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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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書斎にて

「それじゃあ、ゆっくり本を読む時間だね。ううん、何を読もうかなあ〜」

 少し遅めの朝食を食べ終えたレイ達は、まだ食事をしているティミーを置いて先に書斎へやって来た。

 嬉しそうなレイの言葉に、マークとキムも笑顔で頷き合う。

「おはようございます」

「お、おはようございます!」

 書斎に入ったところで控えていた笑顔の執事に挨拶をされ、気を抜いていたマークとキムが慌てて直立して挨拶を返す。

「いいから入って。あ、昨日の本は全部片付けられちゃったね」

 昨夜散らかしていた本の山は、確かにすっかり綺麗に片付けられていてテーブルの上には何も無い。

「じゃあ、まずは本選びからだね!」

 目を輝かせたレイがそう言い、隅に置かれていた移動階段を引いて来る。

 マークが目を輝かせてもう一台の移動階段を引いてきて、止めた場所は二人揃って精霊魔法に関する本が並んだ本棚の前だ。

 笑顔で頷き合い、キムも加わって階段を駆け上がって早速本を選び始めた。

 食事を終えたティミーが書斎へ来た時には、それぞれ山積みにした本を前にソファーに座った三人は、顔も上げずに読書に没頭していたのだった。



 太陽が頂点を過ぎた頃、ようやく起きてきたルークと若竜三人組と一緒に、また自由に用意された食事を頂く。

「午前中の会議を終えて、午後からはマイリー達がジャスミンとニーカを連れて一緒に来るってさ。これで殿下以外はまた全員集合だな」

「そうなんですね。楽しみです!」

 ルークの言葉に、顔を上げレイも嬉しそうな笑顔になる。

「皆、今夜はここに泊まるから、本読みの会最後の夜は大騒ぎになりそうだな」

 横からロベリオがそう言い、マーク達も乾いた笑いをこぼしていた。

「えっと、でもジャスミンとニーカは、枕戦争には不参加だよね?」

 無邪気なレイの言葉に皆が呆れたように笑う。

「お前、無茶言うなって。女性をあんなところに呼べるかよ。あれは男子の遊びだ」

 呆れたようにルークにそう言われて、それもそうかと妙に納得するレイだった。



「あれ? それならジャスミンとニーカは、部屋に戻ったら何をして遊ぶの?」

 瑠璃の館には、確かに本は沢山あるが、彼女達が喜びそうなものが何かあっただろうか?

 せっかく泊まりに来てくれるのだから、何かあったほうが良いのではないだろうか。不意に心配になってきて、思わずラスティを探す。

「いかがいたしましたか?」

 すぐに気付いたラスティが来てくれたので、レイは声をひそめてラスティに質問した。

「えっと、せっかくジャスミンやニーカが泊まりに来てくれるのに、枕戦争をしないのなら、彼女達がここで遊べるものって何かありますか?」

「もちろん、いろいろとご用意しておりますのでご心配なく」

 にっこり笑ってそう言ってくれたラスティの言葉に、安堵のため息を吐く。

「よかった。せっかく来てもらうんだから、何か楽しみはあったほうが良いものね」

「そうですね。お楽しみいただけると良いですね」

「えっと、何を用意しているのかって、聞いても良いですか?」

 ちょっと興味が出てきたので、これも小さな声で質問してみる。もちろん、周りにいる全員に聴こえているのだけれども。

「そうですね。あの人形は一通りご用意しております。それからやや小さめですがいくつかのドールハウスも。毛糸や布、レースやリボン、お裁縫の道具なども一通りご用意しておりますので、お好きに人形で遊んでいただけるかと。それからお部屋には、物語などを中心に女性が喜びそうな本や図鑑などを色々とご用意していますし、もちろん甘いお菓子もご用意しております」

「凄い。じゃあ大丈夫だね」

 笑顔でそう言ったレイは、嬉しそうに何度も頷きソファーに座り直した。



「女性が喜ぶものなんて……正直言って全く分からないよ」

 横で聞いていて大きなため息を吐いたマークの呟きに、ルーク達が揃って吹き出してマークの周りに集まる。

「よし、じゃあ経験豊富な俺達が色々と教えてあげようじゃあないか。ん? 普段はどんな贈り物をしているんだい?」

 にんまりと笑ったロベリオの言葉に、マークは情けない悲鳴をあげて側にあったクッションに抱きついた。

「あの、一応ですが……毎月、月初めにお菓子の詰め合わせを神殿に届けていました。一応。彼女やニーカが竜騎士隊の本部へ引っ越した後も、まあそれなりのお菓子を届けています」

「おお、良いねえ。他には?」

「毎月、月の中頃には彼女宛に季節の花を届けています」

「へえ、案外しっかり頑張っているんだな。ちなみにそれって、自分で考えているのか?」

 感心したようなルークの質問に、耳まで真っ赤になったマークが必死で首を振る。

「辺境農家出身の俺に、そんな期待をしないでください! 全部、クッキーに相談して教えてもらってます!」

「あはは、まさかのここでポリティス商会のクッキーの登場かよ」

「だけどまあ、一番正しい相談相手って気がするなあ」

「確かに。誰に頼むよりしっかり教えてくれそうだ」

「まあ、それなりに予算はかかりそうだけどな」

 ルークと若竜三人組が、そう言って揃って大笑いしている。

「おかげさまで、それなりのお給料をいただけているので、色々と頑張っています!」

「あ、開き直ったぞ」

「いいじゃないか。本気で恋すれば、それくらいするよな。うん、頑張れ!」

 ロベリオとユージンに背中を叩かれて、真っ赤になりつつも嬉しそうに笑うマークを見て、クラウディアに花を贈った事がないレイは、密かに焦っていたのだった。

「ええ、僕ディーディーに花を贈った事なんて無いんだけど」

 レイの呟きに、マーク達も含めた全員が一斉に振り返る。

「おい、お前それはないだろう」

「ううん。マーク軍曹よりも、こっちのほうが問題だったか」

 真顔のロベリオとユージンの呟きに、ルーク達が揃って吹き出す。

「えっと、以前教えてもらった通りに、神殿へのお菓子の差し入れは定期的にしているよ。毎月カードを書いているからね。でもそれ以外って……」

 考え込むレイを見て、ロベリオとルークが顔を見合わせる。

「でもまあ、あくまでも一時的な巫女だったジャスミンと違って、正式な神殿の巫女である彼女に、個人的な花を贈るのは、逆に迷惑になるだろうからなあ」

「確かに。まあ、この前、帯飾りはたくさん贈ったしなあ」

 考え込むロベリオとユージンを見て、ルークは笑って首を振った。

「まあ、彼女は個人的な欲求をほとんど言わないから、贈り物選びは難しそうだ。一応、舞を舞う際の装飾品なんかは個人の持ち物もありだから、もっと贈っても良いかもな。後は、どちらかと言うと今なら暖かい靴下や下着、勉強の為の本や文具なんかの方が喜びそうだな」

「あ、確かに文具はもっとあっても良いかもしれないね。普段勉強の時に使っているのもつけペンだから、今度携帯出来る万年筆を贈ろうっと!」

 目を輝かせるレイの言葉に、マークはそれなら自分も万年筆を贈ろうと小さく拳を握っていたのだった。


『おやおや、恋する若者達は色々と大変なのだな』

『そうですね』

『頑張る若者は可愛い』

『確かに可愛い』

『見ていて嬉しくなります』

『そうだな。確かに可愛い。ではこの恋が成就するよう我らも応援してやるとするか』

 本棚に座ったブルーの使いのシルフの呟きに、並んで一緒に座っていたそれぞれの竜の使いのシルフ達も揃って楽しそうに笑いながら頷き合っていたのだった。

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