激戦の結果と無事の帰還?
「よし、復活だ!」
枕を抱えたまま床に転がって数を数えていたレイが、そう言って起き上がり腕に巻き付いていた布を右手に、左手には枕を握りしめて青組の陣地へ突撃していった。
「お、復活したな。ではもう一度退場してもらうか」
枕とソファーに置いてあったクッションを両手に持ったヴィゴが、走ってきたレイを迎え撃つ。
「では遠慮なく!」
「手伝うぞ!」
目を輝かせてヴィゴの枕をかいくぐりそのまま下からヴィゴの顔を枕でぶん殴るレイ。それを見たロベリオとマイリーが、揃って駆け寄ってきて左右から豪快にヴィゴをぶん殴る。
さすがに堪えきれず笑いながら床に倒れるヴィゴにマイリーが襲い掛かり、枕とクッションを無理矢理奪い取った。
「レイルズ!」
「お任せください!」
マイリーの呼びかけに即座にレイが反応して、手にしていた布でヴィゴの腕をくくり無力化する。
「ああ、やられた!」
笑ったヴィゴが数を数え始めるのを見て、今度は復活したルークがマイリーに襲いかかる。
それを見て、慌てたレイがマイリーの横からルークを枕でぶん殴って迎え撃つのを助ける。
もう何が何だか分からないくらいにあちこちから枕で殴り殴られ、皆、笑いながら手にした枕をさらに振り回す。
倒れかかってきたルークにレイが押し倒されて一緒に床に転がり、お互いの顔を見てから笑いながら枕で殴り合った。
「ええ、なにやってるのよ、あれ……」
「もう、無茶苦茶だわ……」
薄く開いた扉から上下に重なった状態で部屋をのぞいていたジャスミンとニーカは、予想以上の激しい戦いに驚いてそう呟いたきり揃って固まっていた。
皆笑っているので、確かに喧嘩しているわけではないのだろうけれど、あれはどう見ても普通ではない。
男性陣の遊びの激しさに呆れ返った二人が無言で顔を見合わせてから、揃ってまた部屋を覗き込む。
復活したヴィゴがソファーの座面を引き剥がしてぶん投げるのを見て、とうとう二人は揃って悲鳴を上げたのだった。
しかし、それを見て即座に持っていた枕を落として笑いながら座面を受け止めたレイが、まさかの座面を別方向に投げ返すと言う反撃に出た。
横を向いていた為に即座に反応出来なかったユージンが吹っ飛んできた座面にまともにぶち当たり、その座面を裏側から抱きしめた状態で背中から床に転がり、勢い余って座面の裏側で顔面を強打して情けない悲鳴をあげる。
「なにやってるんだよ。お前は」
それを見たルークが呆れたようにそう言い、ロベリオとレイが揃って吹き出す。
「これを投げるヴィゴも、受け止めて投げ返せるレイルズも絶対におかしい!」
案外重いソファーの座面に押し倒されて床に転がっていたユージンが、なんとか手をついて起き上がりながらそう叫び、全員揃って大爆笑になったのだった。
「あ、鼻血……」
しかしその時、なんとか笑いを収めたレイが驚いたようにそう言ってユージンを見た。
「へ? 何が……ああ!」
言われたユージンの方が驚いたようにそう言った直後、彼の膝の辺りにポタポタと赤い点々が散った。
ロベリオがそれを見て吹き出し、焦ったレイが手にしていた布を持ってユージンに駆け寄る。
「だ、大丈夫ですか!」
「負傷兵が出たので一時休戦だ。おい、大丈夫か?」
苦笑いしながらヴィゴがそう言い、鼻を押さえたユージンに駆け寄る。
「あの、とにかく横になってください!」
走ってきたマークとキムが、近くにあった無事だった別のソファーの上に積み上がっていた枕やクッションを床に落として横になれる場所を確保する。
「ああ、ごめんよ」
苦笑いしたユージンが鼻を押さえたまま起き上がって、ルークとロベリオの手を借りてソファーに座る。
「ハン先生を呼んできます!」
レイがそう言って扉に向かって走っていった。
「ハン先生を呼んできます!」
血相を変えたレイがそう言ってこっちに向かって走ってくるのを見たジャスミンとニーカは、悲鳴を上げて揃って扉から離れる。
『大丈夫だよニーカ』
『大丈夫だから壁側に寄って』
冷静なクロサイトとルチルの使いのシルフの言葉に二人は転がるようにして壁側に寄り、壁に背中をつけて並んで立った。
その直後に音を立てて開いた扉からレイが駆け出してきて、二人の目の前を通り過ぎて執事達の控えの部屋へ駆け込んでいった。
「凄い、本当に見えていないのね」
ごく小さな声でニーカがそう呟く。
『今は我が其方達の姿を隠しているから安心しなさい。其方達の伴侶の竜の姿隠しでは少々心許ないのでな』
苦笑いしたブルーの使いのシルフの言葉に、ジャスミンとニーカが驚いて目を見開く。
『ほら、今のうちに部屋に戻りなさい』
執事の報告を聞いて鞄を抱えたハン先生が別の部屋から飛び出してきて、レイと一緒に部屋に戻るのを見送った二人は、そのまま壁沿いにゆっくりと横歩きで移動して、大騒ぎになっている控えの部屋の前を小走りに駆け抜けて階段を駆け上がって行き、ブルーの使いのシルフが開けてくれた扉から部屋に駆け込んで行ったのだった。
「ありがとうねラピス」
「おかげで無事に戻れたわ」
部屋に戻って綿入りの上着を脱いだジャスミンとニーカは、安堵のため息を吐いて揃ってブルーの使いのシルフを見上げた。
『うむ、では我は戻るとしよう。おやすみ、もう冒険は終わりだぞ』
笑ったブルーの使いのシルフの言葉に、二人が揃って吹き出す。
それを見て声を上げて笑ったブルーの使いのシルフは、そのまま手を振ってくるりと回って消えていった。
「おやすみなさい!」
手を取り合って笑った二人の声が重なり、それから顔を見合わせた二人はもう一度同時に吹き出して大笑いになったのだった。




