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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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久し振りの精霊魔法訓練所

「おはよう。自習室、いつもの部屋を借りているからね」

 自習室に鞄を置いて本を取りに図書館へ向かおうとしたところで、鞄を持ったマークとキムが廊下を歩いてきているのに気付いたレイは、手を振りながら少し大きな声でそう呼びかけた。

「ああ、おはよう。じゃあ鞄を置いたら俺達も資料探しに行くよ」

「はあい、じゃあ先に行ってるね」

 二人が笑顔で手を振りながらそう言ってくれたので、レイも笑顔で手を振り返してそう言い改めて図書館へ向かおうとした。

 しかし、一歩踏み出したところで彼らの後ろに同じく鞄を抱えたクラウディアとペリエルが見えて、慌てて足を止めた。

「おはよう。自習室いつもの部屋を借りているよ」

 もう一度そう言いながら笑顔で手を振ると、こちらに気付いたクラウディアが顔を上げてふわりと笑った。

 久し振りに会った彼女の笑顔が記憶にあるよりもさらに可愛く見えて、レイも思わず笑顔になる。

「おはようレイ……」

「おはようございますレイルズ先輩! お邪魔虫は退散しますね。はい、鞄を貸して!」

 レイを見たペリエルはクラウディアの言葉に被せるようにそう言い、これ以上ないくらいににっこりと笑ってクラウディアの持っていた鞄をなかば奪い取るようにして取り上げ、そのまま彼女の背中に手を当ててレイの方へググッと押しやった。

「え? ちょっと待ってよ」

 驚くクラウディアに構わず、笑ったペリエルは二人に手を振って二つの鞄を抱えたまま自習室へ駆け込んで行った。

 今のやりとりが聞こえたらしく、キムが自習室の扉を開けたまま待っていてくれたのだ。

「キム先輩! ありがとうございます!」

「おう、今のはなかなか良かったぞ!」

 何故か満面の笑みのキムがそう言い、小柄なペリエルが抱えていた二つの鞄を受け取り、彼女の頭上で手を叩き合ってから一緒に部屋に入って行った。

 そのままパタンと扉が閉じられる。

「えっと……」

 置いてけぼりにされたクラウディアを見ると、彼女も呆然と閉じてしまった扉を見つめている。

 無言で顔を見合わせた二人は、しばしの沈黙の後に揃って吹き出した。

「じゃあ、一緒に本を探そうか」

「そうね。じゃあ選んだ本はレイに全部運んでもらうわ」

「もちろん! 力仕事なら任せて!」

 笑いながらそう言った二人は、手を取り合って仲良く一緒に図書館へ向かったのだった。



「行った?」

「行った行った。仲良く手を繋いでな」

 少しだけ開いた自習室の扉から、三人が揃って顔を覗かせる。

「じゃあ、俺達も鞄を置いたら本を探しに行くか。少し休憩してからな」

 笑ったキムの言葉に、マークとペリエルは揃って大きく頷いたのだった。



「おはようございます。レイルズと一緒に行こうと思っていたのに、着替えに時間が掛かっていたら置いていかれちゃったわ」

「おはよう。まあ、今日の私達は来る予定じゃあなかったから仕方がないんだけどね」

 しばらくしてマーク達とペリエルが図書館へ行こうと自習室の扉を開けたところで、鞄を抱えたニーカとジャスミンが笑顔でそう言いながら小走りに駆け込んできた。

「おはようございます。あれ? レイルズとディアは?」

 三人しか部屋にいないのに気づいたジャスミンが、不思議そうにそう尋ねる。

「先に図書館へ本探しに行ってるよ。久し振りだし、二人でゆっくりさせてやるべきかなあって思って、俺達はここで時間潰しをしていたんだ。それで、今から俺達も本探しに行くところ」

 笑ったマークが、そう言って図書館のある方角を指差す。

「まあ、そうなのね。素敵な配慮を感謝しますわ」

 それを聞いたジャスミンが、笑顔でそう言って軽く膝を曲げてマークに一礼する。

「いえいえ、友人として当然の事ですから」

 笑顔のマークがそう言い、ゆっくりとジャスミンに一礼してみせる。

「マーク凄い! 貴族の若様みたい!」

「マーク先輩、格好良いです!」

「おお、なかなか様になってきたじゃあないか!」

 それを見て目を輝かせたニーカとペリエルの言葉にジャスミンとマークが揃って吹き出し、キムは大爆笑しながらマークの背中を力一杯叩いたのだった。

「痛いって! 背骨を折る気かよ!」

 笑いつつも悲鳴を上げるマークに、もう一回揃って吹き出した一同だった。



「おはよう。あれ? 二人は今日は本部で勉強の日だって聞いていたけど、違った?」

 揃って図書館にやってきた彼女達に気づいたレイが、ジャスミンとニーカがいるのを見て驚いた様にそう言って、慌てて自分の口を手で塞いだ。

「図書室で大きな声を出してはいけません。ええ、本当なら今日は本部で勉強の日だったんだけど、先生役のタドラ様とマイリー様が、急遽お城の会議に呼ばれてしまったんです。それで、私達は一日自習する事になったの」

「でもそれなら、今日はディア達も精霊魔法訓練所に来る日だって聞いたから、ルーク様にお願いして外出許可をもらってこっちで自習する事にしたの」

「でも、外出着に着替えている間にレイルズは出発しちゃったから、私達は馬車で来たの」

 笑顔の二人の説明に、納得したレイが笑顔で頷く。

「ああ、そうだったんだね。じゃあ久し振りの全員集合だね」

「そうね。じゃあ話は自習室に戻ってからね。私達も参考書を探すわ」

 笑顔のジャスミンの言葉にニーカも頷き、それぞれ自分の参考書や勉強のための本を探し始めたのだった。



「選んだ本は、ここに置いておいてくれれば運ぶからね」

 まず、自分が選んだ本をまとめて自習室に運んだレイが、すぐに戻ってきてクラウディアが選んだ本をまとめながらペリエルに小さな声でそう話しかける。

「ありがとうございます。でも、皆様みたいにたくさんはないから大丈夫です」

 まだまだ勉強は初級の彼女は、算数の参考書を二冊と問題集を一冊選んだだけだ。

「私、算数が難しくて苦手なんです……二桁の足し算と引き算の計算問題を毎回間違ってばかりなんです」

 本を抱えたペリエルの少し恥ずかしそうなその言葉に、レイは一瞬何か言いかけて笑って首を振った。

「確かに、算数は初めて習うのなら少し難しいかもしれないね。でも、知識と教養はいくらあっても邪魔にならないんだからさ。せっかく知らない事を習う機会をもらったんだから、少しずつでも頑張ってみようよ」

 笑顔のレイの言葉に、驚いたように目を見開いたペリエルは少し考えてから頷いた。

「知識と教養は、確かにいくらあっても邪魔になりませんね。分かりました、苦手だから嫌いだなんて思わずに、算数ももう少し頑張ってみます」

 自分が抱えている参考書を見たペリエルの言葉に、レイも笑顔で頷く。

「じゃあ、今日は私が算数を教えてあげるわ。最初の頃、私も二桁の足し算と引き算は苦労したの。でも、皆にたくさん教えてもらって分かるようになったんだからね」

「はい、よろしくお願いします! ニーカ先輩!」

 キムに参考書を持ってもらったニーカが得意そうに胸を張ってそう言い、笑顔のペリエルと笑って手を叩き合う。

 そんな二人を、レイ達は揃って優しい笑顔で見つめていたのだった。

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