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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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競りと入札の終了

「お待たせいたしました。それでは間もなくドールハウスの競りを開始させていただきます!」

 司会者役の執事の言葉に、あちこちから拍手が上がる。

 レイが出品した天体観測室のあるドールハウスを含め、競りにかけられるのは全部で五点。

 どれもかなりの大きさがあり細部まで相当に細かく作り込まれた一品ばかりで、レイは思わず声を上げて身を乗り出した。

「どれも凄い! あ、しかも全部番号が同じだね。へえ……あれって誰が作っているんだろう。ううん、やっぱりこれはドールハウスの倶楽部にも参加すべきかなあ」

「あれは俺も誰が作っているのか知らないなあ。知ってます?」

 横で同じように感心して見ていたルークが、レイの呟きが聞こえたらしく小さな声でそう言い、最後はマイリー達に向かってそう尋ねた。それが聞こえたレイも、慌てて振り返ってマイリー達を見る。

「俺は製作者が誰なのか知っているけど、一応ここでは言わないでおくよ。ちなみに、レイルズもよく知っている方だぞ」

 笑ったマイリーの答えに、レイだけでなくルークも驚いたように目を見開く。

「えっと……僕のよく知っているお方、ですか?」

 頷くマイリーを見て、レイはこれ以上ないくらいの笑顔になった。

「じゃあ後でこっそり教えてください。その方が入っておられる倶楽部に僕も入会を希望します!」

「是非そうしてくれ。きっと喜ばれる。お、始まったな」

 まず、いかにも女の子が好きそうな華やかな部屋が並んだドールハウスの競りが始まり、かなりの高額で落札された。

 どうやらレイの作ったドールハウスが競りにかけられるのは最後のようで、次々に正面に運ばれるドールハウスに、主に女性陣が張り切って競り合い、どれもかなりの高額で競り落とされていったのだった。

「次はいよいよ僕のだね」

 ごく小さな声で嬉しそうにそう呟いたレイは、少し下がって舞台前に集まった人達を眺めた。

 少し前までレイの周りにいた婦人会の人達は、全員が舞台正面に集まっていて今は周囲に誰もいない。

 ルーク達竜騎士の皆は、正面には行かずにレイの側にいる。

『いよいよだな。さて、どれくらいの値が付くのやら。だな』

 面白がるようなブルーの使いのシルフの言葉に、レイは苦笑いしつつ頷く。

「頑張って作ったんだから、高い値段がついてくれたら嬉しいけど、僕はまだまだ初心者なのに良いのかなあ」

『あれだけのものを作れたのだから、もう初心者ではなかろう。作り方こそ我らが教えたが、あれを実際に一から配置を考えて作ったのは其方の手だ。充分に誇っていい仕事だと思うぞ』

「確かにそうだね。じゃあ、どれくらいの金額になるか楽しみに見ているね」

 そう言ったレイは、いよいよ始まった自分が作ったドールハウスの競りの様子をワクワクしつつ見つめていたのだった。



 最初、金貨十枚から始まったこの競りは声が上がる度に桁が上がっていき、最終的にはドールハウスの落札価格としては史上最高金額を叩き出したのだった。

 競り落としたのは、あまり話をした事は無いが婦人会でよくお見かけする伯爵夫人で、隣にいたご友人らしき婦人と大喜びで手を叩き合っていたのだった。

「ええ、最初のドールハウスの五倍の値だよ。良いの?」

 予想以上のとんでもない金額に、なんだか本気で申し訳なくなる。

『気にせずとも良いさ。非公式とはいえ皇族の方が作った小物まで入っているのだから、あの値段は妥当だと思うぞ』

「あ、そっか。そう考えたら高値がついても当然って気がしてきたね。ありがとうね。ブルー」

 笑ったレイにキスを贈られ、ブルーの使いのシルフも笑顔でレイの頬にキスを返したのだった。



 そしてその次に始まった人形のドレスやレースの小物をはじめとした小物の競りも、これまた白熱した戦いとなり、こちらもとんでもない金額で次々に落札されていったのだった。

 今回は娘達の為に張り切って競りに参加していたヴィゴは、いくつかは競り負けたものの見事な総レースのドレスを二着と、人形用のごく細い糸で作られた小さなレース編みのリボンの束、それから男性人形用の鎧や武器などが一式揃ったものを二組、どれもかなりの金額で競り落としていた。

 レイが作ったトランクと裁縫箱の競りにまで参加しようとしていたので、これは後で作って差し上げますから無茶しないでください。と、レイが慌てて止める一幕もあったのだった。

 ひとまず、これで予定されていた競りは全て終わり、まだ入札分を確認していない時点で去年の寄付金額とほぼ同額になっているのだと発表されて、会場は拍手に包まれたのだった。



 その後しばらくしてから入札分の落札金額が会場の壁面に張り出され、あちこちから歓喜の声と共に、嘆きの叫びも聞こえてきてしばらくの間会場内は大騒ぎになったのだった、

 レイが出品した一部屋タイプのドールハウスは、どれもかなりの高額で落札されていたし、房飾りも思っていた以上の金額で落札されていて、レイは密かに喜んでいたのだった。

 同額で入札されたいくつかの品は、改めて一対一または複数人での競りにかけられ、これまた白熱した戦いが繰り広げられたのだった。

「今回は、やはり人気の中心になる流行の品が多くあったというのは大きいですわね」

 張り出された落札金額の一覧を見たミレー夫人の言葉に、レイも笑顔で頷く。

 レイが張り切って入札した品々は、残念ながらそれ以上の金額を入札した人がおられたらしく、結局落札出来たのは万年筆が二本と天文関係の本が数冊、それから何枚かの装飾カードだけだった。

「ううん、入札って難しいねえ。でも、いくつかは手に入ったから良いよね」

 右肩に座ったブルーの使いのシルフと一緒に落札金額の一覧を見上げながら、苦笑いするレイだった。

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