今のレイが着ているのは、いつもの赤い竜騎士見習いの制服だ。
「その格好でそんな事したら、間違いなく大騒ぎになるだろうなあ」
完全に面白がる口調のロベリオの言葉に、あちこちから吹き出す音が聞こえた。
「え? じゃあ僕はどうやってタキス達に会えばいいの? そもそも僕、フェアステッドの街のどこに三人が泊まっている宿があるのか知らないよ。ルークは知ってる?」
困ったようなレイの言葉に、マイリーとルークは笑いを堪えて顔を見合わせた。
「大丈夫だよ。昨夜のうちにニコスに連絡を取って、その辺りは手配済みだ。軍部からフェアステッドの宿に迎えの馬車を寄越してもらって、一旦三人には軍の駐屯地へ行ってもらうんだ。そこなら、すぐに合流出来るだろう?」
「そっか、それで僕がブルーと一緒にそこへ行って、三人を連れてくればいいんだね」
嬉しそうなレイの言葉に、レイの肩に座って一緒に話を聞いていたブルーの使いのシルフも嬉しそうに頷いていたのだった。
フェアステッドの街からここオルダムまでは、ラプトルに乗っていればほぼ一日あれば到着出来る程度の距離だ。
ここまで、三人には各街の貴族御用達の豪華な宿に泊まってもらい、貴族の生活を楽しんでもらった。
当然、各宿にはルークが連絡を取っていて宿での彼らの様子も詳しい報告を受けている。
昨夜、ニコスに直接連絡を取った際に話を聞いたところ、もう三人揃って開き直って豪華な生活を楽しんでいると言われて、一応、宿の手配については嫌がられてはいなかった事を確認して、密かに安堵していたルークだった。
そこで明日、朝食の後にレイと自分が迎えに行く話をしておいた。
驚き恐縮するニコスに、ルークは笑ってこう言ったのだ。
せっかくですから、迷路のようなオルダムの街を上空からご覧になってください。と。
「じゃあ、行ってきます!」
恐らくこの状況を一番分かっていないであろうレイの言葉に、もう一度ルークとマイリーが顔を見合わせてから嬉々として部屋を出ていこうとするレイを見て、揃って小さなため息を吐いた。
「まあ、あとは任せた」
「ああ、俺に丸投げしたし!」
マイリーの言葉にルークが笑ってそう言い、周りにいた全員が揃って吹き出したのだった。
「ん? どうかした?」
扉を開けて、今にも部屋から出ようとしていたレイが不思議そうに振り返っている。
「なんでもないよ。じゃあ行こうか。あとはよろしく」
手にしていた書類を置いたルークも、マイリーにそう言ってレイの後に続いて置いてあった剣を剣帯に装着してから中庭へ向かう。部屋にいた全員が、頷き合ってそれに続いた。
中庭には、すでにブルーが来ていて鞍も装着済みだった。
ブルーの隣にはルークの竜であるオパールも竜舎から出てきていて、こちらも鞍を装着していて準備万端だ。
「ああ、来たな。では行くとしようか」
嬉しそうなブルーの言葉にレイも満面の笑みで頷き、シルフ達に手伝ってもらって一気に飛び上がってブルーの背に飛び乗る。ルークもそれに続いた。
整列した兵士達と竜騎士達全員の見送りを受けて、二人はフェアステッドの街へ向かって一気に加速して行ったのだった。




