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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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まずは入札から

「人形関係の出品物は、やっぱりまとめて展示されているな」

「おお、これは凄いぞ」

 レイが出品されている天球儀を夢中になって眺めていると、ルークとヴィゴの感心するような声が聞こえてきて慌てて振り返った。

 少し離れた中央に近い場所には、竜騎士達が全員集まって正面に置かれた大きな棚を見ている。

 その周りにも何人もの人達が目を輝かせて棚を見ている。

「ああ、人形関係の出品物ってそっちですか!」

 慌ててレイも彼らのところへ駆け寄っていった。

「あ、僕が出したのもちゃんと出てるね。へえ、他にも色々ある! ああ、このドレスは総レースだ。凄い」

 全部で十個並べて飾られた総レース仕上げの見事なドレスを見て、レイが感心したような声を上げる。

「うわ、凄い金額!」

 そして、それぞれの前に置かれた小さな値札を見て、また違った意味での驚きの声をあげる。

「そりゃあお前、これだけの仕上がり具合なんだからこの値段は当然だろうが。さて、どこまで上がるか楽しみだなあ」

 完全に面白がっているルークの横では、ヴィゴが頭を抱えている。

「あれ、もしかして娘さんに頼まれています?」

 無言で頷くヴィゴを見て、ルークは笑いを堪えてヴィゴの背中を叩いた。

「頑張ってくださいね、お父上」

「そうだな。頑張ってみるよ」

 大きなため息と共にそう言って苦笑いしているヴィゴの横で、マイリーとルークは完全に他人事状態で笑っていたのだった。



「ねえルーク。ちょっといいですか?」

 人形用の小物が並べられた棚の前で、レイはふと疑問に思った事があってルークの腕を軽く引いた。

「おう、どうした?」

「えっと、棚の色が違うのは意味があるんですか?」

 よく見ると、品物が並べられている棚によって色が違うのだ。

 例えば、レイが出品した革製のトランクや裁縫箱などは木目の綺麗な棚板の上に並べられている。

 小さなレースを巻いたものやごく簡単な仕様の人形用のドレスなども、同じ木目の綺麗な棚板の上だ。

 だが、先ほどの総レース仕上げの人形用のドレスや、明らかに作りがとても細やかでいかにも高値が付きそうな物は赤く染められた棚板の上に並べられている。

 よく見れば、他の出品物の並んだ棚も、同じように木目の綺麗な棚板と赤い棚板のに種類がある。

 ドールハウスは、人形関係の棚の隣にあるこれも大きな棚に並べられているのだが、レイが作ったあの天体観測の部屋があるドールハウスも赤い色の棚板の上に並べられている。

「ああ、こっちの染めていない方の棚に並んでいるのは入札形式の物で、赤い棚の上に並んでいるのが競りにかけられる物だよ。お前の出したドールハウスは競りで、それ以外は入札みたいだな」

「そっか、一つずつ全部競りにかけていたらすっごく時間がかかるから、以前と同じように入札で決めるものもあるんだね」

 ルークの説明に納得したレイが嬉しそうにそう言うと、笑ったルークは自分が持っていた金額指定札を見せた。

「ちなみに入札の場合、もしも二人以上が同額で落札するような事があった場合のみ、後でその人達だけで競りにかける。この場合はほぼ一対一になるから、さらなる高値が付きやすいんだ」

「へえ、凄いですね。じゃあ僕も頑張ろうっと!」

 レイも持っていた金額指定札の束を改めて持ち直して万年筆を手にした。



「では、只今より入札の受付を開始いたします。入札は初回の競りが全て終わるまで受け付けております」

 正面の舞台の上にやや年配の大柄な執事が進み出てきて、会場に向かって一礼してから大きな声でそう宣言した。

 おそらく拡声の術を使っているのだろう。広い会場内に声が響き渡り騒めいていた人達が一斉に舞台を見た。

「では、競りが始まりますまで今しばらくお待ちくださいませ」

 そう言って再び一礼した執事は、そのまま舞台から下がっていった。

 レイは、今回は人形関係の競りには参加せず、自分が欲しいあの天球儀を幾つかと竪琴も参加してみようと考えていたのだった。

「じゃあ、この辺りは頑張ってみようかなあ」

 入札の品物は本当に様々な物があり、レイは天文学関係をはじめとした本にいくつも入札して周り、それから幻獣のケットシーの彫刻と絵があったのでそれも入札した。

 もちろん、ルークに相談して大体の相場を教えてもらい、その倍から三倍くらいの値段を入れてみた。

 入札が終わったところで競りに出品される一通りの品物をもう一度確認して周り、気に入った品物の番号を控えたレイは、その後は来てくれたミレー夫人達婦人会の女性達と笑顔で挨拶を交わし、一緒にお菓子の並んだ一角へ行った。

 嬉々としてお菓子を選んでは担当執事に金額指定札を渡し、笑顔のご夫人達とどれが美味しいかったか、自分はこっちが好みだったと楽しく話をして過ごした。



「ううん、あの顔ぶれに取り囲まれて笑顔で対応出来るレイルズ君を心の底から尊敬するなあ」

「だよな。あの顔ぶれに笑顔で取り囲まれた日には……俺なら怖くて泣いちゃうかも」

「僕も、泣くかも……」

 遠巻きにレイを見ている若竜三人組の呟きに、ルーク達も笑いを堪えつつ小さく何度も頷いていたのだった。

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