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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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書斎での時間と少女達の準備?

「ううん、美味しかった」

 レイの満足そうな呟きに、お菓子を食べ終えてカナエ草のお茶を飲んでいたニーカとジャスミンも揃って笑顔で頷く。

「本当にとても美味しかったわね。私は初めて見たあの丸い殻、最初は驚いたけど割るのは面白かったわ」

 手で丸い形を取って見せるニーカに、皆も笑顔で頷いていた。

「じゃあ、夕食まではまた本読みの会だね。次はどの本を読もうかなあ」

「それなら、ひと勝負願おうかな」

 にんまりと笑ったマイリーの言葉に、レイが慌てたように顔の前でばつ印を作る。

「僕にマイリーのお相手が務まるわけありません! 陣取り盤を出すなら、僕は横で見学させていただきます!」

「なんだよ、付き合いの悪いやつだな。まあいい。ではひとまず書斎へ移動だな。ご馳走様、とても美味しかったよ」

「確かに美味しかったな」

 マイリーの言葉にカウリも笑顔で頷いている。

 甘い物を好まず普段からほとんどお菓子を食べないマイリーとカウリのお皿は、丸い殻と飾られた果物は同じだったのだが添えられたクリームはほんの少しだけで、殻の中には甘い焼き菓子ではなく小さなクラッカーが入っていたのだ。

 しかも、カウリによるとそのクラッカーはどの味も甘くはなく、定番の塩味以外にもハーブの風味や柑橘系の香りをつけたもの、黒胡椒を効かせたものやチーズ味など様々な味があったらしい。

 確かにマイリーも残さずに綺麗に全部食べている。

 甘い物を好まないマイリーやカウリにもお茶の時間を楽しんでもらえた事を知り、レイはこれ以上ないくらいの笑顔になるのだった。

「あとで、アルベルトにこのお菓子を作ってくれた方に感謝を伝えないとね」

 嬉しそうに小さく呟き残りのカナエ草のお茶を飲んだレイだった。



「では、お相手をお願いしてもよろしいでしょうか?」

 書斎へ戻ったところで、ティミーが嬉しそうにそう言ってマイリーの向かいに座る。

「ああ、もちろん喜んで」

 同じくらいに嬉しそうなマイリーがそう言い、テーブルに置いてあったままの陣取り盤に駒を並べ始めた。

「古い陣取り盤のようですが、これはあのアルジェント卿のお屋敷にあったローズクオーツの駒のような事にはなりませんよね?」

 綺麗な透明の水晶で作られた駒を撫でながら、ティミーがごく小さな声でそう呟く。

 駒を置いていたマイリーの手も一瞬止まって、二人は顔を見合わせて同時に吹き出した。

「ん? どうしたんですか?」

 突然二人が吹き出したのを見て、ルークやロベリオ達が不思議そうにしている。

『心配せずとも、今使っておる陣取り盤の安全くらい、当然確認しておるわ。何もおらぬ故安心して使うといい』

 陣取り盤の上に現れたブルーの使いのシルフの言葉に、もう一度揃って吹き出すティミーとマイリーだった。

 そしてブルーの使いのシルフの言葉を聞いて、彼らがどうして笑っているのかを理解したルークも、一緒になって吹き出していたのだった。

「ええ、何のお話ですか?」

 不思議そうなニーカの質問に、一緒に聞いて苦笑いしていたレイは、思わず答えかけて慌ててマイリーを見た。

 あの、陣取り盤の精霊の事を他の人に話してもいいのかの判断がつかなかったからだ。

「いいぞ、話しても」

 笑ったマイリーの言葉に満面の笑みで頷いたレイは、以前アルジェント卿のお屋敷の離れにティミーと一緒に泊まった際に接した、レディローズと呼んでいたローズクオーツの駒に宿る陣取り盤の精霊の話をした。

 その話はレイやティミーから聞いて全部知っているロベリオ達も、笑顔で一緒に聞いている。

 アルジェント卿がコレクションしている古い陣取り盤に精霊が宿っているものがあるのは有名な話だし、ルーク達から話には聞いているが、残念ながら彼らは実際に対決した事はない。

 ジャスミンとニーカは、初めて聞く精霊の話に興味津々で、会ってみたいと無邪気に笑っていたのだった。

 レイとティミーは、あの時に垣間見たレディローズの本性とも言えるあの妖艶な笑みを思い出して、揃って遠い目になっていたのだった。



 そこからはマイリーとティミーの本気の対決を皆で見学する事になり、横に並べた陣取り盤で二人の勝負を再現しつつルークとヴィゴがレイ達に攻め方や守り方の説明をしたりして過ごしていたのだった。

 この顔ぶれの中では唯一それほど陣取り盤に興味のないジャスミンは、二人の勝負が始まったところで少し離れたソファーに座り、知らん顔でさっき読み掛けていた本を読み始めたのだった。

 二人の勝負が終わった後はマイリーの前にはルークが座り、ティミーの前にはロベリオが座ってそれぞれに打ち始めた。

 ニーカは目を輝かせてマイリーとルークの対決を見ているし、レイ達もその隣に座って夢中になって盤上を見つめていたのだった。

 時折、感心するような声が上がる中、書斎にはゆっくりとした穏やかな時間が流れていたのだった。



 陣取り盤での勝負が一段落したところで、レイは初めて見る女性が一人やってきて本を読んでいたジャスミンに何か耳打ちをした。

「ああ、もうそんな時間なのね。じゃあ、行きましょうか」

「はあい、今行きます」

 立ち上がったニーカも当然のようにそう言ってジャスミンのところへ駆け寄り、こっちに向かって一礼した二人は、その女性の案内でそのまま書斎を出て行ってしまった。

「あれ? どうしたの? 何かあった?」

 まだ夕食には少し早い時間だし、何かあったのだろうか?

 心配になって思わず控えていたラスティにそう尋ねる。

「間もなく夕食のお時間ですからね。女性のお召替えには少々お時間をいただきますので、どうぞお気になさらず」

 説明されても意味が分からなくて首を傾げるレイとマークとキムを見て、当然その意味を理解している竜騎士達とティミーは、揃って苦笑いしていたのだった。

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