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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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遅い朝の大騒ぎとシルフ達の遊び

『らんらんら〜〜〜ん』

『ふんふんふ〜〜〜ん』

『あっちとこっちをぎゅっとして〜〜〜』

『もぎゅもぎゅもぎゅもぎゅ楽しいな〜〜』

『あっちとこっちを持ってきて〜〜』

『いっぱいいっぱいもぎゅもぎゅするの〜〜〜』

『ぐるぐる巻き巻き』

『ピュッとしてバ〜〜〜ン!』

『ぐるぐる巻き巻き』

『ピュッとしてバ〜〜〜ン!』

『折り折り絡めて』

『ピュッとしてバ〜〜〜ン!』

『折り折り絡めてらんらんら〜〜ん』

『楽しい楽しい』

『らんらんら〜〜〜ん!』

『たくさん絡めて』

『編み編みするの〜〜』

『楽しい楽しい』

『らんらんら〜〜〜ん!』

『三つ編み三つ編み』

『らんらんら〜〜〜ん!』


 朝というにはもうやや遅い時間だが、誰も起こしに来ない部屋から聞こえてくるのはご機嫌なシルフ達の即興の歌声とすやすやと気持ちよく眠っている複数の寝息だけ。

 そして部屋で寝ている全員の髪は、髪質と長さによる程度の差こそあれシルフ達の手による悪戯が盛大に施されていて、どれもなかなかの芸術作品となっていたのだった。



「う、うん……」

 昼近い時間になって、最初に目を覚ましたのはベッドの一番奥側に寝ていたルークだった。

「ふああ、よく寝た。シルフ、今何時だ?」

 大きな欠伸をしてから薄目を開けてそう尋ねる。

『おはようルーク』

『少し前に十一点鐘の鐘が鳴っていたわよ』

 ふわりと飛んできた笑った愛しい竜の使いのシルフの言葉に、ルークが吹き出す。

「おはようパティ。もうそんな時間なんだ。全員揃って寝過ごすにも程があるな。でもまあ、こういう日があってもいいよな。ふああ〜〜」

 笑ってそう言いもう一度大きな欠伸をしたルークが、ベッドに手をついてゆっくりと起き上がる。

「あはは、でもってなんだか凄い芸術作品がずらっと並んでるぞ、おい」

 隣に並んで寝ているロベリオとユージンの髪は、短い三つ編みとカクカクに曲げられた髪が複雑に絡まり合ってちょっと見ない髪型になっている。

 タドラとティミーは、昨日と同じでこれまた見事なまでの三つ編みの嵐により、謎の立体造形が作られている。

 レイの頭は言うに及ばず、彼の友人達の髪も、どれもなかなかの出来具合だ。

「これまた張り切ったんだなあ」

 呆れたようにそう言って笑ったルークは、座ったまま腕を上げて思いっきり伸びをした。

「ううん、顔を洗いたいんだけど、これ、俺はベッドから出られないぞ」

 ベッドの一番奥、つまり壁側に寝ていたルークは小さく笑ってもぞもぞと起き出し、隣にいたロベリオを遠慮なく踏みながらベッドの足元側へ這って行ってそこから降りた。

「うわっ! なんだ?」

 突然踏まれたロベリオが驚いて飛び起き、笑ってこっちを見ているルークと目が合って納得した。

「よくも俺を踏んだな〜〜〜!」

「そりゃあ悪かったな。何しろ狭くて起きられなかったもんで」

 笑って肩をすくめたルークの言葉に、周りを見たロベリオも小さく吹き出す。

「だな。確かにこれは誰も踏まずに起きるのは無理そうだ!」

 にんまりと笑ってそう言ったロベリオは、ルークと違って自分の右側。つまり並んで熟睡しているユージンをはじめとしたレイ達全員の上に横向きに両手を伸ばして倒れ込んだのだ。

「うわあ!」

「きゃあ!」

「ふぎゃん!」

「ええ何だ!」

「ええ何々!」

 ユージンに飛び乗られた形になったタドラとティミー、そしてレイとマークとキムの悲鳴が重なる。

 直後に悲鳴に驚いて飛び起きたジョシュア達が見たのは、ロベリオに抑え込まれて飛び起きたものの、互いの頭を見て揃って大爆笑している竜騎士達とマーク達だった。



「あはは、まさかレイルズだけじゃあなくて俺達や竜騎士隊の皆様までシルフ達のおもちゃにされるとはなあ」

「だな。ってか俺は明日以降、屋敷に帰った後の朝がどうなるのか、そっちの方が怖いぞ!」

 大爆笑するジョシュアの言葉に、自分の髪を押さえたチャッペリーがそう言って笑う。

 ジョシュアの髪はやや硬かったので彼女達のお気に召さなかったらしく、若干折り目がつけられて絡まされているがそれほどの被害ではない。

 だが、柔らかくて真っ直ぐな髪を肩くらいの長さで整えていたチャッペリーは、ほぼすべての髪を細かな三つ編みにされていて、さらにそれをまた三つ編みにされたおかげで、謎の角だらけのような状態になっている。

「確かに! 俺達の連れているシルフ達も、絶対この遊びを覚えたよな!」

「どうするんだよこれ! 俺、朝は一秒でも長く寝ていたいのに!」

 そう叫んだロルフとフォルカーも、二人揃って同じようにやや短めのまっすぐな髪を全て三つ編みにされ、こちらは三つ編みの先だけを結び合わせてリング状にして重ね合わせるという、これまた謎の芸術作品になってい他のだ。

「あはは、確かにそうかも!」

「待て待て! そんな期待に満ち満ちた目で俺達の髪を見るなって!」

 リッティロッドとフレディは、どちらもやや硬めで短めに整えていた為にマークやキムのように折り目をつけたりねじり癖をつけられていて、他よりは軽めであるがこれまたなかなか面白い頭になっているのだ。

 しかし、隙あらばもっと遊ぼうと目を輝かせるシルフ達を見て、フレディがそう叫びまた揃って大爆笑になったのだった。



『おやおや、レイの友人達が連れていたシルフ達まで、どうやらこの新しい遊びを覚えたようだな。さて、彼らの髪が今後どうなるかは……まあ、精霊王の思し召しのままに。だな』

 まだベッドに転がって揃っで大爆笑しているレイ達を見た面白がるようなブルーの使いのシルフの呟きに、他の竜の使いのシルフ達が揃って吹き出し、ジョシュア達と一緒に来ていた彼らと仲の良いシルフ達は、ブルーの呟きに揃って大きく頷いてから、大喜びで手を叩き合ったり手を取り合って輪になって踊り始めたりしていたのだった。

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