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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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雪合戦と雪人形

「あはは、雪合戦って楽しいのね!」

 頬を真っ赤にしたニーカが声を上げて笑いながら、握った雪玉を別の方向を向いていて隙だらけになったルークに向かって投げつけた。

 当然彼女の腕力ではさほど飛ばないのだが、ふわりと飛んできたクロサイトの使いのシルフが彼女が投げた雪玉にそっと触れて押しやるような仕草をする。

 すると一気に加速した雪玉が、横を向いていたルークの耳元に当たって砕けた。

「うひゃあ! 冷たい!」

 悲鳴をあげたルークが慌てたように首を振って雪を落とし、振り返って笑っているニーカとクロサイトの使いのシルフを見る。

「やったな〜〜〜!」

 笑いながらそう言い、即座に作った大きな雪玉をニーカに向かって投げた。

「きゃあ〜〜〜!」

 どう聞いても喜んでいるとしか思えない悲鳴を上げて、飛んできた雪玉にぶつかるニーカ。ちょうど額から生え際の辺りに当たった雪玉の一部は、彼女の髪にくっついたままだ。

 しかしクロサイトの使いのシルフも、そんな彼女を見て笑っているだけで特に怒るような事もしない。

「待って、冷たい!」

 笑いながらニーカがそう叫び、慌てたように首を振って髪にくっついた雪を払い落とす。

「隙あり!」

 その時、笑ったタドラの声が聞こえて小さめの雪玉がもう一度ニーカの額に当たる。

「タドラ様、酷い!」

 顔を上げたニーカの笑いながらの抗議の声に、あちこちから吹き出す音と笑い声が上がる。

「ニーカの仇!」

 笑ったジャスミンがそう言って、手にしていた子供の顔くらいありそうな大きな雪玉をタドラに向かって投げる。

 当然、大きく弧を描いて投げられた雪玉の速度はゆっくりだったが、ルチルの使いのシルフがその雪玉に触れて加速させる。しかも、その直後にクロサイトの使いのシルフまでが現れて雪玉に触れ、さらに加速させる。

 目にも留まらぬ速さで飛んで行った雪玉は、タドラの顔面にまともに当たって砕け散った。

「ふぎゃあ!」

 予想外の速さの雪玉に避けられず、真正面から顔面に当てられたタドラが悲鳴をあげて仰向けに転がる。

 当然、シルフ達やノーム達が守ってくれているので仰向けに倒れても怪我なんてしない。

 そもそもかなりの厚さに積もった雪の地面は、一部は踏み固められてはいるもののまだまだふかふかだ。

 倒れた勢いでふかふかの雪に埋もれてしまい自力で起き上がれないタドラを見てルークとロベリオ達が揃って吹き出し、転がったまま大笑いしているタドラを見て、こちらも大爆笑になったのだった。

「やった〜〜〜!」

「敵討ち成功!」

 ジャスミンとニーカはそんなタドラを見て、顔を見合わせて満面の笑みで手を叩き合って大喜びだ。

「やったな〜〜!」

 ルークに手を引いてもらってなんとか起き上がったタドラが笑いながらそう叫んで、両手に握った雪玉を二人に向かって投げつける。

「きゃあ〜〜〜!」

 またしてもどう聞いても喜んでいる悲鳴をあげた二人だったが、今度はゆっくりだったその雪玉に向かって手を上げ、なんとかまともに当たるのを避けた。

 ここからはまた激しい雪合戦となり、ティミーとレイにケイティも加わって二人を守りつつ、二人とケイティが作ってくれた幾つもの雪玉を使ったレイとティミーによる連続攻撃を加え、ルーク達を揃って転がせてここで終了となったのだった。

「勝った〜〜〜!」

 大喜びなレイ達とニーカ達を見て、雪まみれになりつつ苦笑いしているルーク達だった。



「ありがとうございます。すっごく楽しかったです。また雪が積もる事があれば遊んでくださいね」

 びしょ濡れになったマントや手袋、それから髪をウィンディーネ達に乾かしてもらったニーカは、満面の笑みでルーク達に向かって頭を下げた。

「ああ、俺達も楽しかったよ。じゃあ、次の雪遊びにいってみようか。まだ大丈夫だろう?」

 興奮して頬を真っ赤にしたニーカに、ルークが笑いながらそう言って彼女の襟元を直してやる。

「え? もう終わりじゃあないんですか?」

 不思議そうなニーカの言葉に、ジャスミンやレイ達は笑顔で頷いている。

「次はこんなに暴れないわ。ほら、次は雪人形を作るわよ」

「雪人形? ええ、あの人形を作るの?」

 首を傾げるニーカの言葉に、ジャスミンが吹き出す。

「あの人形を雪で作れたらびっくりするわね。違うわ。ほら、こんなふうにまずは雪玉を作るの。最初は小さく作って、地面を転がして大きくするの。それが出来たら三段に積み上げるのよ」

 ジャスミンは、話しながら握っていた大きめの雪玉を足元に転がし、両手で転がして雪玉を大きくしていく。

「へえ、面白い。転がすと大きくなるのね!」

 それを見て目を輝かせたニーカも、足元の雪を集めて大きめの雪玉を作って転がし始めた。

 レイとティミーもそれを見て笑顔で頷き合ってからせっせとそれぞれに雪玉を作り始め、ルーク達も顔を見合わせて同じく雪玉を作り始めた。

 苦笑いしたケイティは、それを見て深々と一礼してから一旦下がって行った。



「ううん、まん丸に作るのって案外難しいのね」

 しゃがんで雪玉を転がしていたニーカは、若干楕円形になった雪玉を見て困ったようにそう呟き、手で雪を集めて形を補正し始めた。

「大丈夫よニーカ、ほらこうやって向きを変えながら転がせばいいからね」

 それを見たジャスミンが、自分が作ったかなり大きめの雪玉を見せながら補正する時のやり方を教えてくれる。

 笑顔で頷き合って、そこからはまたせっせと雪玉を転がして大きくしていく。

 三つの大小の雪玉が出来たところでシルフ達に手伝ってもらってそれを三段に積み上げ、庭の植え込みに成っていた硬くて赤い木の実を二個ずつ切ってきて一番上の雪玉の目の位置に押し込み、それからルーク達が切って作ってくれた、やや太めの枝を斜めに切ったものを鼻の代わりに差し込む。

 最後に、これもルーク達が用意してくれた少し長めの枝を真ん中の雪玉の左右に上向きに突き刺せば雪人形の完成だ。

 その結果、ジャスミンとニーカ、レイとティミーが作った四体の雪人形と、それからルークと若竜三人組による合作の大きな雪人形が見事に並んだのだった。



「すごいすごい!」

 並んだ大小の雪人形を見て、ニーカはもう大喜びだ。

「いやあ、久々に童心に帰って遊ばせてもらったな」

「うん、確かにそうだね。楽しかった」

「初めて作ったにしては、ニーカの雪人形はなかなかの出来栄えだな。壊すのが惜しいくらいだ」

 笑った若竜三人組も並んだ雪人形達を見てまんざらでもなさそうだ。

「ええ、壊しちゃうんですか?」

 一転して泣きそうな顔になったニーカの言葉に、ルーク達は困ったように顔を見合わせる。

「ま、まあここなら、竜達が降りる時にも邪魔にならない……かな?」

「そうだね。ここなら邪魔にならないから大丈夫なんじゃない? 雪かきをする兵士達に、壊さないようにお願いしておくよ」

 ルークと顔を見合わせたタドラがそう言ってくれて、ニーカとジャスミンは手を取り合って大喜びしていたのだった。



 結局、この雪人形達はウィンディーネ達の手によりそのままここに保存される事となり、かなり暖かくなってすっかり雪が溶けてしまうまで、中庭の番人役を務める事となったのだった。

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